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sammbardaikuのブログ

石川県七尾市の大工です。白井といいます。永遠の37歳(本当は福山雅治と同い歳❤)の7人家族。リフォームなど、御用が有りましたら気楽にお電話下さい。090 2839 2110ですm(__)m。

夏といえば「息子が行方不明になった事件」(´д`|||)。

今回も、私の家族のお話です。

いつも以上に、読んで頂くには忍びない内容です~(´Д`)。
どうか、いつも読んでいただいている皆様も、「読まずに」そっと無視してやって下さ~いщ(゜▽゜щ)❤





(これは何年か後の、次男に読ませたくて書きました。

残念ながらまだ彼は…文章を読み込む力がないのです。

だけどあと、何年かしたら読めるかな…と、少し期待を込めて…。)





  「次男が消えた夏」


  

私の次男は、おぼこくて…

「失礼ですけど…もしかして、少し発達障害かもしれませんね…」

って、小さい頃から保育所の先生に言われてきた子でした。


まぁ… 実は「親のひいき目」に見ても…今現在でも十分におぼこい男です。


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一人で遊んでばかりなので…友達も当然一人か二人?

忘れ物も多くて、運動も苦手…。




あらっ…? な~んだか私の子供の頃そっくり~って、щ(゜▽゜щ)ギャハハ~ですね~❤(子供の頃、ソフトボールでファール打ってサードに走ったアホは私です。)



まぁ…そんな彼が、小学2年生の夏休みの出来事です。



あの日は、長い夏休みが もうすぐ終わろうとしていたお盆過ぎの…

やや暑い日の、昼下がりでした。



彼は突然、私の耳元で言いました。


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「父ちゃん!オレ、ポテチ食べたい!」



その日、体調を崩してた私は、縁側でお昼寝をしてたのですが

ボケた頭で、寝言の返事をしました。



「んんっ…?ぽ、ポテチ? おやつの棚に無いか?」

「無いよ!父ちゃん!」

「そっか…そんなら今度、町に出たときに買ってくるからな。それまで我慢しな。」

「今、食べたい!」


「…んな事言ったって…」

「オレ、自分のおこづかいで買ってくる!いいやろ?」


私は眠すぎて目も開けずに応えてましたけど、やはり睡魔に勝てずに

適当な返事をしてました…


「いいよ…分かった!あとでお金やるから買って来い…」


嬉しそうに走っていく 次男の足音が遠くなっていくのが分かりました。

そして… 私はまた深い眠りに入ったのでした…。





「ボーン…ボーン…ボーン…」


1時間半くらい経ったでしょうか…



私は柱時計の音と、なにやら脇をドタドタと歩く音で ようやく目を覚ましました。

(ふぅ…よく寝たな…。)



頭を上げると、妻が何やら「親猫が子猫を探すように」ウロウロしているのが、目に入りました。


「どうしたん?何か探しとるん?」

「ちゃまん(仮名)が居ないのよ。何処にいったのかしら?」



「……?  ああ~そっか……オレにポテチ買いに行ってくるって、言ってたなぁ…」

「ポテチ?どこに?」


「知らん…。野崎にポテチ売ってるお店って無いよな?」

「無いわよ。」


「んなら、友達の家にでもおやつをねだりに行ったんかな?」

「友達って…誰よ?」

「あっ… 」



二人の間にしばしの沈黙がありました。

「分かった!」と、私は手を叩きました。


「松島海水浴場の売店に売っとるやん!

あいつは松島に行ったんやな!」


「父ちゃん…もう、その売店閉まっとるし…シーズンオフやから…」


「……。 まぁ、とにかく松島海水浴場まで行ってくる!多分そこに遊んどるんやろ。」

私が自転車に乗って松島に向かうと、長男も走って付いてきました。


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「父ちゃ~ん、どこ行くのん?」

「松島海水浴場…。ちゃまんを探しにな。」

「へぇ…? んならオレも行く。」


小さい集落とはいえ、「海」に向かう道はそれなりの距離があります。私は自転車なのにヘトヘトになりました。



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「ちゃま~ん!!」



私達は海水浴場いっぱいに響く声で彼を呼び掛けました… が、ちゃまんの返事はありません。


長男と、松島海水浴場のオートキャンプ場を

手分けして色々探してみましたが…

シーズンオフの淋しく静かなキャンプ場に

ちゃまんの姿はどこにも見えませんでした。


もちろん、売店には「営業終了」の張り紙があり、キャンプの受付窓口も閉まってます。



「父ちゃん…ちゃまん、おらんな。」

「ああ… 参ったな…」

私が焦りだしたのは、いよいよ…この時からでした。


「くうちゃ(仮名)…、悪いけどお前はちゃまんの同級生の家を見てきてくれんか?」

「うん、分かった。」



私達は二手に別れました。

私は、もしかして「漁港」辺りにいるかも…と、自転車を走らせました。


直ぐに長男の同級生と出会いました。

「なぁ…悪い、ちゃまん見なかった?」

「見てないよ。おっちゃん、どうしたん?」

「家から居なくなったんよ。」

「んなら、オレも探してやる!」


そう言ってくれた彼は、後ろから走ってきたくうちゃと一緒に、素早く集落の中に走っていきました。


100軒ほどの小さい集落とは言え、一人の子供を探す「かくれんぼ」にはあまりにも広すぎます。


漁港の海沿いを走りながら…

私の中で「何か違う…」という胸騒ぎがしてきました。  が…、突然に




「あ…! そっか… サークルKか~!! 」


と、謎解きの「正解」が、天から降ってきた気がしました。




直ぐに自転車の向きを変え、家に引き返しました。親父の軽自動車を借りるために。


「父ちゃん、悪いけど車借りるぞ!」

私の父は、既に子供探しの事を聞いてたらしく


「お、おう… 多分そんな遠くに行っとらんと思うけどな…」

という返事でした。


「有田さん(仮名)の家にも、おらんかったよ!」

妻もいよいよ範囲を広げて探してたようで、かなり不安な顔をしていました。



「向田のサークルKに行ったと思う!探してくる!」

「あっ、なるほど…」

妻の表情が少し和らいだように見えました。


それは能登島で唯一の、「コンビニ」。

いつも皆で出掛けるときは、そこでジュースやお菓子を買う「お決まりのコンビニ」!



ったく小学2年生の考える事やな~


自動車で10分近くかかるお店まで歩いて買いに行こうと思ったんやな~


ったく、なん~つ~うアホや!!

(後で思いっきり叱ってやらないかんな…)


集落を出たら、コンビニまでは民家は一軒もありません。景色は山と田んぼだけ。しかもおそらく距離が6キロメートル位はあります。


7才の子供が「ポテチ」を買うために歩く距離ではありません。 


(途中で歩き疲れて泣いてるんやろな~。)


まぁ、しょうがないなぁ~ ちゃまんを拾ったらサークルK まで行ってくるか~




そんな事を思いながら車を走らせること約5分…。

「あれ… 」


既に3キロメートルは走っていました…。

自転車なら、降りて押して歩くような急勾配の農道を登りきった所で…

私はいよいよ自分の判断を疑いました。


「待てよ…もう一つの道かな?」

私はまた今来た道を下って、もう一本の道を目指しました。 ただ、その道は彼のような子供でなくても通りたくない「暗いトンネル」が途中にある道。


私の親父達が若い頃に工事に参加して掘ったという、本当に大昔に作ったトンネルは昼間でもジメジメで暗くて…夜中なら兵隊さんのオバケが出てくるという伝説のトンネル…。

(車でも、夜中にくぐる時は鳥肌が立ちます。)



一応そのトンネルもくぐり抜け… しばらく走ってみましたが… やはり、その道にも ちゃまんの姿は見えませんでした。

「参ったな…さすがにちゃまんでも、6キロメートルも歩こうなんて、考える訳無いかぁ…」




結局、何の収穫も無いまま家に戻りました。

車の中を覗きこむ妻の表情が、ふっと暗くなるのが分かりました。



「居なかった…」「うん…」


また自転車に乗り替えて、集落内を探します。



かつてこの集落には、「子供が海に落ちて死んでしまった」事故があって…



こんな時は、本当にそんな事ばかり脳裏をかすめます。


そんな訳で自然と海の方へと足は向かってしまいますが…

「あっ、父ちゃん!」



友達と2人で、汗だくで探していた長男の姿がありました。


お互いの情報を交換しあいましたが…

途方にくれるしかない雰囲気になるだけでした。



「参ったな…」


3人でうなだれてると、ワンボックスカーが窓を開けながら近付いてきて、止まりました。



「あれっ?白井さん、ちゃまんを向田のサークルK 近くの交差点で見たけど…なんで?」


私達3人が一斉に駆け寄りました。

「え!え!?サークルK !?」



「う、うん… なんでこんな所を一人で歩いてるんかなぁ~って、不思議…」

「サンキュー!サンキュー!助かったよ!!」
 

私達3人は「ありがと!」「やった!」を連呼しながらそれぞれの肩を叩き、ワンボックスで「幸せのお知らせ」を運んできたノブちゃん(仮名)もなんか知らんけどつられて喜んでくれてました。


私達親子は関わってくれた2人に礼を言って別れ、家に戻りました。



もう、大丈夫! ちゃまんの居場所は確認出来たも同然。

後は私達に心配かけた「おバカちゃん」を回収に向かうだけ~щ(゜▽゜щ)❤



はぁ~ 。


また、軽自動車に乗って「サークルK」に向かいます。長男が当たり前のように助手席に乗ってきました。


長男と次男は、歳が2つしか離れてないので暇さえあればケンカばかりしてるような間柄。

(なんだかんだと、弟が心配なんやな?)


私はなんだか可笑しくなって笑いそうになりました。

「早く!父ちゃん行くよ!」

「はいはい…」

自動車を走らせると「本当にあいつアホやなぁ!」「ぶん殴らんと分からん!」とか、いつものくうちゃ君(9歳)になりました。


自動車なら、6キロメートルくらいはあっという間です。「心配かけやがって!」「本当にバカチンや!」と、悪口を言っている間に着いてしまいます。



サークルKまで、残り数百メートルになり、私達の車はゆっくりと走りました。 ちゃまんを発見したら直ぐに停車出来るように。


しかし、発見された「例の交差点」まで、子猫1匹発見出来ずに、すんなりと来てしまいした…。 


まだ、彼の姿は発見出来てません。

「あれ?」 「居ないなぁ…」



私達はてっきり、買い物を終えた彼の帰り道と鉢合わせになるタイミングになるだろうなぁ…と、思ってました。


その交差点を曲がり、サークルKまでの真っ直ぐな200メートルくらいの道にも、やはり彼の姿はありません。



とりあえず車をサークルKの駐車場に停車させ、店内へ…


「あの、すみません… 少し前にちょっとポッチャリした小学生2年の男の子が、ポテチを買いに来たと思うのですが…」


「ええ、もう5分くらい前かしら…そんな子が一人で来ましたよ。」

(良かった!目撃されていた!)


もっとも、自動車で来ることが殆どのお店ですから、子供が一人での来客は珍しかったに違いありません。


「ありがとうございます! 良かった! で、その子はどっちの方向へ帰りましたか?」


「えっと…多分あっちだったと…すみません、そこまでは…」

店員の彼女が指差した方向は、私達が今走ってきた方向でした。

「ありがとうございました!」


私達二人はそう言って店を後にして、とりあえず車を走らせました。


考えられるのはもう一本の道です。しかし、その道は例のトンネルをくぐるコース。

果たして彼が選ぶとは思えませんでしたが…


とりあえず車を走らせました。


子供の5分間で歩ける距離って何メートルや?


どうやっても1キロメートルは歩けんよな…


自動車は、とっくに2キロメートルを走ってしまってました。

「なんで居ないんだ? 5分くらい前にコンビニを出たんやぞ…」

(いかん…冷静になれ…!!)


私は車を停め、携帯電話で家に電話しました。

「もしもし、オレだけど… 5分くらい前にコンビニを出たらしいんだけど、どこの道にもおらん! サッパリ分からん!」


電話の向こうの妻は「そう…どこに行ったんやろね…」と、言うのが精一杯でした。


「とにかく、探しながら戻ってみる。あいつアホやから隠れとったんかもしれんし!」


もう一度発見現場の交差点に戻り、ゆっくりと家までの道路を車で走りました。私は右側、長男は左側をじっくり探しながら…。



いつの間にか喋らなくなってた長男が、実は泣いているのが分かりました。

何台かの自動車が、低速で道の端を走る私達の車を迷惑そうに追い越していきました。



私達は何もしゃべらずに、道の脇の雑草の茂みの中さえも見逃すまいと、ハンターのように探しながら走りました。


しかし、無情にも何も見つけられないまま景色だけが流れ、いつの間にか道のりの半分まで来てしまってました。


「まずいな… なんなんだこれは?」


彼は間違いなく「サークルK」で、ポテチを買った。そして店を出て歩いて帰った…


なのに、帰り道の彼の姿が無い。



(神隠しか…? ああ~っくそっ! 最初にサークルKに向かった時に余計な事を考えないで、最後まで走れば良かったんや~!)


理解不能の現実に、高まる後悔。そして高まる不安…。




すっかり戦意喪失になってしまった私は、道のあるままに自分の家までの帰ってきてしまったのでした。


ほとんど無表情で車を家まで走らせてきた私に、縁側でデカイ体をジャンプさせながら「おいでおいで」している妻の姿が、目に入りました。



「はぁ…?」

車を降りると、妻の声が聞こえました。


「ちゃまんが帰ってきたわよ!」


「?」

まさか…?



玄関に靴を脱ぐのももどかしく、茶の間まで走るように飛び込んでいきましたら…


茶の間のくたびれたソファーに、もっとくたびれた顔の「ちゃまん」が座ってました。



ところが私があまりにも激しい勢いで駆け寄ってきたものだから、彼はショックで泣き出してしまいました。


小さな白いコンビニ袋をにぎりしめながら…。


「この子、隣の集落のおばちゃんにわざわざ乗せてきてもらったんやて…」

妻が横にきて言いました。


「なんで、あんな遠いお店まで行ったんや?危ないやろ?」と、いう私の問いかけに彼はしゃくりあげながら

「ちゃんと、父ちゃんに言うたもん…」

と、力なく答えました。


「うっ…だってお前… 」

(確かに…そうだ… 。私は聞いていた…。)




「見てよこの足。ひどい靴づれ…」

ソファーで体育座りの彼の足に、(6キロメートル歩きました)と、いう証拠がちゃんとありました。


「ハハ… そうやな…。
まぁ、無事に帰ってきて良かった…。
そっか… ちゃんと父ちゃんに、話してたよな…。」



事の発端は私にあった…。

ちゃんと話を聞いてなかった私…。


「どこのおばちゃんに乗せてきてもらったって?」


「全然知らないおばちゃんやったみたい…」

それはそれで、問題でしけど…親切な方に乗せて貰えたのは、有り難い話でした。 




「ちゃまん… で、何を買ってきたんや?」

泣きながら広げたコンビニの白い袋の中に、小さいサイズのポテトチップスと、8の字のパッケージのマーブルチョコレートが1つずつ入ってました。


「これ、くうちゃと、つぁん(仮名)にあげる!」

つぁん(仮名)は、3歳の弟の事です。



「何言ってんだ…お前が苦労して買ってきたんだろ?」

「いい!あげる!」

私の目の前に突き出したコンビニの袋を、長男がサッと持っていきました。


「んじゃ、頂き~❤」


「お、お前… 」

いつものくうちゃがそこに居ました。


いつの間にか家の外に、ちゃまんを探してくれてた友達が来てて、さっそくポテチを開けて「ほら、食べよっ!」なんて言ってる
くうちゃなのでした。



何も知らない「つぁん(3歳)」がチョコレートを握りしめ


ちゃまんの所に「あんと!(ありがとうの事)」と言いに来ました。




うつむいていた体育座りの「ちゃまん」が、少し顔を上げ、照れ臭そうに笑っていました。





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         おしまい。