iPhoneを特別視しているのはもはや日本人だけ。IT業界で進むコモディティ化の波
米国のITビジネスが大きな転換点を迎えようとしている。米アップルの決算は2四半期連続の大幅減収となったが、市場予想を上回ったことから、時間外取引における株価はむしろ上昇した。
一方、ヤフーからネット事業を買収すると発表したベライゾンの株価はニュースにほとんど反応しなかった。ITは完全にコモディティ・ビジネスという位置付けになっているのかもしれない。
アップルの2016年6月期の決算は、売上高が前年同期比14.6%減の423億5800万ドル(4兆4000億円)、純利益が26.9%減の77億9600万ドル(8100億円)だった。2四半期連続の大幅な減収減益であり、これまでの快進撃と比較するとボロボロの決算といってよい。
日本を除くすべての地域で大幅な減収となっており、特に中国市場は33%ものマイナスとなった。主力の北米市場も11%減である。iPhoneが持つプレミア感は、日本以外の地域では完全に剥落した状況となっており、アップルは普通のスマホ・メーカーになりつつある。同社を特別視しているのは、もはや日本人だけのようである。
もっとも市場はこうした事態をすでに織り込んでおり、今期も大幅な減収減益と予想する声が多かった。市場予想よりも実際の決算が良好だったことから、時間外取引では、むしろ株価が上昇している。
一方、経営不振が続くヤフーのネット事業は、最終的にはベライゾンに48億3000万ドル(約5000億円)で売却されることが決まった。ヤフーはこれによって、ヤフージャパンやアリババなどを保有するだけの投資会社になり、社名も変更される予定である。
ベライゾンの株価は買収の発表でも大きく動かず、翌日に大幅減収(前年同期比でマイナス83%)の決算を発表すると株価は2%も下落した。市場はヤフーの売却について事実上無視したと考えてよいだろう。ベライゾンの決断については「中年の危機」と皮肉る声も出る始末だ。
一連の株価の動きを見ると、市場はもはやITを特別視していないことが分かる。ITビジネスのコモディティ化は以前から指摘されてきただが、これが名実共にはっきりしてきたということだろう。
IT業界が以前のような盛り上がりを見せるためには、人工知能など新しいテクノロジーが普及し、次のパラダイム・シフトが明確になる必要がある。
関連記事
-
-
ギリシャ議会選挙で急進左派圧勝。市場の受け止め方は冷静
ギリシャの議会選挙で、財政緊縮策の見直しを掲げる最大野党「急進左派連合」が圧勝 …
-
-
グーグルが着々と進める家電のネットワーク化と人工知能化
ネット検索最大手の米グーグルが、家電の人工知能化を急ピッチで進めている。同社が …
-
-
米国防総省がサイバー攻撃能力を強化。だが実態は既存システムの防御で手一杯
米国防総省は、コンピュータ・システムを使った軍事活動を行う「サイバー司令部」を …
-
-
英中銀の外人助っ人総裁が、FRBに続き失業率ターゲット導入を表明
英国の中央銀行であるイングランド銀行が、大胆な金融政策を打ち出して話題となって …
-
-
ギリシャが一転、EUが提示した緊縮策を丸飲み。ドイツがそれでも支援に否定的な理由
債務危機となっているギリシャ支援を話し合うユーロ圏財務相会合が2015年7月1 …
-
-
GEが家電部門を売却交渉。金融部門の分離に続いて、インフラ事業への集中が加速
スウェーデンに本社を置く、欧州の家電大手エレクトロラックスは2014年8月14 …
-
-
アップルがサムスンに見切り?売国奴と呼ばれることを憂慮した強気の交渉がアダに
アップルのサムスン離れが加速している。米アップルと米インテルが、次世代のiPa …
-
-
銀行の貸出が増加中。ただしこの傾向は昨年からで、アベノミクスの効果なのかは不明
全国銀行協会は4月9日、3月末の全国銀行預金・貸出金速報を発表した。全国の銀行 …
-
-
エアバスとBAEの合併交渉が破談。背後にはドイツの強硬な反対が
エアバスの親会社EADSと英防衛大手BAEシステムズの合併が破談した。交渉の期 …
-
-
まるでヤクザ映画?政府が財界に「決意を示せ」と設備投資増強を要請
経団連の榊原定征会長は2015年11月26日、政府が開催した官民対話で、設備投 …