環太平洋経済連携協定(TPP)の臨床的な死を宣告するときが来た。昨年TPPに反対する意向を表明したとき、ヒラリー・クリントン氏はすでに、バラク・オバマ大統領が進める目玉の貿易協定――過去十数年間で最大の米国の通商構想だ――を息も絶え絶えな状態に追いやっていた。ドナルド・トランプ氏はTPPを破棄すると約束している。つまり、誰がホワイトハウスの主になっても、TPPの死を誓ったことになる。
クリントン氏には単に夫の「おとり戦術」に従っているだけだとの疑いがついて回った。ビル・クリントン元大統領は1992年に北米自由貿易協定(NAFTA)に大反対して出馬したが、ふたを開けてみれば、就任後はNAFTA成立を確実にするために何でもやった。
バージニア州知事でクリントン夫妻の旧友であるテリー・マコーリフ氏は26日、ヒラリー・クリントン氏は12カ国が参加するTPPについて、これ(夫がNAFTA容認に一転したこと)と全く同じ方向転換を考えていると示唆した。ほぼ瞬時に、マコーリフ氏は発言の否定を余儀なくされる。クリントン陣営の選挙戦を率いるジョン・ポデスタ氏はこうツイートした。クリントン氏は選挙の前も後もTPPに反対する。「ピリオド。以上、終わり」
■TPP、クリントン氏測るバロメーターに
クリントン氏がおだてられ、自分が言っていることは心から本気だと有権者に確約するのは、これが最後にはならないだろう。国務長官のときにはTPPを貿易協定の「金字塔」と評した。TPPに反対する前は、支持していたのだ。
共和党大統領候補のトランプ氏は、この絶対的な矛盾についてクリントン氏を攻撃するチャンスを逃さないだろう。25日にフィラデルフィアの民主党全国大会の会場を反TPPのサインで埋め尽くしたバーニー・サンダース氏の支持者らも同様だ。サンダース支持者やクリントン氏に懐疑的な人たちにとっては、TPPに関してどうクリントン氏が行動するかが彼女の誠実さを測る最大のバロメーターとなる。クリントン氏に残された逃げ道は小さくなり続けるわけだ。
だが、クリントン氏が候補としても大統領としてもTPPに反対するというポデスタ氏の言質には、カギとなる隙間がある。11月から1月までの空白期間に開かれる「レームダック(死に体)議会」がそれだ。オバマ氏にとっては、TPPを批准する最後のチャンスとなる。