07月26日 20時16分
認知症の人は記憶に障害が出たり、言葉が出にくくなったりするため、家族にすら自分の状況を伝えるのが難しい人が少なくありません。
そこで、話ができる状態の認知症の人にインタビューを行い、その思いを引き出して認知症への理解を深め、支援に生かそうという取り組みが進められています。
この取り組みを進めているのは医療関係者や研究者などで作る東京のNPO「ディペックス・ジャパン」です。
高齢者の7人に1人が認知症といわれるなか、本人や家族の思いを伝えることで介護をする人たちの参考になるのではないかと、6年前からインタビューを重ねてきました。
これまでに認知症の人10人と、その家族35人の声をインターネット上で公開しています。
NPOの佐久間りか事務局長は、その狙いについて「私たちの側に、いままでかなり偏見があって、認知症の人は話も出来ないんじゃないかとか、わけがわからない人だという思い込みがありますよね。
ウェブサイトでは、まだ話せる状態の方たちが話してくださっている。そこから、いま話せない方の気持ちもくみ取れるような気がするんです」と話しています。
インタビューはいまも続けられていて、7月、名古屋市の稲垣豊さん(67)が答えました。
稲垣さんは青果店で働いていた、7年前、若年性認知症と診断されました。
最近は服の着方が分からなくなったり、トイレの場所が分からなくなったりするようになりました。
NPOの佐久間さんが「病院で診断を受けたときはどんな気持ちでしたか」などと質問すると「ずいぶん前のことになって、どういう感覚だったか忘れちゃって、あれなんですけど、嫌で悔しかったこともあります。何かしようと思っても1人ではできないから、それが辛いことは辛い」と話しました。
また、妻の一子さんもインタビューに答え、介護をする上で、心がけていることについて「笑いに変える。お風呂から上がって拭いたと来る、でも拭いていない。わたしが拭いたら、おしりをぺたっと触る、するとおまえ触りたいのかとか言うので、笑いに変えている」と語りました。
稲垣さんが、いま楽しみにしているのは30年以上続けてきたスポーツ、インディアカです。週に1回、仲間とともに汗を流すひととき。稲垣さんに笑顔があふれます。
インディアカについて、稲垣さんはインタビューの中で「わたしと同じような年齢の人と、楽しく遊べるというのが一番良いですね。
そういう友達がいるので、それが宝物です」と話しました。
NPOは、6月、聞き取った200のエピソードをまとめた本も出版しました。
それぞれのページのページのQRコードをスマートフォンで読み取ると、インタビューを動画で見ることもできます。
NPOの佐久間さんは「ご本人が、こうやって助けてもらっています、という話をされているので、是非とも聞いて、みんなで支えていけるようになったらと思います」と話しています。
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