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隠れ待機児童 切実な声を反映しよう

 認可保育所に入れない待機児童の解消は安倍政権の掲げる重要課題である。ところが、保育所に入れないため親がやむを得ず育児休業を延長しているようなケースは、政府が公表する待機児童にはほとんど含まれていない。こうした「隠れ待機児童」は昨年より13%も増え、公表されている待機児童の3倍にも上ることがわかった。

     働く女性が増えて保育所のニーズが高まる一方、認可保育所が足りないため入所に厳しい条件を付けて門を狭めている自治体は多い。だが、厚生労働省の待機児童の定義が狭いため公表される統計に真のニーズが反映されず、「隠れ待機児童」ばかり増えているのだ。

     政府は保育所の受け入れを2017年度までに40万人分増やすことにしていたが、「1億総活躍プラン」で50万人分へと変更した。しかし、本当に50万人分で足りるのだろうか。実情を反映した待機児童の定義に改め、自治体からの待機児童数の申告も基準を統一し、的確なニーズの把握に努めるべきだ。

     政府の公表では、政令指定市や東京23区など計152市区町村の4月1日時点の待機児童数は計1万7661人(前年比5%減)。一方、毎日新聞がこれらの自治体に対して認可保育所への利用申込数から入所できた児童数と待機児童数を差し引いた「隠れ待機児童」を調べたところ、計5万801人(同13%増)に上ることがわかった。

     厚労省の定義では、自治体が独自に認定している施設を利用している場合は待機児童から除外できることになっている。保護者が特定の保育所を希望している場合や、親が育休中、あるいは求職活動をやめた場合も待機児童に含めなくてよいことになっている。

     運用は自治体に任されており、東京都世田谷区のように、育児休業の延長や預け先が見つからないため仕事を辞めた場合も待機児童に含めている自治体もあるが、ほとんどは除外されているのが実情だ。

     自宅に近い保育所に入れない、きょうだい別々の保育所になってしまうなどの理由でやむを得ずに育休を延長している人、仕事を辞めた人は多い。祖父母の実家に一時的に身を寄せて近くの保育所を利用している人もいる。こういうケースが待機児童にならないのはおかしい。

     住民の切実なニーズが反映されない統計数字は、政策立案や予算確保にあたって基礎的なデータにはならない。政治や行政に対する不信を募らせることにもなるだろう。「保育園落ちた 日本死ね」という匿名ブログに象徴される親たちの怒りを忘れてはならない。

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