<福島原発>溶融燃料160t容器底部に残存か
東京電力は28日、福島第1原発2号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の位置を把握するため、宇宙線を使って透視した原子炉内の調査結果を公表した。溶融燃料の大部分が圧力容器の底部に残っている可能性が示された。
東電と高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)などが3月から調査。宇宙線から生じる「ミュー粒子」の性質を利用し、レントゲン写真を撮るように圧力容器を撮影、溶融燃料など物質の分布状況を測定した。
解析の結果、燃料があった炉心域に20〜50トン程度、圧力容器底部に約160トンの高密度の物質が存在していることを確認。燃料集合体や制御棒といった事故前にあった物質量は約210トンで、溶融燃料の大半が圧力容器底部にとどまっていると推定された。
溶融燃料の位置が推定できたことで、取り出し工法の絞り込みが進む可能性がある。ただ、ミュー粒子による調査は最大60トン程度の誤差があり、圧力容器を包む格納容器の状況も把握できていない。東電は年度内の実施を目指すロボットによる調査などで、溶融燃料の位置特定を進める。
原発事故では1〜3号機が炉心溶融した。ミュー粒子による調査は1号機でも行ったが、圧力容器底部まで観測できたのは初めて。3号機を調査するかどうかは未定。
[ミュー粒子]物質の最小単位である素粒子の一種で、ミューオンとも呼ばれる。宇宙線が大気に衝突した際に生じ、1分間に地上1平方メートル当たり約1万個が降り注いでいる。厚い岩盤も通り抜けるほど透過力が強い一方、ウランなど高密度の物質に当たると吸収されたり、進む方向が変わったりする。東京電力福島第1原発の調査では、この性質を使い、エックス線撮影と同じ原理で原子炉内を透視した。火山のマグマ観測やピラミッドの内部調査などにも活用されている。
2016年07月29日金曜日