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慰安婦支援財団 ようやくここまで来た

 慰安婦問題が日韓間のトゲとなってから四半世紀を経て、ようやくここまで来たと前向きにとらえたい。

     元慰安婦の支援に取り組む韓国の「和解・癒やし財団」がきのう発足した。日本政府は、昨年末の日韓合意に基づいて8月にも財団に10億円を拠出する方針だ。

     財団は、その資金を使って元慰安婦の心の傷を癒やすための支援事業を行う。日韓両国は今後、事務レベルの協議を通じて詳細な事業内容などを詰めていくという。

     日本は合意で「責任を痛感している」と表明したが、元慰安婦を支援する韓国の市民団体は「法的責任」を認めていないと反発している。

     27日には、ソウルの日本大使館前で1000人規模の反対集会が開かれた。財団発足の記者会見場にも反対を叫ぶ学生が乱入する騒ぎが起きた。国会では野党に反対論がある。決して穏やかではない船出だ。

     韓国の研究機関との共同世論調査を毎年行っている非営利団体・言論NPOによると、6〜7月に行った世論調査では韓国で合意を評価する人が28%で、評価しないが38%だった。評価する人が48%に上る日本とは受け止め方に大きな差がある。

     それでも韓国ギャラップ社が1月に実施した調査で「評価しない」が54%だったことに比べると、否定的な評価は減っている。調査主体が違い単純には比較できないが、急進的な反対運動の一方で世論は落ち着きつつあるのかもしれない。

     理事長となった金兌玄(キムテヒョン)・誠信女子大名誉教授は記者会見で、財団名に入った「和解」が目指すものとして「(元慰安婦の)おばあさんたちと歴史の和解であり、(財団に)反対する人たちとの和解でもある」と話した。丁寧な説明を通じて、反対する人々からも理解を得られるよう努力してほしい。

     元慰安婦の平均年齢は約90歳だ。合意の時点で存命だった46人のうち既に6人が亡くなっている。財団の事業は時間との闘いである。

     金理事長は設立準備に当たった2カ月間に37人の元慰安婦に会い、多くの人から好意的な反応を得たという。事業が早く軌道に乗り、一人でも多くの人が存命のうちに支援を受けられるよう願いたい。

     韓国政府は合意の際、在韓日本大使館前に建つ少女像の問題について「適切に解決されるよう努力する」と表明した。

     自民党内には少女像移転を10億円拠出の条件にすべきだという主張があるが、それは合意から外れる筋違いのものだ。財団の事業を進めながら、少女像移転に前向きな雰囲気を作っていくしかない。韓国側の努力を見守っていきたい。

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