はじめに
谷岡一郎『「社会調査」のウソ』のメモです。
「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
- 作者: 谷岡一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/06
- メディア: 新書
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感想
世に蔓延るダメな社会調査を、ばっさばっさと切り伏せる著者の語り口は見ものでした。著者と一緒に読者も頭を使いながら社会調査の実例を批判的に検討していくことになるので、知的エンターテイメントとしても楽しめましたよ。
本書で触れられるリサーチ・リテラシーは、数字・データを扱う人間にとって役立つのではないでしょうか。天下り的にあるデータだけを与えられたとしましょう。そのデータは人間のバイアスを通して得られた可能性があります。たとえ調査を行わなくとも、データ解析に携わる方々がデータに存在しうるバイアスを把握しておくのは、正しい分析に有用です。
以下引用。
筆者は、政治的に政党を支持する気もないし、特定市民運動に水をかける気もない。筆者自身は右翼も左翼も好きになれないが、だからといって、あえて攻撃する気もない。ただゴミのような調査を攻撃しているのであって、悪い調査はどこが行おうと学問上の真理追求の妨げになると考えているだけである。(p.39)
上のような学問的に公正なスタンスを尊重するのは重要ですね。
次に読む本として以下の2冊を入手。
『統計はこうしてウソをつく』は本書と似ていて「統計」にひそむ誤りを紹介するって感じでしょうか。
- 作者: ジョエルベスト,Joel Best,林大
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 2002/11
- メディア: 単行本
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『人文・社会科学の統計学』は本書の内容をより詳しく書かれています。社会調査だけでなく、経済分析や心理測定について数学的な議論が紹介されています。アンケートの統計処理は読んでおきたいです。
- 作者: 東京大学教養学部統計学教室
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1994/07
- メディア: 単行本
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メモ
本書の論点 p.9(一部略)
- 世の中のいわるゆ「社会調査」は過半数がゴミである。
- 始末が悪いことに、ゴミは(引用されたり参考にされたりして)新たなゴミを生み、さらに増殖を続ける。
- ゴミが作られる理由はいろいろあり、調査のすべてのプロセスにわたる。
- ゴミを作らないための正しい方法論を学ぶ。
- ゴミを見分ける方法(リサーチ・リテラシー/research literacy)を学ぶ。
論文の格付け基準案
以下は著者の提案する論文格付け基準(p.p114-115、箇条書き部分はブログに最適化するために変更)
- 論文は査読を受けているか/発行部数、範囲
- 検証プロセスは追試可能か(データは公開されているか)
- 引用は正しくなされているか
- サンプリング(抽出)方法
- 有効回答率
- 総数
- 母集団
- 数量化、分析
- 理論と仮説の公正
★ (申請により)矛盾した結果の複数論文の判定を行う。
★ 「評論家」などの肩書きを以下の基準で格付けする。
- その者の書いた論文の質と内容
- その者の書いたその他の記事、文章など
上に挙げた基準は、自分の研究を批判的に見るのに役立ちそう。
おわりに
谷岡さんの語り口が自分にはハマったので、他の本も読んでみたいです。