事業承継の重要性〜中小企業経営者は会社や事業の存続をどう考えているか〜
- 中小企業経営を取り巻く今日的課題について
今日の中小企業を取り巻く経営課題は、大別すると「売上の維持」「資金繰り」「人材・後継の育成」の3つに集約されます。その中でも中長期的に取り組むべき課題として「事業承継=後継者の育成」があげられます。
1-1 今、中小企業経営者を悩ませている課題は ?
今、中小企業経営者が抱えている悩み・課題は何か。
調査結果から、売上、人材、コスト、資金であることがわかります。
すなわち、今日明日の飯を食いつないでゆくための短いレンジの課題としては「売上 確保」と「資金繰り」「コストダウン」、将来に向けて成長し続ける長いレンジの課題として「人材育成」「事業承継」が業種に関わらず共通の課題です。
- 中小企業の今日的課題(上位項目) 単位:% n:536複数回答
~2012年日本政策金融公庫アンケート調査より~
1-2 深刻になりつつある「事業承継」
そんな中、中小企業経営に忍び寄るもう一つの大きな課題が「経営者の高齢化」です。
既に我が国では、中小企業経営者の高齢化が進んでいます。
主な原因は、「後継者難が増加していること」「平均寿命上昇や事業承継時期の遅れにより社長在任期間が長期化していること」が原因と考えられます。
経営者の高齢化の問題は、更に中小企業経営の廃業数の増加に繋がっていて、年間廃業する中小企業数 29万社のうち7万社は後継者不在のための廃業と言われています。
- 中小企業経営者の高齢化の現状 ~2008年東京商工会議所アンケート調査より~
1) 65~69歳が21.8%で最も多い
2) 65歳以上が47%を占める
後継者問題・事業承継問題は、社長が高齢といえども在任中は、オープンに話のしずらい、それがゆえに優先順位の下がる経営課題になっているのが現状です。しかしながら将来に向けて、トップの判断力の低下への不安や世代交代が進まない現実、更には突然の事態によって多くの混乱を引き起こし、得意先や顧客を巻き込んでしまうへのリスクへの対処が今こそ重要になってきています。
- 後継者をどの時点で誰にしているか
- 誰に事業を承継させるか
実際に中小企業経営者は、誰に事業を継承しているのでしょうか。従来は圧倒的に身内・親族への継承が
通常でしたが、最近はその流れが少し変わってきています。
2-1 事業の承継や後継者を決めている経営者と決めていない経営者
では、どれくらいの中小企業が将来に向けて事業の存続を希望し、事業承継に備えて後継者を決めているのでしょうか。
事業の存続を希望する経営者が7割、更にその7割の中で事業の後継者を決めているのが4割、まだ決まっていない企業が3割と、決まっていない企業がまだまだ多いことがわかります。ここに事業承継問題の難しさがあるのです。
- 後継者が決まっていない企業が3割も ~2008年東京商工会議所アンケート調査より~
1) 後継者有が37%
2) 承継意思はあるが後継者が決まっていないが29.5%
3) 継続の意思無が22.6%
2-2 誰に事業を継承させるか
次に、後継者を決めている企業の場合、誰に事業を承継させようとしているのかを見てみましょう。
後継者や候補者がある場合は、親族(息子、娘、娘婿、その他親族)の比率が多い一方、後継者・候補者がない場合は、社外人材が一番多くなっていることがわかります。
更に継承された実績の全体を時系列で見てみると、親族内承継が減少し、親族外承継が増加していることがわかります。
- 後継者選びの現状 ~2008年東京商工会議所アンケート調査より~
|
|
息子 |
娘 |
娘婿 |
その他の親族 |
役員 従業員 |
社外人材 |
その他M&A等 |
|
後継者が有る |
73.0% |
5.1% |
3.0% |
5.2% |
9.9% |
1.6% |
0.4% |
|
後継者は無し 候補者は有る |
39.9% |
10.3% |
2.2% |
9.7% |
31.2% |
3.1% |
1.6% |
|
後継者は無し 候補者も無し |
12.2% |
2.6% |
3.1% |
4.8% |
14.4% |
16.6% |
23.1% |
|
全体 |
49.6% |
2.7% |
2.7% |
6.2% |
16.7% |
5.0% |
7.2% |
1) 後継者有では息子が73%と圧倒的に多い
2) 後継者無候補有では役員・従業員が31.2%と高くなる
3) 後継者無候補者無では社外人材が16.6%と高い
4) 全体では49.6%が息子、16.7%が役員・従業員
3.事業継承にはどれくらいの時間がかかるのか
事業承継には、いくつかの段階的なステップが必要とされています。それゆえ、一定の時間と期間が求められるのです。後継者が十分に「経営力」を発揮できるように計画的に事業承継対策に取り組ませるためには、円滑なバトンタッチを実現するように早い段階からの準備が必要となります。
3-1 何を承継するのか
事業承継とは、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(正の財産、負の財産)や経営資源を後継者に継承することを意味します。承継するものは、大別すると、「ヒト」「モノ」「カネ」「目に見えにくい経営資源=ノウハウ・知的財産」です。合わせて重要なことは、企業に脈々と流れ培われた経営者の想い、価値観、信念・信条などの「経営理念」を改めて明確にして伝えてゆくことが大切になります。
- 事業承継するもの
3-2 計画的事業承継のすすめ
事業承継を進めるにあたっては、基本的には「継承の必要性の気づき」→「現状分析」→「後継者の決定」→「経営継承計画の策定」→「承継の実施と見直し」の5つのステップで行われます。
それゆえ、事業承継は一般的に5年から10年はかかると言われています。
実務的には、株式を含めた会社の価値の算定や相続を行う期間が必要となりますが、何よりも後継者を決定して、社内での種々の経験を積ませながら経営者としての資質と能力を磨いていく後継者人材育成の準備期間)をしっかりと持つべきでしょう。
それゆえ、計画的に事業承継を推進してゆくことが円滑な事業承継の要点です。
4.まとめ
事業承継は、企業経営の最も大きなチャンスでもある反面、またリスクでもあります。ゴールのない激烈な競争環境の中で、安泰を続けてゆくためには、未来への周到な準備をできるだけ早くから進めてゆくことが大切です。また、「継がせる側の論理」と「継ぐ側の論理」を一定の期間の間にしっかりと調整して、意思疎通を明快にしておくことも重要なポイントです。

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