高橋・・・。
オレたちに頼みたいことって何だ?
・・・伊藤さん、今日は“あるオウンドメディア”に投下する記事の制作をお願いしに来ました。
・・・オウンドメディア?
はい。
実はオレ、今、ある旅館のWeb集客をお手伝いしているんですが、その旅館が今度、新しくオウンドメディアを始めることになったんです。
で、そのオウンドメディア用の記事を、ぜひバズボンバーの皆さんにも書いていただきたいんです!
・・・オウンドメディアのプランニングは終わっているのか?
はい!
いいだろう。
どんなオウンドメディアか聞かせてもらおうじゃねえか。
ありがとうございます!
そのオウンドメディアはですね・・・。
遠藤・・・。
話が違うではナイか。
は・・・!?
みやび屋の集客が回復していると聞いたアル。
!?
あっ、あれはですね、ただ偶然が重なっているだけでございます!
もう少しお時間をいただければ、みやび屋がつぶれるのも時間の問題かと・・・!
なあ、井上!?
は、はい!
みやび屋がつぶれるのは時間の問題でございます!
というのも、今、須原を訪れる観光客は日ごとに減っております!
須原の観光客が減れば、みやび屋がいかに踏ん張ろうとも、なす術はないかと・・・!
フフフ・・・。
我々が運営しているオウンドメディア「TRAVEL UP」の月間ページビューは今や500万を超え、観光業界に大きな影響力をもちはじめております。
その「TRAVEL UP」では戦略的に須原の情報を一切載せておりません。
「TRAVEL UP」で取り上げられない観光地は、もはやこの世に存在していないのも同じ。
観光客が集まらなくなった須原にて、みやび屋は“絶望”という言葉の本当の意味を知ることでしょう。
フッフッフ・・・。
何がフッフッフ、アルか!!
おまえたちのオウンドメディアのページビューなんてどうでもいいアル!
おまえたちの会社に私が発注している理由を忘れたわけではないアルな!?
そんな手間のかかる方法ではなく、もっと早くみやび屋に引導を渡すアル!
みやび屋を徹底的に追い詰め、サツキを失意のどん底にたたき落とすアル!
そうすれば、いよいよサツキが私を頼ってくるはずアル。
は、ははーっ!
・・・で、一体、誰がみやび屋に入れ知恵してるアルか?
・・・は??
隠すのはやめるアル。
みやび屋が屈しないのは何か理由があるはずアル。
・・・おそらく何者かが入れ知恵をしているのではナイか?
い、いや、え・・・と、何者と仰いましても・・・。
(く、くそ・・・。
ヤン・タオめ、なんてカンの鋭いやつなんだ・・・!)
・・・「ボーン・片桐」のしわざでございます。
・・・ボーン・片桐?
(こ、こら、井上!!
お、おまえ、何を勝手に・・・!)
(遠藤様、ご安心ください。
ここはヤン様にも事態の共有をしておいたほうがよろしいかと。
私がうまく説明してご覧にいれます)
・・・ボーン・片桐。
そいつは何者あるか?
はっ!
世界最強のWebマーケッターを名乗る男でございます。
表舞台には顔を見せず、業界で暗躍し続けており、世界中のWebサイトを操ろうとしているやつでございます。
世界最強のWebマーケッター?
なぜそんな奴がみやび屋に肩入れしているアルか?
・・・これは非常に申し上げづらかったのですが、ヤン様には正直にお伝えしておきます。
おそらく、ボーン・片桐は、サツキとただならぬ関係があるのではないかと。
た、ただならぬ関係だと・・・!!?
(・・・やるじゃないか、井上。
ボーンのやつをヤンの恋敵に仕立て上げるということか)
(・・・フフフ。
さようでございます)
な、なるほどアル・・・!
サツキが私の求婚に応じなかったのは、その男の存在が原因だったアルか・・・!
はい、おそらく、そうでございます。
ボーン・片桐・・・。
遠藤、井上、その男もみやび屋と合わせて徹底的につぶすアル!!
この私に勝負を挑むなど、数億年早いことを思い知らせるアル!!
そして、サツキから一切の希望を奪い、私なしでは生きていけないようにするアル!!!
ははーっ!!!
くっ、それにしても、まさか、我々の仕事をあそこまで酷評するとはな・・・。
ヤンのやつめ・・・。
まあまあ、遠藤様。
ここは辛抱でございます。
我々の目的としては、タオグループから多額の予算を引き出し、「TRAVEL UP」をはじめとしたメディアの充実を図ることですから。
多少のことはガマンし、最後に我々が高らかに笑いましょう。
しかし、井上、お主もワルよのう。
ヤンにボーンの存在を教え、追加予算を引き出すとはな。
フフフ・・・。
ボーン・片桐はもはや我々にとって敵ではございませぬ。
むしろ、我々のビジネスのために利用すればよいのです。
ボーン・片桐よ。
お前には散々煮え湯を飲まされたが、どうやら最後に笑うのは我々のようだ。
滅びゆく須原の地で無様な姿をさらすがよい。
ハッハッハ。
ハーッハッハッハ!!!
・・・というオウンドメディアなんです。
ここはぜひ、バズボンバーの皆さんのコンテンツ力をお貸しいただければと!
高橋は自身がプランニングしたオウンドメディア「みやび旅」について、伊藤たちに熱く説明していた。
・・・なるほどな。
須原の温泉旅館で働く人たちに、プロの視点で旅行のノウハウを語らせるコンテンツってわけか。
はい!
そうなんです!
温泉旅館で働く人たちだからこそ見える“温泉旅館選びのポイント”などがあると思っていまして。
・・・高橋、悪いが、その仕事はパスだ。
・・・え?
えええええええ!!?
オレたちはその仕事を請けねえ。
・・・!!
むしゅしゅしゅ、そのコンテンツって、別にオレたちバズボンバーでなくても、作れそうでしゅね~。
嗚呼、高橋、君がインターンとして我々と一緒に過ごしたあの時間は一体何だったのだろう。
えっ・・・!?
い、いや、そ、そんな・・・。
わりーが、帰ってくれ。
また、別の仕事があったら相談に乗ってやっから。
伊藤さん・・・!
(い、一体何が・・・。
オレの企画の何が悪かったんだ・・・!?)
その頃、ボーンとヴェロニカはチップを探し、須原の地を巡っていた。
チップ、一体どこにあるのかしら・・・。
・・・。
サツキさんたちにもチップの捜索を手伝ってもらっているけれど、今のところ、いい連絡はないわね。
そうか・・・。
この須原に来てからすでに40日が過ぎたわ。
チップが停止するまで、あと52日。
焦っても仕方がないのはわかっているけれど、もしものときのことは考えておいたほうがいいのかも・・・。
ああ。
・・・チップが見つからないときは、チップ自体を破壊するしかない。
!?
チップが見つからないのに、どうやって破壊するの?
『キャッシュオールクリア』を使う。
キャッシュオールクリア・・・!?
ああ、オレの身体の中を流れる微弱な電流を瞬間的に増幅させ、強烈な電磁波を起こし、半径300m周辺のあらゆる電子機器の回路をショートさせる技だ。
・・・!!
そんな技が・・・。
ただ、その技はオレの肉体に大きなダメージを与える。
それだけではない、この須原の地の電気系統にも異常が起き、このあたり一帯は数日は営業が停止するだろうな。
・・・できれば使いたくはない。
あなたの身体のことはもちろん心配だけれど、それ以上に、プロのWebマーケッターが何の罪もないお店の営業妨害をするなんて、あなたの誇りに大きな傷をつけることになるわね・・・。
・・・ああ。
しかし、もしものときは話が別だ。
あのチップが誰かの手に渡ってしまうということは、この国、いや、この世界の未来を危機に陥れることを意味する。
それを防げるなら、オレの誇りが傷つくことなんて大したことではない。
ボーン・・・。
・・・親父。
あなたが命を懸けて守ろうとしたモノは、オレが・・・守り抜く・・・!
さて、と。
明日は8件の予約が入っていたわね。
がんばらなくっちゃ!!
ボーンのアドバイスによって、みやび屋はその輝きを取り戻しつつあった。
そして、みやび屋で働くサツキたちにも、明るい笑顔が戻ってきていた。
(ふう・・・。
まさか、バズボンバーに断られるなんてな・・・。
サツキさんたちを期待させてしまった分、どうしよっかな・・・)
あっ!
高橋さん、おかえりなさい!
・・・!!
サ、サツキさん!
高橋、ただいま戻りました!
高橋さん、私たちのためにライターさんに掛け合っていただき本当にありがとうございます・・・!
“とっておき”と仰っていたライターさんの反応、どうでしたか?
あっ!!
・・・え、えと、なかなかの好反応で、明日また詳しいことを打ち合わせすることになりました!
そうだったんですね!
そのライターさん、お仕事、引き受けていただけそうでしょうか・・・?
も、もちろんですよ!!
泣く子も黙るこの僕が声をかけたんですからね。
フフフ、期待しておいてくださいよ。
ありがとうございます・・・!
たはーっ・・・。
ああは言ったものの、ライター探し、どうすっかな・・・。
それにしても何が悪かったんだろ・・・。
オレの頼み方?
それとも、オレがあまりにもイケてる男になっていたがゆえの嫉妬・・・!?
まあ、いいや・・・。
とにかく時間がないし、ほかにアサインできそうなライターを見つけなくちゃな。
困ったときは検索あるのみ!
え・・・と。
「ライター お問い合わせ」と検索して・・・と。
サツキさん、ムツミさん、この方が今回ライティングを担当してくださる「サーロイン杉本」さんです。
この方がライターさん・・・!
(さすがプロのライター、ただものではないオーラをビシバシ感じるぜ・・・!)
ハッハ!
サーロイン杉本です。
よろしくお願いいたします。
はじめまして!
みやび屋の女将の宮本サツキと申します。
このたびはこちらこそよろしくお願いいたします。
ハッハ!
これは美しい女将さんですな。
私、いつも以上に張り切ってしまいそうでございます。
あ、あの・・・。
サーロイン杉本さんってすごく迫力のある名前ですよね。
もしかして、サーロインステーキがお好きだったり?
ハッハ。
そうであります。
ステーキは素敵を生み出すエッセンス。
それが私の座右の銘でございます。
なるほど・・・!
(なんだかよくわかんねーけど、熱いソウルを感じるぜ!)
ハッハ。
わたくし、普段はグルメに関する記事を多く書いておりまして、個人ブログも所有しております。
そのブログのページビューは月間200万ほどでございます。
ハッハ。
月間200万ページビュー!!
すげえ・・・!!
あっ、実はサーロインさんはグルメ系ブロガーとして有名な方なんですが、グルメだけでなく、さまざまなジャンルの記事を複数の媒体で書いてらっしゃるライターさんでもあります。
ハッハ。
そうでございます。
最近ではグルメ探訪のための旅好きが高じて、旅行に関する記事を書かせていただくことも増えてまいりました。
なにせ、食と旅は切っても切り離せない関係でございますから。
そうなんですね!
そんな方に記事を書いていただけるなんて光栄です。
どうぞ宜しくお願いいたします!
ハッハ。
こちらこそよろしくお願いいたします。
お力になれるよう、尽力する所存でございます。
というわけで、サーロインさんには早速ひとつ目の記事を書いていただこうと思っています。
サーロインさん、事前にお伝えしていたとおり、今回の記事はすでに企画が固まっていて、“取材”がベースとなっています。
詳しくは後ほどお打ち合わせさせてください。
ハッハ。
承知いたしました。
あ、高橋さん、頼まれていたリストをお渡ししますね。
取材を引き受けてくださる須原で働く人たちのリストです。
このリストの中でいえば、松戸屋のご主人が一番早く取材を受けてくださるかもしれません。
明日でも明後日でもOKだと仰っていました。
サツキさん、ありがとうございます。
それでは、このリストをもとに諸々進めてまいりますね。
ハッハ。
なんなら、明日取材をし、明後日には原稿を完成させますよ。
ハッハ。
ええっ、すごいです!
実績のあるライターさんの手にかかれば、そんなに早く記事が完成してしまうものなんですね。
楽しみにしています!
(へえ~、プロのライターってさすがだなあ)
・・・。
(マ、マズイ・・・
まさかこんな記事が上がってくるとは・・・)
・・・なんだろう・・・。
勢いはあるのだけれど、記事全体を包み込む、このもったり感・・・。
ハッ!
これはまさにサーロインステーキの脂ぎった香りにそっくりだ・・・。
上質な旅の情報を届けるはずの「みやび旅」のイメージが・・・。
あ、高橋さん。
こちらにいらっしゃったんですね。
あっ!
サ、サツキさん!!
サーロイン杉本さんの記事の進捗いかがでしょう?
え、えとですね、サーロインさんがもう少し時間を欲しいとのことで、お任せしているところです。
そうなんですね。
さすがに2日で記事なんて仕上がらないですものね(笑)
は、はい、僕も記事の完成を心待ちにしていまして・・・。
(・・・実は記事はもうすでに仕上がっているんです!なんて言えない・・・)
では、私、これから少し外出しますので、引き続きよろしくお願いいたします。
はい!
お疲れさまです!
(・・・ふう・・・。
しかし、この記事、どうっすかな・・・。
書き直してくれって言うにしても、何をどう書き直してもらえればいいのかうまく伝えられる自信がねー・・・)
高橋、どうかしたか?
ギャアッ!!!
ギャアって・・・。
高橋くん、驚きすぎ。
これが、お前が頼んだライターの初回原稿か?
ボーンは高橋のデスクの傍らに置かれたプリントアウトされた原稿に目をやった。
い、いやいやいや、こ、これはただのメモ書きさ、そうメモ書き。
メモ書きにしては、しっかりした原稿に見えるけれど。
えっ!
あ、あの、え、えーと・・・。
・・・。
高橋、詳しく話してみろ。
・・・えっ・・・。
あ、ああ・・・。
実は・・・。
・・・ということなんだ・・・。
なるほどね。
本当はバズボンバーに記事を頼みたかったけれど、彼らに断られた。
そして、仕方なしにネットで見つけたライターに仕事を頼んだものの、上がってきた原稿がイメージと違う、と。
そ、そうなんです・・・。
そのライターの記事を見せてみろ。
あ、ああ・・・。
ハロー!ホットスプリングス!
さすらいの旅行ライター「サーロイン杉本」です。
突然ですが、みなさんは恋人と温泉旅行へ出かけることはありますか?
もし、出かけるとしたら、どんな基準で温泉旅館を決めてますか?
ソファーに腰掛けミルクたっぷりの珈琲を飲みながら開く旅行雑誌。
ページをめくる手がふと止まり「あれっ?この旅館素敵・・・!」なんてフィーリングで決めちゃう?
もしくは、何気ない休日でテレビで流れる旅行番組、「悠久の時を奏でる~」なんちゃらのナレーションに感化されて心動かされちゃう?
それとも「ずっと行きたい場所があるんだ。君となら・・・」なんてドラマチックに決めちゃう?
旅行先の選び方は人それぞれですよね~。
てなわけで、あらためましてこんにちは。
さすらいの旅行ライター「サーロイン杉本」です。
私、普段はグルメ系ブロガーとして活動しているのですが、食と旅は切っても切り離せない関係。
まだ見ぬ食を求め全国を旅し続けた結果、旅の疲れを癒やしてくれる温泉旅館の魅力にハマり、それがきっかけで、旅行関係の記事を書かせていただくことが増えてまいりました。
そこで今回、須原の温泉旅館として名高い「みやび屋」さんが旅行に関するメディア『みやび旅』を始められるということで、ひょんなご縁で、栄えある第1回目の記事を書かせていただきます。
『みやび旅』のコンセプトは「旅館関係者が選んだオススメの温泉旅館の紹介」ということで、今回私は、旅館のプロ中のプロである“さる方”にお話を伺ってまいりましたよ。
そのお方とは・・・。
ドーン!!
須原の温泉旅館「松戸屋」の主人、松戸良太郎さんです!
というわけで、松戸屋さん、よろしくお願いいたします!
サーロインさん、こちらこそよろしくお願いいたします。
いや~、それにしても感慨深いです。
温泉旅館好きが高じて7年。
まさか旅館のプロの方とこうして対談できるなんて。
さて、早速ですが・・・。
松戸屋さんのオススメの温泉旅館を教えていただけませんか?
はい、私がオススメしたい温泉旅館は7つありまして、最初にご紹介したい温泉旅館は兵庫県の山谷温泉にある『聚楽(じゅらく)』さんです。
『聚楽(じゅらく)』ですか!?
私、これでも温泉旅館に詳しいほうと自分では思っておりましたが、その旅館のことは知りませんでした。
聚楽、聚楽・・・。
この言葉の意味を調べてみると「皆で集まって楽しむ」という意味があるようですね~。
素敵な名前ですね。
はい。
この聚楽さんは、知る人ぞ知る温泉旅館で、その温泉の質や料理の美味しさ以上に、ホスピタリティが素晴らしいんです。
ホスピタリティ?
病院のことですか?
い、いえ、ホスピタリティとは、カンタンにいえば「おもてなし」のことです。
ほほう、おもてなしですか。
(~以下省略~)
なるほど。
ボーンのアニキ、教えてくれ・・・。
このライターさんの記事を手直ししたいんだが、どこからどう手を付けていいのかがわからないんだ・・・。
手直しはムリだな。
え・・・。
これだけ特徴のある文体だ。
おそらく、本人としては自分の文章に強いプライドをもっているはずだ。
不用意な手直しの指示は、このライターのやる気を削ぎ、記事の勢いを殺すことになるだろう。
そ、そんな・・・。
そして何より、このライターは“取材”に慣れていない。
取材記事をこれ以上書かせるのもよくないだろう。
取材に慣れていない・・・!?
この文体を見ればわかる。
このライターはあくまでも“自分が主役になる文章”を書くことを得意としている。
今回のように、“聞き手”に徹する必要があるコンテンツには向いていないのだろうな。
取材の際、相手の話以上に自分の話をペラペラ話しちゃうタイプに見えるわね。
そ、そんな・・・。
高橋、人選を焦ったな。
面目ねえ・・・。
バズボンバーのみんなにさえ、断られなければ・・・。
バズボンバー・・・。
高橋くん、元々はバズボンバーに記事を書いてもらおうとしていたのよね。
は、はい。
あの人たちのコンテンツ力をお借りできれば、「みやび旅」も一気にスタートダッシュできるんじゃないかと思って・・・。
ふふふ。
そんなに上手くいかないわよ。
だって、今回のような記事は彼らの得意分野じゃないもの。
得意分野・・・?
ライターには向き不向きがあるの。
小説のように流れる文章を書ける人でも、取材は苦手だったりするように。
バズボンバーの伊藤くんはそれを知っているから、高橋くんの依頼を断ったのかもね。
自分たちの弱みを知り、それを回避するのもプロの責務よ。
えっ・・・!?
ひとまず、さっきの記事の話に戻るぞ。
高橋、お前が手配したライターは、松戸屋の主人の中に眠るコンテンツをほとんど引き出せていない。
マ、マジかよ・・・。
くそーっ、オレも取材に立ち会うべきだった・・・。
サーロインのおっさんに完全に任せっきりにしちまったものな・・・。
松戸屋の主人も、忙しい中、せっかく時間をとってくれたってのに・・・。
ううう・・・。
サツキさんに大見得切ったあげく、こんな記事しか見せられないんじゃあ、面目ねえにも程がある・・・。
あら、でも、私、このライターさん好きよ。
文体に勢いがあるし、今回の案件に合っていなかっただけで、今後、頼むことがあるかもしれないわよ。
そ、そうですか・・・。
松戸屋はどこにある旅館だ?
え・・・?
ここから200mほど行った先にある旅館だけれど・・・。
200mか。
ヴェロニカ。
・・・頼む。
OK、ボーン。
松戸屋さんに今日泊まれるかどうか聞いてみるわ。
ついでに、チップ捜索につながる手がかりがないかも調べてくるわね。
・・・???
お前をWeb集客のプロとしてサツキたちに紹介した手前、初回の記事でつまづき、お前への信用を失わせるわけにはいかんからな。
今回の記事はヴェロニカに書いてもらうことにする。
えっ!!?
ヴェロニカさんが・・・!?
フフフ、こう見えて、ライティングは得意なのよ。
そ、そうなんですね・・・!
なんだか申し訳ないです・・・。
オレの不甲斐なさが原因でご迷惑をかけてしまって・・・。
高橋くん、心配しないで。
あなたはまだライティング案件の経験が少なかっただけ。
先日のプランニングシートを見れば、あなたがどれだけディレクターとしての勉強をしてきたかは分かるわ。
ヴェロニカさん・・・。
ただ、問題は松戸屋の主人だ。
一度取材を受けたにもかかわらず、二度目の取材を受けるわけだからな。
そこは、松戸屋に宿泊し、宿泊客からの頼みという形にするしかないだろう。
そうね。
松戸屋さんのお仕事の邪魔をしないよう、隙を見てお話をうかがうようにするわ。
あ、ありがとうございます・・・!!
この記事、すごく素敵です・・・!!
さすが、高橋さんです!
「温泉旅館を選ぶ際は、みんな、部屋・食事・温泉の3つで選ぼうとするんだけど、実はもっと大切なことがあるんだよな。
それは『思い出に残るかどうか』だよ」
そう話してくださったのは、栃木にある温泉地「須原」にある老舗旅館「松戸屋」のご主人、松戸良太郎さんです。
松戸良太郎さんは先代の教えのもと、温泉旅館の経営に携わられて30年。
理想の温泉旅館を目指すべく、全国のいろいろな旅館に自ら足を運び、「お客様に喜んでもらえる温泉旅館」の本質を追い求めてこられました。
はじめまして、「みやび旅」のライター、一ノ瀬みやびです。
このサイト「みやび旅」は、須原にある温泉旅館「みやび屋」が運営する“日本国内の上質な旅を再発見するメディア”。
今、インターネットにはたくさんの旅行情報サイトがありますが、旅館で働く人たちの視点で情報発信されているサイトは少なく、旅館がもつ魅力のうち、目に見えている部分しか伝わっていないことがたくさんあります。
旅行をするということは、それがたとえ1日、2日であっても、人生において、大切な時間を使うということ。
せっかく旅行をするのであれば、その大切な時間が、より思い出深いものになるようにとの想いで、このメディアは始まりました。
この「みやび旅」では、温泉旅館のプロだからこそ伝えられる温泉旅館の楽しみ方をお届けしていきます。
また、旅行業界の表も裏も正直に伝えてゆけるメディアになればと思っています。
そんな「みやび旅」の第1回目の記事は、温泉旅館経営のプロが選んだオススメの温泉旅館特集。
お話を伺ったのは、みやび屋と同じ須原にある老舗旅館「松戸屋」のご主人、松戸良太郎さんです。
松戸屋は大正時代から続く旅館。
大正ロマン漂う館内、そして、各部屋から見える渓谷は、疲れた身体をリフレッシュしてくれると、温泉ファンの間では人気です。
良太郎さんはその松戸屋の4代目。
「オススメの温泉旅館?それなら、とっておきの旅館があるよ」
そう言いながら笑顔で取材に協力してくださった松戸良太郎さんがオススメする旅館とは、どんな旅館なのでしょうか?
旅行雑誌に載っていないとっておきの情報をたくさんお聞きできましたので、あなたが旅行する際の旅館選びの参考になればうれしいです。
(※本記事は松戸屋のご主人からうかがった情報を編集してお届けしています)
松戸屋のご主人が選ぶオススメの温泉旅館 7選
「温泉旅館を選ぶ際は、みんな、部屋・食事・温泉の3つで選ぼうとするんだけど、実はもっと大切なことがあるんだよな。
それは『あなたの思い出に残るかどうか』だよ」
松戸屋のご主人はそう切り出すと、ご自身のアルバムを開きながら、優しく語り出してくださいました。
「俺は旅館の経営者だけど、根っからの温泉好きでさ。
休みをとれれば、全国のいろいろな温泉旅館に足を伸ばしているんだ」
そう言いながら見せて下さったアルバムの中の写真には、全国各地の温泉旅館の前で笑顔で写真を撮るご主人の姿がありました。
「ははは、どの写真も笑顔のように見えるだろ?でもさ、実はこの笑顔の中には“ここにはもう来ないぞ”って思いながらの笑顔も含まれているんだ」
そんなドキッとするような言葉を使いつつ、イタズラっ子のような笑顔を見せてくださった松戸屋良太郎さん。
良太郎さんは松戸屋の主人として、日々、松戸屋に宿泊されるお客様のお世話をされていますが、プロとしてこだわりをもって仕事をしているからこそ、ほかの旅館に泊まったときにその旅館が大切にしているこだわりにも気付けるらしいのです。
「さっきも言ったけれど、温泉旅館を選ぶ際、部屋・食事・温泉の3つというのは、誰でもわかりやすい。
ぶっちゃけ、そこそこ金額が高い旅館に泊まれば、よっぽどひどい経営をしていない限り、部屋や食事というのは豪華なもんだ。
でも、実際に温泉旅館に宿泊してみれば分かると思うが、温泉旅館ってのは、さっきの3つだけで成立しているものじゃないんだ。
たとえば、ホスピタリティ、いわゆる“おもてなし”で作られる、その旅館独特の“空気感”ってのがあるんだよ。
正直、料理の味や温泉の心地よさってのは時が経てば忘れてしまいやすいが、その“空気感”ってのは記憶に鮮やかに残る。
そして、その空気感が、温泉旅館に宿泊した思い出を作るんだ」
空気感・・・?
話を聞いていた私がいまいちピンと来ていない私に、松戸屋の主人は続けて言いました。
「今から紹介する7つの温泉旅館についての話を聞けば、きっとオレが言いたいことの意味がわかるはずさ。そして、この7つの旅館のうち、どれかに足を運んでみてほしい。
きっと、温泉旅館の本当の魅力がわかるだろうから」
そして、松戸屋の主人は以下の7つの温泉旅館を紹介してくださったのです。
1、山谷温泉「聚楽(じゅらく)」
兵庫県の名湯にある、知る人ぞ知る温泉旅館
「聚楽(じゅらく)」は兵庫県の名湯「山谷温泉」にある温泉旅館です。
部屋数は5つと、とても小さな温泉旅館なのですが、初めてこの旅館に宿泊された松戸屋のご主人はビックリしたそうです。
「到着して出されたお茶、茶菓子、そして部屋への案内まで、すべてが完璧だった」
(~以下、省略~)
喜んでくださってうれしいです。
ちなみに、この調子で第2弾、第3弾の記事もアップしていきますね。
あ、でも、ライターさんのお名前が「サーロイン杉本」さんではなく、「一ノ瀬みやび」さんになっていますね。
サーロイン杉本さんはどうされたんですか・・・?
あっ・・・!!!
サーロイン杉本さんは、あ、あれです!
サーロインステーキの食べ過ぎで夏バテならぬ肉バテになってしまったようで、今回急遽、私の知り合いの「一ノ瀬みやび」さんにお願いしたんです。
サーロインさんに期待してくださっていたのに、申し訳ございません・・・!
いえいえ!
全然問題ありません!
代打の一ノ瀬さんがこんなに素敵な記事を仕上げてくださったんですから。
それにしても、サーロインさん、大丈夫でしょうか・・・?
き、きっと大丈夫です!
安心してください!
(・・・しかし、今回はヴェロニカさんに助けられたな・・・。
まさかヴェロニカさん、ライティングもこんなに得意だったなんて)
高橋くん、松戸屋のご主人からたくさんの興味深い話を聞いてきたわよ。
ありがとうございます・・・!!
今回、松戸屋のご主人には「サーロイン杉本」さんから私にライターが代わったことを内緒にしてもらう約束を交わしたわ。
松戸屋のご主人には「ライターさんとはいえ、大切な宿泊客だ。それなら、お客さんのプライバシーは守らないといかん」と仰っていただいたから、安心して。
そ、そんな配慮まで・・・!!
本当にありがとうございます・・・!!
高橋くん、せっかくだから、今回、私が取材記事を作成するにあたって活用したノウハウを教えておくわね。
取材記事作成のノウハウ・・・?
そう。
取材記事はね、取材時に相手からどんなコンテンツを引き出すかで勝負が決まるといっても過言ではないわ。
サーロインさんの記事、私は好きだったけれど、彼の記事は明らかな「取材力」不足だった。
取材力・・・?
そう、取材力がないと、相手の中に眠るコンテンツをうまく引き出せないのよ。
相手の中に眠るコンテンツ・・・。
取材力に必要なのは「空気を作る力」や「聞く力」、そして「質問する力」などよ。
また、取材して手に入れた情報を編集する「編集力」も大切になるけれど。
いろいろな力が必要になるんですね・・・!
そうね。
まあ、今から話すことを覚えておいてもらえれば、きっと、高橋くんもいい取材記事が書けるようになるはずよ。
●取材記事作成を成功させるためのポイント
取材記事を作成する過程はね、大きく分けて、取材前、取材当日、取材後と分かれるの。
どの過程においても配慮すべきポイントがあるから、それを教えておくわ。
■取材前(準備)
1、ライターの手配
ライターを選ぶ際は、取材経験豊富なライターを選ぶに越したことはないわ。
取材相手もリラックスしやすく、いい情報を引き出しやすいから。
ただ、取材経験の豊富なライターといっても、個々によって経験はバラバラだから、あなたが選ぼうとしているライターが「過去どんな取材をしてきたのか?」という経歴や実績をチェックしておくのはいいわね。
たとえば、そのライターが書いた過去の取材記事を読むのもいいわ。
もし、その記事を読んだ際、ほかの媒体には書かれていないような情報がたくさん載っていたのなら、そのライターの取材力はたいしたものよ。
なぜなら、取材相手がそのライターに心を許したということになるから。
きっと、「現場の空気づくり」が上手いライターなのかもね。
2、カメラマンの手配
取材記事に写真を入れれば、文章では補足できない取材相手の微妙な表情の変化などを見せることができるようになるわ。
ただ、写真を入れる際は、中途半端なクオリティの写真を入れるのは絶対にダメ。
その写真のクオリティに記事が引っ張られてしまうから。
だから、可能なかぎり、プロのカメラマンを手配するようにしてね。
ちなみに、取材当日にカメラマンを同行させる場合には、必ず事前に相手に伝えておいてね。
でないと、当日、取材相手が「撮影向きではない服装」で現場に現れるなんてケースもあるから。
「写真を撮るのなら、先に言ってくんなきゃ・・・」なんてトラブルは結構あるの。
気をつけてね。
3、下調べをしっかりしておく
取材当日までに、取材相手に関するできるだけ細かな収集しておくことは大切よ。
「えっ!?そんな情報も知っているんですか?」と、相手が驚くくらいに調べておいて損はないわ。
あなたが相手のことをしっかり調べたということは、その行為自体が相手に対する敬意の量になるの。
取材相手に関する情報を収集する際は、検索エンジンなどを使えばかなりの情報が収集できるけれど、もし、相手がTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで日々何気ないつぶやきをしているのなら、それらのつぶやきをチェックしておくこともオススメよ。
そうそう、以前、高橋くんも読んだと思うけれど、デール・カーネギーさんの「人を動かす」という書籍にも書かれている「相手に誠実な関心を寄せる」という言葉をゆめゆめ忘れないでね。
4、取材の目標を立て、質問リストを作っておく
取材で大切なのは「どんな質問をするか?」ということよ。
ただ、質問を考えるためには「自分はどんな答えが欲しいか」ということも大事なの。
だって、最終的にはひとつの記事の形にするわけだから、あまりバラバラな情報ばかり集めていると、後々の編集が大変になるし、編集がうまくいっていない記事は読者には見向きされないから。
そのために大切なのは、“取材の目標を立てる”ということ。
たとえば「この情報は絶対に教えてもらうぞ!」という質問を決めておくの。
そして、それ以外の質問は「この情報は時間があったら教えてもらおう」という形にして、目標に沿って質問の優先順位を決めておくの。
そして、カンタンな「質問リスト」を作っておくのよ。
その質問リストがあれば、取材相手に事前に「当日、こんな質問をしますよ」ということを知らせておけるし、もし、相手が答えにくそうな質問があるのなら、事前に対処できるでしょ?
また、難しい質問が含まれている場合は、当日までに相手が答えを考えてきてくれるかもしれない。
地図やコンパスのない航海は大変よ。
「質問リスト」は、取材という戦場であなたを導いてくれる地図であり、コンパスであることを知っておいて。
■取材当日(空気づくり)
1、レコーダーを使ってよいかの許可をとる
相手の話を聞きながらメモをとっていると、メモをとっている間、相手の話を聞き逃してしまう恐れがあるわ。
また、いいタイミングで質問もできなくなる。
だから、そうならないように、相手の話はレコーダーで録音しておくのがいいわね。
そうすれば、会話中は相手の話を全力で聞けるし、会話をレコーダーで録音しておけば、あとから「言った・言わない」のトラブルも避けられる。
ただ、レコーダーを使う際は、必ず事前に相手に許可をとってね。
あとから「勝手に録音していた」とわかったら、トラブルの元になることもあるの。
なぜなら、最近のレコーダーは基本的にはファイル形式で録音するから、ファイルって気軽にコピーできてしまうのよね。
だから、ちょっと古い考えの人の中には「録音したファイルが漏洩すると困るので、あとで削除しておいてほしい」という人もいるの。
だから、そのあたりはしっかりケアしておいてね。
2、現場の緊張を緩和するために、雑談から始める
取材の出だしは緊張するものよ。
あなたが緊張するのはもちろん、取材相手はもっと緊張しているから、まずはお互いの緊張を解くことが大切ね。
その上でオススメなのが、とりとめもない雑談をすることなの。
「天気に関するネタ」「地域や場所に関するネタ」「健康に関するネタ」「食べ物に関するネタ」「芸能に関するネタ」、そういったネタは誰とでも盛り上がれる鉄板のネタよ。
これらのネタをもとに雑談をすれば、現場の空気がやわらかくなるはず。
3、「類似性の法則」を発動するために、共通点を探す
心理学にはね、「類似性の法則」というものがあるの。
これは、“人は自分と共通点をもつ相手に心を開きやすい”という法則よ。
この「類似性の法則」をうまく使えば、現場の雰囲気がいい意味でフランクになりやすいの。
だから、取材を進める中で相手との共通点をうまく見つけ出してね。
たとえば、相手と住んでいる場所が近いとか、年齢が近いとか、大学時代の専攻が同じとか、好きな食べ物が同じとか、好きなアイドルが同じとか。
相手が企業だったら、極端な話、その企業の資本金と自分の誕生日の数字が似ているとか、何でもいいの。
ちょっとしたことでも共通点が見つかれば、「類似性の法則」は発動しやすいわ。
ぜひ心に留めておいてね。
■取材当日(取材中のあいづちや質疑応答)
1、相手とペースを合わせる(ペーシング)
取材中は相手が話しやすいように“会話のペース”を調節することが大事よ。
たとえば、相手の話のスピードに合わせて、あいづちや質問のスピードを調整するの。
あなたのあいづちが少し早かったりするだけで、相手が感じる話しやすさは変わってくる。
相手とペースを合わせることを「ペーシング(pacing)」と呼ぶの。
この言葉、覚えておいてね。
2、「話をしっかり聞いています」感を出す
取材というのは、相手の発言(アウトプット)が多くなる形式よ。
そんなとき、取材相手が気にするのは「自分の話を相手はおもしろいと思ってくれているだろうか・・・?」ということなの。
だから、聞き手は取材相手を不安にさせないよう、「私はあなたの話をしっかり聞いていますよ、あなたの話は面白いですよ」ということを意思表示する必要があるのね。
その際に使えるテクニックが、あえて“間”を空けたり、相手の話を要約することなの。
たとえば、「う~む、なるほど、そうなんですね」と“間”を空けて相槌を打ったり、相手の話を要約して「つまり~~ということなんですね」と聞き返すといいわ。
聞き上手になるためのテクニックの本などには、相手の話を「オウム返し」するとよいと書かれているケースがあるけれど、オウム返しばかりしていては、かえって「この人は自分の言うことを繰り返すばかりで、本当に腹落ちしているのかが心配だ」と不安にさせてしまうのよ。
また、「先ほど仰っていた、あのことなんですが・・・」と少し前の話題に触れることもオススメよ。
「おっ、この人は自分の話をしっかり覚えてくれている」と喜んでもらえるわ。
相手の話を要約したり、再度取り出すのは、記事執筆の際の間違えた解釈をしないための保険にもなるの。
ぜひ積極的に使ってね。
3、相手が考えているときは、沈黙を恐れず、じっくりと待つ
あなたが質問したあと、相手が黙ってしまったとしても、焦って答えを求めてはダメよ。
その沈黙は、相手がじっくり考えている裏返しでもあるの。
たとえ長い沈黙が続いても、焦らず、ゆっくり待ってあげてね。
4、基本的に、こちらは“教えを乞う”スタイルで取材にのぞむ
取材相手と対等な立場で話をするのはダメよ。
自信のない相手だと恐縮してしまって、あなたのほうが立場が上になっちゃうこともあるから。
よって、こちらは「相手から教えを乞う=教わる」という立場で、相手を立てつつ取材にのぞむようにしてね。
5、相手と友達になることを目指す
ここまで挙げてきたノウハウをうまく活用できれば、相手と友達のような関係になれる場合もあるわ。
友達というのは、気兼ねなく付き合える関係ということ。
相手があなたに対して「この人はリラックスできる」と感じるようになれば、友達のような関係になって、今まで引き出せなかったような情報が引き出せる場合もある。
ただ、友達のような関係といっても、さっき伝えた「相手を立てる」ということは大切にしてね。
取材相手へのオマージュをけっして忘れないように。
6、相手の言ったことを深掘りする
相手が話したことに対して「Why(なぜ?)」で常に考えるようにすれば、相手の話をどんどん掘り下げることができるわ。
そうすれば、相手との間に沈黙も生まれにくい。
ただ、あまりにも「Why(なぜ?)」が多すぎると相手が疲れちゃうから、ほどほどにね。
7、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を交互に使い、質問にリズムをつくる
「オープンクエスチョン」というのは、回答がいろいろなパターンに分かれる質問のこと。
そして、「クローズドクエスチョン」は回答が「Yes(はい)/No(いいえ)」の2パターンに分かれる質問のことを指すわ。
取材の際は、ほとんどの質問が「オープンクエスチョン」になってしまうけれど、ときどき「クローズドクエスチョン」を交えることで、長い取材時間の中でも相手が疲れにくくなるの。
「クローズドクエスチョン」だと答えに困りにくいし、何より、脳への負担も少ないわ。
選択肢を狭めてあげることで、相手の脳の負担を減らす、まさに「選択のパラドックス」を意識したノウハウね。
■取材後(アフターフォローから記事の作成)
1、公開までのフローを伝える
取材が終わったあとは、今回の取材記事がいつどんな形で公開されるかを伝えるようにしてね。
また、公開までに記事の確認フローがあるのなら、それも一緒に伝えておいてね。
「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、取材後の対応はとっても大切なの。
けっして気を抜かないでね。
2、取材後の雑談にも気を抜かない
取材を終えたばかりのリラックスした相手と話していると、思わぬ情報を得られることがあるわ。
相手はリラックスしているかもしれないけれど、あなたはリラックスしすぎちゃうとダメ。
何か新しい情報が得られないか、アンテナを敏感に張っておいてね。
3、編集・脚色の許可をもらう
取材内容によっては、おもしろい記事をつくるのが難しい場合があるわ。
そのときは、聞いた内容を“事実に反しない範囲”で少し色づけする可能性があるということを伝えておくといいの。
記事執筆後に「自分が言ったことと違う」というトラブルを防ぐために大切なことよ。
4、御礼メッセージを送る
取材が終わったら、できればその日のうちに御礼メッセージを送っておいてね。
相手はあなたのために貴重な時間をとってくれたわけだから、その相手に対する感謝はできるだけ早く示したほうがいいの。
別れる際に挨拶をしたからメールを送らないというのはマナー違反よ。
もしかすると、同じ相手に後日再び取材することもあるかもしれないから、マナーを大切にした付き合いをしていれば、次に会ったときも安心よね。
5、録音や、撮影した写真を確認する
取材が終わったら、録音したファイルや撮影した写真を必ず確認してね。
もし、聞き取りづらいところや、記憶があやふやなところがあれば、できるだけ早い段階で相手に確認しておいたほうがいいの。
また、よい写真が撮れていなかった場合も、相手によっては、写真撮影の時間をつくってくれる場合があるから、あきらめないで。
6、記事として作成する
取材で得た情報は、まずは「マインドマップ」などにまとめて、論理展開を整理するといいわ。
記事の作成はそのあとから。
記事を作成する際の注意点は、あまり「会話調の表現」を用いないということ。
なぜなら、取材時の会話をそのまま記事にしてしまうと、余計な言葉がたくさん入ってしまい、記事として読みづらくなってしまうの。
また、その結果、検索エンジンにも評価されにくい記事になってしまうの。
まあ、会話調の表現を使うと、臨場感が出る場合もあるんだけど、慣れないうちは、会話調表現は抑えたほうがいいかもね。
私の書いた記事を見てもらえればわかるように、私の記事はあまり会話調表現を使っていないわ。
わりと読みやすかったでしょ?
それにしても、いい記事だなあ。
この記事を読んでいると、山谷温泉に行きたくなるし、三柴山温泉にも行ってみたくなるわね。
そして、この記事のインタビューを受けている人は須原の松戸屋の主人だから、須原のことも気になってくるよな。
アネキの狙い通りだぜ!
ううん、この素敵な記事は、高橋さんのおかげよ。
高橋さん・・・本当にありがとうございます!!
へ、へへへ~。
よし、では、オウンドメディア「みやび旅」を公開するぞ。
はいっ!!!
な、なんだ、このメディアは・・・!?
「温泉旅館 オススメ」で検索すると上位に表示されています・・・。
なぜ、そんなに大きな検索ワードで、こんな2・3記事しかないメディアが上位に食い込んでいるのだ・・・!?
みやび旅・・・!?
こ、このメディア、みやび屋のドメイン内で運用されているようです・・・!
ということは、みやび屋のメディア・・・!?
・・・!!!
おのれ、ボーン・・・!!!
あくまでも我々の前に立ちふさがるつもりか・・・!!
“
よし、もう一度チャレンジだ・・・。
一度断られちまうと、二度目は緊張するな・・・。
ううう、男を見せろ、高橋!
高橋、もう一度、バズボンバーのところへ行ってこい。
えっ!?
オレ、仕事を断られたんだぜ・・・!?
それは当然だ。
お前があいつらのことを理解できていなかったからな。
お前がバズボンバーでインターンをした経験は何だったんだ?
あいつらのそばでインターンをして、何を学んだ?
・・・!!
(何を学んだって言われても・・・歌舞伎町のゲイバーに連れて行かれたり、顔中に落書きされたり・・・。
あれ・・・何を学んだんだっけ・・・)
お前、あいつらを自分の物差しで判断していないか?
思い出せ。
あいつらは普通のライターの器に収まるような男たちではないぞ。
・・・!!
開放するんだ。
あいつらの可能性を。
開放・・・!!?
須原が完全復活するためには、あいつらの力が必要だからな。
バズボンバーの皆さん、いらっしゃいますか?
・・・?
高橋か?
むしゅしゅしゅ??
あれ、高橋くん、また来たよ。
嗚呼、道に迷って辿り着いたのではなかろうな。
(スーッ)
伊藤さん!田中さん!山本さん!
バズボンバーにしか作れないコンテンツで、みやび屋を・・・。
須原を救ってください!!
むしゅしゅ???
まさかの咆哮?
・・・高橋、おめー、何言ってんのか、分かってんのか?
はい!!
オレ、バズボンバーの作るコンテンツの一ファンだってことを思い出したんです。
バズボンバーが作るコンテンツはどこよりも突き抜けてて、そして、おもしろくて・・・。
オレなんかのペーペーの企画で縛っちゃえるような人たちじゃないってことを思い出したんです。
だから・・・コンテンツの企画もすべてお任せします!
須原を救う、とびきりのコンテンツをよろしくお願いします!
(言っちゃった・・・)
むしゅしゅ。
フッ・・・。
いいのか?高橋?
オレたち・・・ぶっ飛んだの作っちまうかもしれねーぞ。
・・・はい!
ぶっ飛んだの、ぶちかましちゃってください!!
・・・そこに腰掛けな。
見積書を作ってやる。
宮本サツキ・・・。
おまえはこの世でもっとも敵に回してはいけない男の怒りを買ってしまったアル。
12号、そこにいるアルか?
はっ!
サツキの弟・・・ムツミを・・・消せ。
・・・仰せのままに。
ヴェロニカの協力によって完成した取材記事。
その記事は遠藤たちを震撼させ、みやび屋のオウンドメディアの華々しい第一歩となった。
そして、ついに動き出すバズボンバー。
彼らがつくり出すコンテンツとは一体どんなものなのか・・・?
みやび屋に追い風が吹く中、ムツミの背後に忍び寄る黒い影。
その影はサツキたちにどんな試練を与えるのか・・・!?
次回、沈黙のWebライティング最終話(真)。
「今、すべてを沈黙させる・・・!!」
今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!