サッカーを知らない、試合を見てない、戦術を理解出来ないフロントが招くクラブの危機
今週の頭に、まるで示し合わせたかのようにJリーグで監督人事に関する大きな話題が3つ重なりました。
まず1つは、現在年間総合順位で17位と降格圏に沈む名古屋グランパスの小倉監督に対して、久米社長が絶対に代えないという宣言を行ったこと、そしてFC東京が城福監督を解任、翌日にはジェフ千葉が関塚監督を解任したというニュースです。
以前に、Twitterでこういう発言をした事があったのですが、まさに上記3クラブはこのパターンにきっちり当てはまる例ではないかと思っています。
と言うか、戦力に見合った結果が出てないクラブのほぼ100%が、フロントがサッカーを知らない、試合を見てない、戦術を理解出来ないという問題に帰結していると思っている。
— こばやしりょーじ (@gazfootballcom) 2016年7月13日
小倉監督の場合は、トヨタでマーケティングのプロとして活躍してきた中林専務が、「選手としてプロの世界で輝いた人物を本格的にクラブの要職で育てていこう」というブランディングの一環として抜擢したらしいですが、これなんか典型的な「サッカーを見ずに人物だけを見た」結果だと言えますね。しかも下手にトヨタ本体と握ってしまった話なので、久米社長も完全に身動きが取れなくなってますなあ・・・お気の毒に(苦笑)。
それに比べると、東京と千葉の場合は少なくともある程度実績を残した監督を選んだので名古屋とはレベルが違う話ですが、これも同じように「サッカーを見ずに実績だけを見た」わけであり、ぶっちゃけフロントのサッカー音痴度合いは似たようなものだという気がしています。実際、名古屋は小倉監督の前は西野氏という実績では申し分ない人を選んでいたわけですしね。
では何故、ACLを始めとして国内タイトルを総なめにした西野氏や、ロンドン五輪ベスト4&J1で2位の関塚氏、アジアU-17選手権優勝&ナビスコカップ優勝の城福氏のように実績を上げた監督が、最近は結果を残せていないのか。それは、Jリーグを取り巻く環境、特に戦術的な部分で大きな変化が起こっているからだと思っています。
数年前までのJリーグは、乱暴に言えば戦術はある意味「付け足し」に過ぎませんでした。選手のほとんどはユース時代に戦術的な訓練を受けておらず、ブラジル式に個人技だけを重視して育てられてきたため、ベルデニックや松田氏、三浦俊也氏のようなゾーン・ディフェンスを駆使する監督が就任しても、守備の約束事を守らせるだけで汲々として、本来であれば攻守一体の戦術であるはずのゾーン・ディフェンスが選手を萎縮させる原因のように見られてしまいました。
当然、選手からそんな監督を起用したフロントに対して不満が上がったことは想像に難くありません。特にJリーグでスターと見られている選手ほど、戦術に縛られずに自由なプレイが出来ることを望んだため、J1上位のチームは選手起用と采配が上手くて戦術は最小限という監督が好まれ、J1下位やJ2には守備戦術で選手の能力を補う監督が集まる図式になってしまいました。そうなると、どちらのタイプに”実績”が集まるかは自明ですよね。
普通の会社経営の場合、経営者にとって有能な中間管理職とはまず人徳があって部下を気持よく働かせられる人物であって、軍隊のようにハードな練習と厳格な戦術を選手に押し付ける監督は、サッカーという観点を抜きにすれば単なるパワハラ上司ですからね。好成績を挙げた尹晶煥氏やフィッカデンティ監督がクラブから追われたのも、そういう面を問題視された可能性があります。もしモウリーニョみたいなのが自分の上司だったらと思うとゾッとしますよ(笑)。でも、サッカーで結果を出すにはそれが必要だと理解できるかどうかが、「フロントがサッカーを知っている」ポイントなのだと思います。
実際に、今年のユーロを見ても分かる通りに戦力が高くても戦術が曖昧なチームは高いレベルで結果が出せなくなり、アジアの中でも戦術意識が高いチームが増えています。そしてJリーグでも、ゾーン・ディフェンスだけでなくヨーロッパの戦術トレンドを理解する若手監督が台頭しつつあり、ユース世代に戦術的な訓練を受けて育った選手も増えています。既に、J1の上位には”ゆるふわ戦術”チームは見当たらず、ある程度クラブのポリシーや戦術に一貫した姿勢を持つチームが集まっています。
これからの時代、ちゃんとサッカーを知っているフロントがいるクラブと、過去の実績と人物でしか監督を評価できないフロントを持つクラブとの差は、今後ますます広がっていくんじゃないかと思いますね。
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