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富士フイルムVSキヤノンの確執が再燃 東芝メディカル買収を了承した公取委にも矛先「アンフェアだ!」

産経新聞 7月21日(木)10時5分配信

 東芝の医療機器子会社「東芝メディカルシステムズ」(栃木県大田原市)の買収合戦を演じたキヤノンと富士フイルムホールディングスの確執が再燃している。独占禁止法(競争法)に違反する恐れがあると注意しながらも、キヤノンによる買収を承認した公正取引委員会の“グレー判定”に、富士フイルムが激怒しているのだ。

■公取委「黒でないがグレー」

 「今後は認めないが今回は認めるということであれば、なぜ今回は認めるのか明確に説明されることを望む」

 キヤノンによる東芝メディカル買収を公取委が認めると発表した6月30日。富士フイルムは、キヤノンと公取委へ怒りをぶちまける異例のコメントを発表した。

 独占禁止法では一定の規模で企業買収などが行われる場合、事前の届け出を求めているが、キヤノンは届け出の前に株式譲渡などの手続きを開始していた。

 第三者の特別目的会社(SPC)が3月8日に設立され、東芝は東芝メディカルの議決権をSPCに9万8600円で、新株予約権をキヤノンに6655億円で譲渡した。各国の独禁制度をクリア後、SPCは東芝メディカルに議決権を譲渡。その上で、キヤノンが予約権を行使し、100%子会社化する-というスキームだ。

 こうした手法を公取委が問題視したわけだが、SPCはキヤノンの支配下にある証拠はなく、「独立した第三者」とされている。東芝を間接的に買収したともみなせず、公取委は「前例のない事案で違法に問えない」と判断した。

 しかし、SPCの代表者には、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO)と近い住友商事の宮原賢次・名誉顧問が名を連ね、市場からは「第三者」かどうか疑わしいとの指摘もある。

 公取委の品川武企業結合課長は「黒でないがグレー。こうしたチャレンジはやめてほしい」と、キヤノンの手法を真似する企業に対しては刑事告発を行う姿勢を示した。

 わざわざ複雑なスキームをキヤノンが考案した背景には、債務超過に陥る恐れがあった東芝が3月末までに代金を必要としていたという事情があった。キヤノン幹部は「東芝を救済するにはこれしか手段がなかった」と主張するが、富士フイルムは「フェアじゃない」と怒りを隠さない。

■嫁ぎ先のキヤノンは東芝と半導体でも“蜜月”

 「娘が嫁いだ後の父親の気分。嫁ぎ先で大きく成長する、幸せになると信じており、陰ながら応援したい」

 東芝の綱川智社長は5月の会見で、キヤノンへの東芝メディカル売却について感慨深げにこう話していた。

 綱川氏は、東芝メディカルの社長を務め、医療機器事業を成長させた人物だ。心境は複雑だったに違いないが、成長の柱の1つに位置づける半導体事業の成功のカギも、キヤノンが握っている。

 東芝は、3D(3次元)記憶用半導体の製造コスト低減のため、キヤノンが開発を進める次世代の半導体露光装置技術「ナノインプリント」を量産ラインに採用することを決めた。従来技術より微細化を進めることができ、キヤノンは、オランダのASML、ニコンに後れをとる半導体露光装置事業で躍進するための起爆剤として期待している。

 キヤノンは、カメラ、複合機に次ぐ成長分野として、監視カメラにも注力。昨年には、世界トップシェアを握るスウェーデンのアクシスを買収した。

 一方、富士フイルムも再生医療分野で、米ベンチャーのセルラー・ダイナミクス・インターナショナルを買収。今年6月には、平成25年に設けた「再生医療事業推進室」の事業部への格上げを決定。この分野で30年に200億円以上の売上高を見込む。

 両社とも事業の多角化を進めており、とくに医療機器分野は高い成長を期待している。評価の高かった東芝メディカルの買収を“グレー判定”で阻止された富士フイルムについて「怒りがなかなか収まらないのも無理はない」と同情する意見も出ている。

 公取委の判断が出た後の富士フイルムのコメントには、こんな表現もあった。

 「ビジネスは決められたルールの中でフェアに行われるべきだ。この買収にフェアな姿勢で臨んだ我々にとって、アンフェアな競争であった。これが許されるなら、競争法が形骸化する」

 この言葉には公取委はもちろん、産業界全体が耳を傾けてもいいかもしれない。(宇野貴文)

最終更新:7月21日(木)10時5分

産経新聞

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