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脈々とその血を

Yushun08

今月号の雑誌「優駿」にて、「名馬に魅せられて」という旬の種牡馬特集が組まれている。現役馬と比べて、種牡馬はどうしても上がってしまった馬たちということもあり、これまであまり興味深く読み入ることはなかった。また、サンデーサイレンス全盛期には、その他の種牡馬は泡沫扱いになってしまうため、真剣に引退後の生活をウオッチする気も起きなかった。しかし、昨年は日高の生産馬から多くのG1ホースが出たように、種牡馬においても群雄割拠の状況が生まれつつある。日本馬の血統レベルの向上に伴い、サンデーサイレンスを起点として枝分かれする種牡馬たちは底上げされ、まさに脈々とその血を広げ伝えようとしている。

今回の特集で取り上げられているのは、ゴールドシップ、キズナ、ディープインパクト、オルフェ―ヴル、スクリーンヒーロー、ブラックタイド、ヴィクトワールピサ、ロードカナロア、ダイワメジャーなど、新種牡馬から実績のある種牡馬まで、これからの日本の競馬をさらに進化させるであろう可能性を秘めた馬たちばかり。私が2016年を境にして、日本の競馬におけるシンギュラリティ(のようなもの)が起こるのではないかと書いたのは、彼らの血のポテンシャルにも理由がある。サンデーサイレンスという偉大な種牡馬を得た幸運を、大当たりの一発で終わらせるのではなく、先細りさせることなく、むしろそこから豊かに枝分かれし、葉を茂らせ、大輪を咲かせようとしているのが感じ取れるのだ。

そんな宝石のような種牡馬たちの個性や種牡馬としての仕事ぶりが、実に細かに書かれている。特に、(以前からそうであったが)社台スタリオンステーション事務局の徳武氏の各種牡馬に対するコメントは的確でそのキャラクターを分かりやすく伝えてくれている。たとえばキズナについて、

「普通、お母さんが年をとってから生まれた仔はすぐにわかるのですが、キズナにはそれがない。骨量も、栄養状態も、血統表どおりに素晴らしい。そういうところを見ていると、馬というのは授かり物なんだな、と思います」

ヴィクトワールピサに関しては、

「結果的によりサンデーっぽい馬が出ましたね。ジュエラーの差し脚を見ると、完全にぼくの見方が間違っていた。ともあれ、父寄りではなく、ネオ寄り、おじいさん寄りの馬が出て、タイトルを獲ったのは嬉しい誤算です。今後の光が見えてきました。相馬眼的には馬が良すぎるというか、理想的すぎるので、子供がお父さんより崩れるのではないかという心配があったのですが、それも考えなくてもよかった。ただ、パワータイプもたくさんいるので、そうした馬たちが勝ちあぐねている可能性もありますね」

など、実際に扱っている人の言葉から浮かび上がる種牡馬像が面白い。

そんなことを思っていると、社台スタリオンステーションなどに行きたくなってきてしまった。私が社台スタリオンステーションを最後に訪れたのは、もうかれこれ10年ぐらい前。当時、種牡馬入りしたてのマンハッタンカフェとシンボリクリスエスを間近で見せていただき、その美しさと漂うオーラに圧倒された思い出がある。目の前に立つと分かることも多い。案の定、その2頭は数多くの活躍馬をターフに送り出した。今年の夏は、歴史を塗り替える種牡馬たちに会ってみたい。すでに予定がびっしりと書き込まれた手帳を片手に、私は会えるか会えないか分からない恋人に会いたいと恋焦がれている。

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