本文の開始
本市は、旧市民球場跡地について、各界各層から意見を聴く「旧広島市民球場跡地委員会」を設置し、検討を進めてきました。
この度、跡地委員会の最終報告等を踏まえ、旧市民球場跡地の活用方策を策定しました。
平成25年3月
広島市
旧市民球場跡地 (以下、「球場跡地」という。)を含む中央公園は、原子爆弾によって灰塵に帰した本市において、憲法第95条に根拠を持つ特別法である「広島平和記念都市建設法」(昭和24年公布、施行)に基づき整備が行われてきた地であり、復興のシンボルともいうべき場所である。そして、この地は半世紀以上にわたって都心における緑豊かな空間を提供するとともに、ヒロシマというまちの個性と魅力を発信することを通して、本市の発展にも大きな役割を果たしてきた。また、隣接する紙屋町・八丁堀地区は、広島駅周辺地区と並んで本市における都心の核としての機能を担う地域であり、その更なる充実強化が求められている。
こうしたことから、球場跡地の活用は非常に重要なテーマであり、例えば被爆100周年となる2045年を目指すなど、長期的な視点に立ちつつ、市民の理解の下にその総力を結集して、実現に取り組むことができるものにする必要がある。
球場跡地の活用方策については、長期にわたる検討の経緯があるにもかかわらず、必ずしも周知されておらず、その検討内容が市民の理解を得ているとは言い難い状況にあった。そのため、平成23年10月に設置した市民の各界各層からなる「旧広島市民球場跡地委員会」(以下、「跡地委員会」という。)において改めて検討を行っていただくこととし、「若者を中心としたにぎわいのための場」にしていくという方向性の下、1年3か月余りにわたり議論が行われた 。
この跡地委員会での議論は全て公開され、これまでに市民から寄せられたアイデアや委員から出されたアイデアを全て俎上に載せ、球場跡地の特性・特徴、適格性や効果といっ た視点に立って行われたことから、様々な論点についての認識の共有化が図られた。議論の成果は中間報告及び最終報告に集約されているが、各々の要点は次のとおりである。
球場跡地の活用方策としての主たる機能(アイデア)について、球場跡地だけではなく、広島西飛行場跡地や広島大学本部跡地など、市内の他の大規模未利用地を視野に入れた検討が行われ、球場跡地以外の場所にふさわしい機能が割り出された。その結果、残ることとなった「文化芸術機能」、「緑地広場機能」及び「スポーツ複合型機能」の3つの機能と、それらを補完する施設が抽出され、さらに検討が深められることになった。
中間報告で球場跡地にふさわしいと整理された3つの機能を中心に、図-1に示す4案6パターンの活用イメージが提示され、活用方策を判断する上で欠かすことのできない、活用イメージごとの特性や実現する場合の想定費用等が明らかにされた。
なお、庁内検討会議で取りまとめた(参考-1)に示す「中央公園の活用にあたっての方向性」や、(参考-2)に示す「中央公園及び周辺地域を含めた空間づくりのイメージ」が、活用方策を議論する際の前提とされた。
図-1 球場跡地活用イメージ: 4案6パターン
A案:「緑地広場機能」を主たる機能とする案
B案:「緑地広場機能」と「文化芸術機能」とを組み合わせた案
C案:「文化芸術機能」を主たる機能とする案
D案:「スポーツ複合型機能」を主たる機能とする案
跡地委員会において、取り上げられた主たる機能は、表-1に示す14通りであるが、最終的に活用方策にふさわしいと整理されたものは、「2-1 文化芸術機能」、「3-2 スポーツ複合型機能」及び「5 緑地広場機能」の3つと、それらを補完する施設(飲食物販施設、観光バス駐車場など)であった。
多岐にわたる議論を経て、これら3つがふさわしい機能と整理されたこと自体一定の成果であり、活用方策を判断する上での重要な材料となる。しかし、それと同時に重視すべきは、ふさわしいとされなかった機能とその理由である。なぜなら、球場跡地の活用方策としてふさわしいとされなかったという点において、以下のとおり跡地委員会の認識に概ねの一致が見られたと評価できるからである。
以上の評価には合理性があると考えられることから、球場跡地の敷地規模の制約を受ける機能、周辺の環境、とりわけ原爆ドームや平和記念公園との不調和が生じることになる機能など「1-5 飲食物販機能」を除く諸機能は、球場跡地への導入対象としないこととする。
その上で、活用方策としてふさわしいと整理された3つの機能を中心に、球場跡地に導入することが望ましい機能について検証することとする。
「2-1 文化芸術機能」については、球場跡地に隣接している文化施設の移転を視野に入れつつ、その機能を確保することが考えられる。なお、広島市文化協会(各種文化団体の連携組織。会員74団体で構成)から、跡地委員会に提出された提言書((参考-3)参照)があるが、提言内容は文化を創造・発信できるイベントなどのソフト開発先行の取組の重要性、及び生涯学習・教育機能の必要性に関するものであり、極めて示唆に富むものである。
「5 緑地広場機能」については、本来的に公園が備えるべきものであり、球場跡地が都市公園法に基づく「都市公園」である中央公園の一部であることを踏まえると、欠かせないものであるといえる。また、イベントの開催等を通じてにぎわい創出効果も期待できる。
「3-2 スポーツ複合型機能」については、市民の間に様々な意見がある中で、4月以降立ち上げることが見込まれるサッカースタジアム建設に向けた協議会での議論を経た上でなければその具体像を確定することが困難な状況にあることから、現時点では、球場跡地への導入対象から除外して考えることとする。
主たる機能 | 委員会における評価 |
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1 観光交流・アミューズメント機能 | |
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他の未利用地等でよい。
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他の未利用地等でよい。
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他の未利用地等でよい。
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他の未利用地等でよい。
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2 文化・芸術創造機能 | |
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球場跡地がよい。 |
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他の未利用地等でよい。
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他の未利用地等でよい。
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3 スポーツ機能 | |
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他の未利用地等でよい。
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球場跡地がよい又は他の未利用地等でよい。
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4 平和発信機能 | |
平和博物館、平和運動の拠点、爆心地の復元 |
他の未利用地等でよい。
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5 緑地広場機能 | |
緑豊かなオープンスペース、イベント広場、多目的スポーツ広場【スポーツチャレンジフィールド】、平和のための広場、慰霊碑・モニュメント、植物園、菜園 | 球場跡地がよい。 |
6 交通機能 | |
バスセンター | 特に意見なし |
7 その他 | |
老人福祉施設、児童福祉施設、医療施設、大学、研究機関、行政機関、テレビ局、ホテル | 特に意見なし |
先に述べたとおり、跡地委員会での議論の前提として、中央公園の活用に関する庁内検討会議を設けて、「中央公園の活用にあたっての方向性」と「中央公園及び周辺地域を含めた空間づくりのイメージ」を整理した。
まず、「中央公園の活用にあたっての方向性」に関しては、(参考-1)に示すように、球場跡地は中央公園の有する「にぎわいの空間」、「くつろぎの空間」及び「文化を醸し出す空間」という3つの空間特性が重なる場所に位置しており、こうした点を踏まえた中央公園全体の一体性やバランスの確保が不可欠であるとされた。この考えは、活用方策を検討する上で極めて重要である。
次に、「中央公園及び周辺地域を含めた空間づくりのイメージ」に関しては、「施設の再配置等」と「回遊性の向上」の2点について検討成果が取りまとめられている。中央公園内の「施設の再配置等」については、3つの空間特性に配慮しつつ、望ましいゾーニングの設定に向けた長期的な取組と短期的な取組とが提示されているが、そのうち短期的な取組として提示されている青少年センターや商工会議所等民間施設などの機能移転は、活用方策を実用性のあるものとする上で重要である。また、中央公園全体の「 回遊性の向上」についても、長期的、あるいは短期的な取組に区分した歩道の整備等が提示されているが、まずは球場跡地をにぎわいの空間にしていくという観点に立って、人々が容易に往来できるよう回遊性を確保することが肝要である。
上記3の検討結果を踏まえた現時点における球場跡地活用のイメージは、次のとおりである。
球場跡地に導入することが望ましい機能は、「文化芸術機能」と「緑地広場機能」を中心とする機能及びこれらを補完する機能とする。
球場跡地には、次の3つのエリアを設定するとともに、それぞれのエリアに応じて機能を配置することとする。
イベントもできる緑地の広場を確保し、天侯等に左右されることなく市民や来訪者が集い、憩える空間となるように屋外活動用の施設を配置する。
青少年センターの移転を念頭に、文化芸術を発信する施設を整備するとともに、その発信力の強化につながる生涯学習・教育機能や創作機能等の導入を検討する。また、飲食物販施設や観光バス駐車場などの補完機能の配置にも配慮する。
基町環境護岸との連続性を保ちつつ、市民や来訪者が憩える「水の都ひろしま」を象徴する場として整備する。また、飲食物販施設や観光バス駐車場などの補完機能の配置にも配慮する。
3つのエリアへの機能の具体的な配置については、平和記念資料館本館下から原爆死没者慰霊碑及び原爆ドームを見通したときの景観軸に配慮するとともに、エリアごとに段階的かつ着実に進めることとする。これは、同軸が本市の都市づくりにあって、特に重視すべきものとされてきた経緯を踏まえるとともに、エリアごとの特性、市民による協力体制や財源確保の状況等を考慮する必要があるためである。とりわけ、文化芸術エリアについては、緑地広場エリアにおけるイベントなどのソフト開発を先行させ、その実績を踏まえた上で、段階的に整備を行う。また、機能の配置にあたっては、球場跡地の回遊性の確保にも意を用いる必要があることから、中央公園全体の回遊性の向上をにらみつつ、同時並行的に歩道の整備等に着手することとする。
なお、球場跡地に隣接して所在する民間施設については、現状に至る経緯等を踏まえつつ、移転に関する関係者の意向の確認等を行い、その配置等について所要の対応を的確に進めることとする。
図-2 球場跡地活用のイメージ
平成25年度は、4の球場跡地活用のイメージに沿った活用方策に係る基本計画(整備スケジュールの作成、具体的な機能や規模の確定、事業費の見積、専門家による絵図面の作成など)の策定に取り組むこととする。したがって、この活用方策に係る基本計画に基づくエリアごとの基本設計等は、平成26年度以降に逐次着手することとなる 。
なお、「スポーツ複合型機能」(サッカースタジアムを含む。)については、協議会において球場跡地を適地とする具体案が取りまとめられた場合に、その時点で改めてこの活用方策に係る基本計画との比較検討を行い、導入対象とするか否かを判断することとする。
「中央公園の今後の活用に係る検討状況(中間報告)」より
中央公園の持つ様々な特性を生かしつつ、欧米の成熟した都市の類似例にみられるようなシンボル的な空間となるよう、3つの空間特性を備えたものとする。
[にぎわいの空間]
若者を中心とする多くの市民や平和記念公園を訪れる観光客を引き付ける、魅力あるにぎわいの空間とする。
[くつろぎの空間]
広島の特性である「水」と「緑」を生かしながら、都心部における花と緑にあふれたくつろぎの空間とする。
[文化を醸し出す空間]
国際平和文化都市の顔として、広島の歴史を踏まえつつ、質の高い文化・芸術・スポーツを満喫することができる、また発信する空間とする。
公園の魅力を向上させる観点から、各種公共施設の配置場所の見直しや合築、場合によっては市内の他の未利用地等への移転の可能性も含めた検討を行う。
歩くだけでも楽しくなるような歩行者動線の整備、幹線道路等による分断の解消、駐輪場の整備など、公園内の回遊性を高める環境整備を行う。
平和記念公園や周辺商業施設との連絡性強化、水上タクシー・ループバス・自転車等の活用による都心部の観光資源等のネットワーク化などに取り組む。
広域避難場所としての機能の向上を図るとともに、子どもや女性、高齢者をはじめ誰もが安心して利用できる環境とする。
中央公園及び周辺地域を含めた空間づくりは、一世代先の数十年後を見据えた長期的な取組を基本とするが、喫緊の課題等については短期的な取組として早期の具体化を検討する。
「中央公園の今後の活用に係る検討状況(中間報告)」より
【取組方針】
:短期的な取組
:長期的な取組
【施設の取扱い】
:短期的な取組
:長期的な取組
県営基町住宅は、平成29年度に機能廃止される。
市営基町住宅(中層)は、市営住宅全体のあり方を整理する中で、その機能のあり方を検討する。
ファミリープールは、区域内にこだわらず、機能移転を検討する。
中央バレーボール場は、機能廃止を検討する。
中央庭球場は、区域内にこだわらず、機能移転を検討する。移転した場合の跡地は公園区域から除外し、新たな都市機能の導入を検討する。
中央図書館、映像文化ライブラリー、こども図書館は、合築して配置場所の見直しを行う。
こども文化科学館は、区域内にこだわらず、機能移転を検討する。
青少年センターは、配置場所の見直しを行う。
商工会議所等の民間施設は、旧広島市民球場跡地委員会での議論を踏まえ、移転について検討する。
ユニタールなどの国連機関については、中央公園内を中心として、その配置を検討する。
ハノーバー庭園は、配置場所の見直しを行う。
【取組方針】
:短期的な取組
:長期的な取組
:中央公園内の回遊性の向上
中央公園へのアクセス性の向上
広島市長
松井 一實 様
広島市文化協会会長
山本 一隆
旧広島市民球場跡地利用に関する提言書
球場跡地はハード先行型からソフト先行型都市開発へ、市民の智恵と創造力を結集し「ひろしま文化創造発信ゾーン」づくり
平成24年11月28日
広島市文化協会
旧広島市民球場の跡地利用については、現在、跡地利用検討委員会で鋭意検討が進められている一方で、最近のサッカーブームから球場跡地を含めた市内の利便な場所へサッカー専用球場建設運動が盛り上がっております。これに対し、私どもは各種文化団体の連携組織である広島市文化協会(会員74団体)の立場から、球場跡地利用について提言させて頂きます。
旧広島市民球場跡地は、都心部に残された貴重な空間であるばかりでなく、平和公園や都心商業地に隣接し、市民や内外の観光客が集い回遊できる広島市の明日を創造する優れた立地条件にあります。このような場所であるだけに、市民各層の英知を結集したいものであります。
わが国における都市開発は、今までどちらかといえば施設であるハードを先行させる形が取られて来たと考えますが、今日、経済活動が停滞し財政も厳しい時代にあっては、最早ハード先行型の都市開発は時代のニーズに合わず、むしろ広島市の文化を創造し発信できるイベントなどのソフト開発を先行させ、その実績をもとに必要なハード施設を順次整備する方が無駄もなく、効率的な都市開発ができるものと考えます。
このような視点から、ソフト開発に必要最低限のハード設備を整備してスタートし、その実績を積み重ねることによって、明日の広島を拓く望ましい跡地利用の姿が描けるものと確信しております。
記
1 事業名
2 対象エリア
3 スタート時に設置が望まれる仮説及び恒久施設
4 望まれるイベントなどソフト開発
〔1〕市民や観光客が日常的に鑑賞できるもの
〔2〕毎週開催されるようなもの
〔3〕毎月開催されるようなもの
〔4〕年一度などの大規模なもの
〔5〕数年に一度などの国際的イベント
5 協力体制づくり
添付 ゾーンの概念図
以上
広島文化創造発信ゾーン概念図
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≫ 旧市民球場跡地の活用方策
都市整備局 都市機能調整部 旧市民球場跡地担当
電話:082-504-2758 /
FAX:082-504-2309
メールアドレス:toshi-k@city.hiroshima.lg.jp