ソニーは28日、電池事業を2017年3月末をメドに村田製作所に売却すると発表した。売却額は数百億円規模とみられる。ソニーの電池事業は減損計上や赤字が続き、業績を押し下げていた。4年前には政府系ファンドの産業革新機構が主導する事業統合の交渉に入ったこともあり、売却先は浮かんでは消えてきた。電子部品事業が好調でエネルギー分野を次の成長領域に育てる意向が強い村田に後事を託す。
ソニーは全額出資子会社のソニーエナジー・デバイス(福島県郡山市)を中核に、スマートフォン(スマホ)やパソコンに搭載するリチウムイオン電池などを製造販売している。15年度の電池事業の売上高は約1600億円。10年度以降の営業損益は14年度を除いて赤字で、13年10~12月期と15年10~12月期には、それぞれ321億円と306億円の減損を計上した。
福島県郡山市やシンガポール、中国など国内外5拠点の製造工場を村田に譲渡する。販売拠点なども含むと対象人数は8500人。ソニーブランドで販売するUSBのポータブル電源やアルカリ乾電池といった消費者向けの販売事業は対象外となる。
村田は以前からリチウムイオン電池の開発を続けてきた。同分野で経験が豊富なソニーの事業を譲り受け、エネルギー分野の強化を加速する。
ソニーは1991年に世界で初めてリチウムイオン電池を実用化し、携帯電話やパソコン向けなどに製品を展開してきた。ただサムスンSDIなど韓国勢との価格競争が激化。12年ごろから産業革新機構のもとで日産自動車やNECと事業の統合を検討。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に売却する交渉も経て、13年末には単独で事業を続ける意向を示していた。だが「米アップルの『iPhone(アイフォーン)』の最新機種の採用からは漏れている」(国内調査会社)などシェアも低下。「これ以上投資を続けるのは難しい」(ソニー)と判断した。(中藤玲)