まさか天下り復活の出来レースではあるまい。独立行政法人の最近の人事のことだ。

 昨年以降に任命された約20の役員ポストを見ると、公務員OB以外が登用されたのは六つにとどまり、残りはいずれも公務員OBが選ばれた。

 独立行政法人の役員は、所管省庁の閣僚が任命するトップやお目付け役の監事を中心に、公募と有識者の選考委員会での検討で選ぶのが基本だ。天下りへの批判を踏まえ、適材適所の人選をするための仕組みである。

 応募者が多かった3例で公募段階の公開情報をみると、日本年金機構副理事長ポストには26人の応募があり、うち公務員OBは1人。国際協力機構副理事長は25人の応募中、公務員が4人、住宅金融支援機構理事長が10人中1人だった。結果はいずれも公務員OBが任命され、しかも所管省庁の出身者だ。

 公開情報は限られている。任命された人物の経歴は当然としても、他には選任・任命理由の概略ぐらいだ。

 これでは適材適所の選考がなされたのかどうか、判断できない。プライバシーなど配慮すべき点はあるが、公募の締め切り時など、選考途中でもっと情報を公開するべきではないか。

 応募者の承諾を得て氏名や経歴を明示する。OBなら出身の企業や役所の名前と分野、携わってきた業務を示す。せめてそうした工夫の余地はあろう。

 新理事長が7月に任命された都市再生機構(UR)の場合、所管省庁の国土交通省の元局長で、東日本大震災後に発足した復興庁の元次官が選ばれた。

 URは大震災の被災地で住宅の集団移転や災害公営住宅の建設、沿岸部のかさ上げなどを担っている。選任理由は、復興を牽引(けんいん)してきた実績や、選考委員会の評価の高さだという。

 ただ、URは過去の大規模開発に伴う負の遺産で多額の債務を抱え、さまざまな業務改革の途上にある。3年前に政府が閣議決定した基本方針では「民間出身の役職員の活用拡大など民間のノウハウを採り入れた実施体制」が強調されており、前任の理事長はメガバンク元役員が務めていた。

 引き続き民間人トップのもとで改革を加速させる選択肢は検討されたのか。今回の人事は復興を担当する官庁から事業を実施する法人へ、形としては典型的な天下りとの批判もある。

 公務員OBにも、独法で活躍してほしい人材は少なくない。問われるのは人選の透明性と納得感だ。制度の原点に戻ってチェックすべき時ではないか。