Wednesday, July 20, 2016

Solitary City

宣伝.単著論文がManchester School誌にacceptされオンラインに出ました.これで院生時代に手がけたものはすべて捌けたことになります.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/manc.12170/abstract

ちょうど4年前の今頃に,博論が論文2本だけだと寂しいのであと一つ,とスタートした研究でした.あまりにも練られておらず分析はすぐ行き詰まり,科研にも落ち続け,査読では○○ヶ月待たされ,苦い思い出でいっぱいです.この論文の報告・査読に付き合わされた方々には恐縮至極に存じています.

それでもこのプロジェクトからは多くのことを学ぶことができました.最終的に公刊することができとりあえずは安心です.


肩の荷が下りたところで,これが私の遺作とならないよう引き続きがんばります.

(大学のウェブサイトでは私のcvが雑兵レベルのままでなのでそろそろ更新したいのですがどうしたものでしょうか…)

Sunday, July 17, 2016

沖縄の経済, 準備編1: 成長経路

今年度後期から新しく「沖縄経済論」という講義を担当する予定である.あいにく私は沖縄経済の専門家ではないので,適任ではない.それでも,私より不適切な人が自分勝手な沖縄経済論をまき散らすよりはマシだろうと思い引き受けた.

大学で教えて恥ずかしくないような授業はせねばならない.かといって沖縄経済について学術論文を書く気はない(業界地図は研究論文ではない).そこで,授業の準備がてら,沖縄の経済についていろいろ調べ考えていることをこのブログにアウトプットすることにした.

以下何かとデータが出てくるが,所詮は講義用なので,すべて"eye-ball econometrics"である.きっちりした分析をする予定はないのであしからず.



少し前にとあるインタビューを受けて,沖縄経済についてざっくばらんに話をする機会があった.このとき,沖縄が貧しい理由を聞かれ,「戦争と占領だろう.人的・物的資本が破壊された.」という趣旨の回答をした.基地の存在そのものとは言えない,という文脈で,である.
今回のエントリはこの回答がどれほどもっともらしいかについてである.

沖縄の一人当たり実質県民所得をプロットすると次の通りである.
なお,沖縄のデータについては異なる基準の系列は接続せず別個にプロットしてある(講義の都合上).村上・藤澤と書かれた系列は,同僚の紀要論文から取ってきたデータである.詳しいデータ処理は後述の補論にて説明する.
一人当たり所得,沖縄 vs. 全国.
全国平均との格差が年々開いていることが見て取れる.沖縄はバブル崩壊以後ゼロ成長で停滞している.

同じデータを常用対数表示したものが次のグラフである.対数目盛なので,傾きが成長率に対応している.
一人当たり所得(対数),沖縄 vs. 全国.

全国と沖縄の成長率はおおむねシンクロしている(傾きが等しい)ことが目視で確認できる.石油危機・バブル崩壊という2つの転換点を境に,成長率が落ちている.

戦後沖縄が全国と同じ経済成長率で成長してきたのは興味深い.沖縄は全国と比べて特別有利でも不利でもないのである.


成長率が等しいので,(絶対水準で見た)格差は初期値の違いに帰せられる.冒頭で沖縄が貧しい理由が「戦争と占領」と述べたのはまさにこれである.沖縄は全国よりも低い位置から遅れてスタートしただけで,成長する環境自体は全国と変わらない,というわけだ.
既存の沖縄経済研究では,基地や産業構造や島嶼の特性などにフォーカスが当たることが多かったが,そうした要因をまったく無視しても沖縄の貧しさは簡単に説明できてしまうのである.
沖縄だけが特別な艱難辛苦にあえぎ続けている,という類いの理屈では観察される成長経路を説明しづらいのではないだろうか.
かたや地上戦によるおびただしい損害,および米軍統治で高度成長期がすっぽり抜け落ちた(しかも本土は1ドル360円だったけど沖縄はドルだった)ことが今も尾を引いている,という説明はまんざら私の勝手な妄想ではないと思うのだが.
  • ここでの「格差」は所得の差(=y_{全国} - y_{沖縄})についての議論である.
  • 格差を所得の比(=y_{沖縄}/y_{全国})で見た場合,当然格差は縮まりも広がりもしない.復帰後も現在もおよそ全国の7割程度である.

ただし,初期値が違うだけ,という説明で十分とは私も思っていない.共通因子の影響力が強く(unconditional beta) convergenceが沖縄で起こっているように見えない理由を特定する必要があるからだ.
要するにこういうことだ: 後発の地域がフロンティアに追いつくのは簡単だ.技術や知識は模倣できるし,資本の限界生産性は逓減するからである.それにもかかわらず沖縄は後発のアドバンテージを活かせていないのである.

そこで,本来問うべきは,なぜ沖縄は全国にキャッチアップできていないのか,なぜ沖縄は先端的な技術や知識を学習し身につけることに苦慮しているのか,なぜ沖縄は貯蓄して資本蓄積につなげられないのか,であろうと思う.

  • これに対する答えとして私が今漠然と持っている仮説は,イノベーションを担うべき高技能人材が内地に流出してしまうから,また,貧しい初期状態のせいで貯蓄・資本蓄積が進まないトラップに陥っているから,というものだ.
    • 後者の場合big pushが有効だが,前者の場合必ずしもそうではない.
    • 後者については,金融仲介機能の弱さが悪さをしている予感がしている.
  • 前者は,低技能労働集約的な産業(観光や建設)が発展しそこに偏向した技術進歩が進んでいるせいで高技能労働者が活躍する場が乏しいから,と考えている.
  • 初期条件はそれでも大事である.Mark Ravallionのpoverty convergence論文のように,初期に貧困が深刻だと成長が遅れるし成長してもなかなか貧困を減らせない,という可能性がある.

全国と呼応した成長経路になっていることは,取りも直さず沖縄は孤立した存在ではなく,日本経済とすっかり経済統合されていることを示唆しているようにも思う.閉鎖経済思考には限界があるだろう.共通因子の役割が大きくなる理論的根拠を考えるのは,一筋縄ではいかない.

既存の沖縄研究では,米軍基地の存在が何かと大きい.ところが,基地が存在するせいで経済成長率が潜在的な水準より低くなっている,という論証はまともになされていないようである.産業連関分析を用いて,基地の経済効果が何億円,という具合のoutdatedな話に始終している.
しかしながら「経済効果」はあくまでstaticな効果であり,そもそも経済成長率に与える影響を分析する枠組みではない.私がざっと見た限り,米軍基地が沖縄の発展を阻害しているかどうか,を説得的に示した先行研究はなかった.(基地問題に関心がないし巻き込まれたくないので自分ではやりたくない.基地の有無自体は外生的変動がなさすぎて,分析困難に思われる.)

なお,戦前の時点でも沖縄の所得は低いので,戦争と占領がなかったとしてもやはり格差はあっただろう.格差のより根源的な原因を突き止めるにはもっと昔にさかのぼらねばならない.(薩摩のせい,のようにあれもこれも他所のせいにするのは健全ではない気もするが…)

用いたデータについての補論:
  • 県民所得は県内総支出のデフレーターで実質化した.
  • 村上・藤澤のペーパーには県外からの純要素所得のデータがなかったので,「県内所得」に相当するものとして県内総生産-固定資本減耗-(間接税-補助金),と計算した.
  • 全国のデータのデフレーターは平成12年度基準の固定基準年方式に合わせた.異なる基準のデフレーターは,重複する部分の平均が等しくなるようにリンク係数を計算し,接続した.
  • 沖縄のデフレーターは75-80年が欠損値となっている.この区間は消費者物価指数(総合)と同じインフレ率と仮定して補完した.また,74-75年にかけてのインフレ率は全国と等しいと仮定して補完した.
  • 出典: 内閣府「県民経済計算」「国民経済計算」.総務省「人口推計」「消費者物価指数」.村上敬進・藤澤宜広(2009)「沖縄県における県民経済計算の長期時系列データ」沖縄大学法経学部紀要12.

さて,授業準備はここまでにして,本業に戻ります(汗)

Tuesday, July 5, 2016

REW2016告知


さて,毎年恒例になりつつある沖縄ワークショップが7月9日に開催されます.遅くなりましたが一応告知.報告者以外の参加も歓迎しています.めんそーれ!
(非研究者が来てもあまり得られるものはありません.念のため.)
(直前ですがプログラムに近々変更があるかもしれません.)

こぢんまりとした前日祭も予定されていますので,前日入りされる方は私に一頃お声かけいただければ幸いです(できれば早めに).

沖縄は梅雨明けしてすっかり夏です.台風1号のためか週末の天気は悪そうですが,日焼け止めなど暑さ対策もお忘れなく.



国際経済学I, 第10回, 2016

五月病というか,ブログを書く時間とモチベーションを失っていたのでかなり久しぶりの更新.中間試験前にいったんまとめをするつもりでしたが間に合いませんでした,申し訳ありません.

中間試験の結果は以下の通りです.
  • 受験者93人,平均71.5, 中央値70, 標準偏差18.9. 
  • 得点分布は少しいびつです:

  • 受験したうち28人が60点未満でした.難易度は例年とさほど変わりませんが,3割程度の学生が不可になりそうな状況というのはワースト記録です.期末試験での奮闘を期待します.

期末は8月5日に予定しております.そろそろ他の科目と合わせて試験勉強を始めてはいかがでしょうか.

解答の返却・解説は行いません.気になる方は直接お尋ねください.

Tuesday, May 10, 2016

国際経済学I, 第2-3回, 2016

講義内容
  • グローバル化の進展
    • 陰謀論は疑ってかかるべし.
  • 琉球王国と貿易
    • 外交を交えた公的貿易だったことが今との大きな違い.
    • 貿易は単にモノ・カネを運ぶだけでなく,情報も運んでいく.
  • 数学の準備
    • 一次方程式$y=ax+b$は絵的には直線になるようなxとyの関係.
  • 入門ミクロ
    • 以後考えるモデルでは,登場人物はみなプライス・テイカーと仮定する.

コメントより
  • 「沖縄は各自治体で県産品を作っていると思うが,どうして輸出が少ないのか疑問に思った.もっと沖縄ブランドを発信すべき」
    • 県産品に対する需要が少ない,移輸出するコストが高い,という2点が主なハードルになっているのではないでしょうか.特産品はライバルが多く市場が小さいですから.
  • 「琉球王国時代の経済の中心はどこだったか」
    • 那覇港とその周辺には当時交易で栄えた形跡がありますよ.阿麻和利のいた勝連も,貿易で発展したと聞いたことがあります.
  • 「海外の貿易=発展のための材料だと考える.貿易がなければ琉球は発展できなかったし,日本も海外との貿易がなければ今より豊かではないと思った」「貿易の大切さがわかった」
    • (市場の歪みがあるので)必ず発展するとは限りませんが,発展の足がかりになるでしょうね. 
  • 「現在でも波及効果があるんじゃないか」
    • そうですね.それどころか先端的な産業ほど情報が伝わりやすくそのメリットも大きいかもしれません.
  • 「中国の影響はやっぱりでかい」
    • 首里城なんかはまるで和式じゃないですしね.
  • 「貿易はお金やものの取引の事という固定観念があった」
    • 取引の副産物も大事ですね.
  • 「命がけで商売をしていた昔の人たちってすごい!!!」
    • そうですね.でも現代であっても命がけの覚悟でやらないと!
  • 「沖縄の産業は観光がメインで移出入はとても多くなっていると思ったが,移出が移入を大きく下回っている上減っているというのが正直ショックだった」
    • データで補足されていない観光収入は少なくないような気もしますが,
  • 「沖縄の地の利を活かして貿易がもう一度盛んになればいいな」
    • 地の利(market potential)が他の地域よりも高いかどうかはあまり確信が持てないところではあります.
  • 「別の講義で倭寇が貿易に関わっていると聴いており,結びついた」
    • 中世の海は面白い話がいっぱいありますねぇ.
  • 「日本経済だけでなく世界のことにも興味があるので,少しでも自分で考えられるようにしたい」
    • 興味に従って本をたくさん読みましょう.
  • 「リーマンショック以後輸入額が輸出額を上回っているのは円高の影響か」
    • 為替レートも大切ですが原油の動向の方が大きい気がします.
  • 「意外と興味がわいた」「いろいろ知りたいと思えるような授業だった」「勉強になった」「わかりやすかった」「ありがとうございました」
    • こちらこそ.
  • 「クーラーをつけてほしい」
    • 指摘ありがとうございます.前にいると気づかないので助かります.
  • 「すみません寝ちゃいましたm(_ _)m次から気をつけます」
    • 今の若者が古典的な顔文字を使っていることに驚きました. 
    • 理解できなくて寝てしまう,でないことを祈ります.
  • 「グローバル化は教育でも進んでいて,経済や教育にも影響を及ぼしていると感じた」
    • この講義では狭い意味で用いますが,グローバル化という現象はとても複雑で多面的なものですね.我々はそのまっただ中に生きています.
  • 「自分は台湾人なので初めて聞いた.面白かったと思う」
    • せっかくですから沖縄の歴史や文化も学んでいってください.
  • 「ミクロを取ってないのでとてもがんばらないとなって思った」「数学を復習しようと思った」「わかりやすかったがこれからレベルが上がっていくと思うので遅れないようにがんばる」
    • この講義では難しいミクロ・数学の知識は必要ありませんが,講義の範囲を超えた内容も各自勉強しておくべきだと思います.
  • 「沖縄関連のクイズを出します!北谷町アラハ公園は巨大な船の遊具があるということで有名です.その船は何の船でしょうか?」 
    • それは間違いなくうわなにをするqあwせdrftgyふじこ…これぞせんさーしっぷ,なんつって.
  • 「正解はイギリスの船でしたー.ではなぜイギリス?」
    • 全然わかりませんが,よもやあなたの指導教員が関係してません?
  • 「一次方程式を覚えていてよかった」「経済学で使うので基礎を押さえておきたい」
    • 忘れないようにしましょう.
  • 「試験でグラフの問題を出すなら何問?」 
    • 中間試験ではたくさん出る気がします.
  • 「台風が来ると野菜の値段が上がるとよく聞くが,そのシステムが市場システムだということを改めて理解した」
    • 私は逆に,台風のとき思ったより価格は動かないなという印象を持っていますが,台風に限らず農産物や海洋資源の価格は気候に大きく左右されるようですね.
  • 「自分で価格を決められる人はなんていうのか」 
    • プライス・メイカーと呼ばれることもありますが,他の表現(「価格支配力を持つ企業」など)のほうをよく目にします. 
  • 「嫌われてると言っていましたが,私は先生の授業のやり方は好きですよ.わかりやすくて楽しい」 
    • ありがとうございます.みなさんの愛がほしくて仕事しているわけでもないので多少は仕方ないと思っています. 
  • 「意味はわかるが国経でも必要か?」
    • 必要ないことをやるほど講義計画に余裕はありませんよ.
  • 「英語だけでもイメージで何かを理解できた」 
    • 経済学用語には堅苦しい訳語が多く,最初は取っつきにくいと思います.英語の方がストレートでわかりやすいこともありますね.
  • 「二次方程式などグラフなど出てきて難しいと思った」 
    • 二次方程式は出てませんね. 
  • 「グラフが書けなかった」「難しく大変だった」「覚えていなくて勉強不足を実感した」 
    • かなりの学生が自力で書けなかったように見えました.勉強不足だと感じたらすぐ勉強しましょう.


Thursday, April 21, 2016

国際経済学I, 第1回, 2016

今年度もよろしくお願いします.

このblogでは講義のフォローなどを行っています.オープンにしても恥ずかしくない内容を教えるという意味もあります.(blogに書いていない講義もありますがそちらで恥ずかしい内容をやっているというわけではありません.)

講義内容
  • 講義の概要
    • グラフの読解や一次方程式の理解といった簡単な数学の知識は使う.
  • 大卒プレミアム
    • 大学生活の中で何かを掴もう.
    • 能力を高めるメリットは大きくなっている.という一方,分業や特化を通じて,誰にでも社会に建設的に貢献できることを国際経済学は教えてくれる(予定).
本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中に取り上げることもあります.ご了承ください.教員の話を鵜呑みにせず批判的に聞くことは大切だと思います.どんどん疑問を持ちましょう.

コメントより
  • 「自動運転ができるようになればいいと思っていたが失業するかもしれないなどと考えたことは今までできなかった.様々な角度から見られるようにしたい」 
    • 時事ネタを見聞きするときも,その背景や含意を豊かに想像できるようになりたいものですね.
  • 「いずれ人間が働かなくなる時代がくるのかもしれないと思った」
    • 今でもろくに働かないおっさんはたくさんいますが…
    • いわゆる「シンギュラリティ」はいつか来るかもしれませんね.
  • 「日本のホテルでロボットが導入されたのを見て変化を感じた.グローバル化は,夏休みにアジアの方々とバイトして低賃金長時間労働を見ていた.」
    • 雇い主が法律に引っかかっていないことを祈ります.
  • 「自分の価値を高めて供給の少ない貴重な人材になり,高い需要に応えられるようになれたらいい」「使える人材になりたい」「これからもたくさん勉強したい」「たくさん本を読んだり資格を取ったりしたい」「特別何かしたいというわけでもなく迷っているがとりあえず行動して卒業したい」「自分は能力があるわけじゃないのでせめて大学に通ったことで大きく成長できたらいいなと思った」「英語など自分の武器がほしい」「絶対卒業したい」
    • 需要と供給の考え方が身についている方もいるようでなによりです.
    • おのおののペースで焦らずこつこつとがんばってください.
  • 「肩書きに頼らず,それに見合った能力を身につけないといけないと思った」
    • 肩書き以上の能力を身につけましょう. 弊学卒という肩書きの価値をもっと高められるようにしてください.
  • 「大卒でもデメリットが大きければ今やめたほうがいいんだなとちょっと悩んだ」 「改めて考えさせられた」
    • 熟慮した上で,後々後悔しない選択をしてください.
  • 「社会に出るのが遅れているという不安があった.だが今日の話を聞いて自信が付いた.がんばった甲斐があったと思う」
    • 就活でこけないように気を抜かずがんばってください.
  • 「高卒の友人からおごってもらったりして正直就職すれば良かったかなと思うが,今日の話を聞いて大学をがんばって卒業して自分の能力も高めたいと思った」
    • 無事卒業・就職できたら恩返しをしましょう.
  • 「一回しかインターンシップに参加してないのでもっといろいろ挑戦したい」 
    • インターンに参加した経験から何が自分に足りないのかがわかっていれば,それを埋められるようにしてはいかがでしょうか.
  • 「ミクロは取ってないが来年取る」
    • 授業を取らなくても教科書を買えばいつでも勉強できますよ.
  • 「国際経済学に強くなりたい」
    • その意気や良し,です.教科書を読みましょう.
  • 「他国の経済活動に興味があって,それを学んで自分に取り込んでいきたいと考えている」
    • あまり海外ビジネスの事例を紹介することはありません.図書館で「ジェトロセンサー」「ハーバードビジネスレビュー」などを探して読んでみるといいかもしれません.
  • 「わかりやすくて興味ある」「丁寧」「楽しい」
    • 次回以降はあまり楽しい内容ではありません.
  • 「テストの形式は?」
    • 例年は記号の選択,作図,短めの論述,などを出しています.計算問題はほぼありません.
  • 「出席点は感想を書いて出せばいいの?」
    • そうです.感想や質問などを自由に書いていただければと.
    • 講義中に受講者のみなさんの意見や質問を聞く機会は少ないので,出席カードと本ブログを通じてコミュニケーションを図りたいと思います.
  • 「留学生なので文法に間違いがあるかもしれない.申し訳ない」
    • この講義では言語能力は不問です.文法ミスで減点することはありません.ミスを恐れないでください.
    • 話を聴き取りきれない場合,参考書を読むなどして補うようにしてください.質問も歓迎です.
  • 「本学も今年からコンピュータで休講案内を出すようになったのはグローバル化の影響」
    • 休講通知はもっと前からウェブで確認できましたしグローバル化の議論は直接関係ないですね.
  • 「もう何回目の受講かわかりませんけど今度こそがんばります」
    • 早く卒業してください.

社会経済統計学I, 1-2, 2016

新年度何かと慌ただしいですが,とりあえず更新.


今期から新しくこの講義を担当することになりました.私は統計の専門家ではありませんが,一定以上のスキルは持っているかと思いますのでご安心ください.前任者が何をやっていたかわかりませんが,私なりに大切だと思うことを教えます.

この講義はデータを使った議論について行けるようなリテラシーを身につけることが主眼です.また,統計学を使って経済問題に取り組む際に注意すべきポイントを学んでいきます.ちまたで流行のデータサイエンティストを養成するわけではありませんし,この講義を履修してもただちに就職に有利になるわけではありません.プログラムをどっさり書くような人でなくても有用な知見を伝授したいと思います.
高校までに学ぶ数学もふんだんに使いますので,履修する際は注意してください.講義では壺からボールを取り出したりします.MS Excelもある程度使う覚悟をしていてください.簡単ではありませんがこつこつ勉強しましょう.

講義では,記述統計,推測統計 ,といった統計学・エコノメのベーシックをざっくり学びます.単に数学的事実を確認するだけでなく,できるだけ経済学での応用例も紹介していきたいと思います.
ただし,講義でカバーできる範囲はそれほど多くありませんので,自分で別途教科書を読み進めることを強く勧めます.単位を取るためというより,自分の知性を磨くためにです.
ただし,学生に合ったレベルで面白くて信頼できるテキストはなかなかないので,背伸びして挑む必要があるかもしれません.

個人的には初めてパワポを使った講義をします.グラフはうまく板書できないし,板書だとペースが遅くなりがちだからです.しばらくこのスタイルを試します.

社会経済統計学IIは今年度不開講です.次年度開講するかどうかも未定です.さしあたり半期で完結する内容で講義計画を構想しています.(もし通年開講するなら,前期は理論中心,後期はExcelなどでの実践を中心にしたいと思います.)

現時点では,重回帰を卒論などで実戦投入できるようにすることを到達目標に据えています.ところがいざ教えるとなってようやく気づきましたが,OLSを理解するには高度な前提知識が必要です.急ぎ足ながらこうした知識を一つずつ乗り越えていく予定です.15回の講義でここまで行けるかあまり自信はありません.
もちろん単にExcelで近似線を引いたり,p値を見て最もらしいことを言ったりするだけならそれほど難しくはありません.しかしそうした表層的な理解は無意味どころかかえって有害にも思います.富士山の山頂にヘリコプターで行くよりも,8合目までで引き返したとしても自力で一歩ずつ登ろうとする経験の方が人生の糧になるのではないでしょうか.

教えることこそたくさんありますが,定義,定理,証明,を繰り返すような講義だと全滅するかと思いますので,適宜有名な論文を紹介して脱線したいと思います.さじ加減は実際講義を進めながら調整していきます.

講義内容
  • 概要
    • 数学を当たり前のように使うので注意.
    • ここ数十年で統計スキルへの需要は大きく変わっている.今のうちに学んでおくべき.
    • 成績はレポートの出来次第.
  • 統計学の仕事
    • スープの味見,に相当することを丁寧に考えていく.
  • missing women
    • 簡単な数字を用意するだけでも,説得力と含蓄がある議論ができる.
  • 数学の基本
    • 集合はベン図でイメージしよう.
    • Σはたし算.

本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中に取り上げることもあります.ご了承ください.教員の話を鵜呑みにせず批判的に聞くことは大切だと思います.どんどん疑問を持ちましょう.

コメントより
  • 「統計学は経済だけだと思っていたがいろいろな科目に使われていて驚き」
    • 使った者勝ちみたいなところもあります.
  • 「村上先生の統計学取っといてよかったーーーーーーー」
    • せやな.
  • 「とても難しいと思うが将来使えることだと思うので一生懸命ついて行けるよう努力したい」「数学は得意ではないがチャレンジしてみようと思う」
    • やる気に応えられるように私もがんばります.
  • 「データを使ったレポートや議論ができるようになりたい」「大切さがわかった」
    • 一生使える強みにできればいいですね.
  • 「久しぶりに数学やって楽しかった.丁寧に教えてくれてありがとう」
    • 楽しんで勉強していただければ私も嬉しいです.
  • 「とても数学が苦手なのでとても不安であるがついていきたい」
    • 現時点では7番目の講義資料までアップロードしています.軽く眺めてみて履修するかどうか決断されてはいかがでしょうか.講義内容の性格上,数学は避けて通れません.
    • どうにも乗り越えられない壁がある場合,図書館でなるべく簡単な数学の本を探して通読してみてください.
  • 「黒板ちょっと見づらい」「暗くて字が見えにくかった」
    • やはり.板書時は電気をつけるようにします.