【アンカラ=佐野彰洋】トルコ政府は27日、軍の一部によるクーデター未遂事件を巡り、新聞社やテレビ局などメディア約130社の閉鎖を命じた。非常事態宣言に基づく措置で、事件への関与を断定した米在住イスラム教指導者ギュレン師との関係が理由としている。資産は没収し、国庫に移す。報道関係者も次々に拘束し、言論弾圧に拍車が掛かっている。
閉鎖命令は同日の官報に掲載した。地元メディアによると、内訳は通信社3社、新聞45社、テレビ16局、ラジオ23局、出版29社、雑誌15社。子供向けの娯楽テレビチャンネルなど、政治色のない媒体も含まれている。
閉鎖を命じられた新聞社には最盛期で100万部を発行したかつての最大手紙「ザマン」も含まれた。ギュレン師との関係が深いことで知られ、同師とエルドアン大統領の関係が悪化した2013年末以降、政権批判の論調に転じていた。
今年3月には政府が事実上の管理下に置き、編集方針を親政権に一新。インターネット上で閲覧可能だった過去記事は削除され、実売部数は数千部に激減していた。
閉鎖命令に先立ち、捜査当局はザマンの元編集幹部ら計89人の拘束令状を出し、すでに一部を拘束した。その中にはギュレン師と無関係とみられる左派の著名ジャーナリストも含まれる。政権の意に沿わない報道を続けるメディアやジャーナリストに対する見せしめの可能性も指摘される。
トルコではクーデター未遂事件前から、政府が自らの意に沿わない報道を続けるメディアへ圧力を掛けることが常態化していた。エルドアン氏が名指しで特定のメディアを批判したり、法的措置に訴えたりすることも珍しくない。言論弾圧はギュレン師の支持勢力の排除を名目に一段と加速している。
最大都市イスタンブールでは27日、拘束された記者を支持する報道関係者が集まり、声を上げる場面が見られた。
政府はクーデター未遂事件後、軍人や裁判官ら約1万6千人を拘束。弾圧は中央省庁にも及び、万単位の政府機関職員や教員が解任や停職処分を受けた。企業の間でも石油化学大手の幹部が当局に拘束されるなどの動きが出ている。