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悪の秘密結社のアフター5

悪の組織でリーマンしながら悪の秘密結社パーフェクションで幹部として活動もするおっさんのブログです。

悪の道へ~正義は儚い~

悪の道
「先輩。今日の打ち合わせはひどい目に遭いましたね。」

ああ、今回の業務提携は白紙だな。
わざわざバル○ン星からお越し頂いたのに…。

「けどあんなに怒るとは思いませんでしたね。バル○ン星のヤマダニコフさん。」

いや、でもボスが悪いよ。
自己紹介されたのにずっとバル○ンって呼んでたもんな。

「ですね。お前ら地球人、地球人て呼ばれたら腹立たんのかい!一緒くたにすんなや!って言ってましたね。」

まぁ親から貰った名前があるんだ。
私だって外人に、おい!日本!日本!呼ばれたらムッとするさ。

「え?ヤマダニコフさんファーストネームなんですか?」

いや、しらんけど。

「しかし、怒って巨大化したときはビックリしましたね。光の巨人が出てこなかった アジトどころか町もめちゃくちゃでしたよ!」

おお。あの光の巨人、3分でボコって帰っていったな。めちゃくちゃ強いな。

「なんにせよ。ボスのせいで今までの苦労が台無しですね。」

名前は大事だからな…。

・・・

私がまだ少年の頃、わが家はおもちゃの少ない家だった。

貧乏なのか教育方針なのかはわからないがとにかく買ってもらった記憶は少ない。

そんなあるとき、近所のお兄さんが私たち兄弟に理由は覚えていないがおもちゃを譲ってくれた。

光の巨人の兄弟たちを。

そう、ウルト○マンだ。

私たち兄弟はとても喜んだ。
再放送ではあったものの、エー○、○ロウをテレビにかじりついて見ていた。

あの、憧れのヒーロー。
悪い怪獣をわずかな時間で颯爽と倒し、去ってゆく。

何よりも私のお気に入りは
ウルト○マンタ○ウだ。

末っ子特有の、あの存在感。

長男である私には決してなることができない故の憧れ。

しかし、同時に弟もタロ○に魅せられていた。

起こるべくして起こる衝突。

奪い合い、罵り合い、掴み合う。

お互いを怪獣に見立て、正義と平和を掴み取る為、あらんばかりの拳を浴びせ合う。

私たち兄弟は、忘れていたのだ。
正義と平和を掴み取る戦いはいつも別の正義によって止められる。
その結果はいつでも私たち兄弟にとって正義でも平和でもないことを。


介入が入った。

そう。親父だ。

まるでアメリカのように介入してきた親父からのゲンコツを受け、その後に起こる悪夢を思い浮かべ、私たち兄弟は涙した。

まず、親父は、私たち兄弟に停戦協定を結ぶように打診してきた。

これだから仕事のできない親父は困る。

問題の根本的な原因が取り除かれていないのに停戦協定は結べない。
よしんば結んだとしてもそれはどちらかともなく破られ、戦火は再び巻き起こるだろう。

私たち兄弟は、停戦協定の無意味さを訴えた。
そして和平には条件が必要なことを仕事のできない親父に教えてやる。


すると、ウ○トラ兄弟一人ずつの親権を均等に配分するという、親父が裁判官なら必ず罷免したくなる大岡裁きを提示してきた。

私たち兄弟は、今まで一緒に暮らしてきた兄弟を親の都合で離れ離れにすることにまるで躊躇しない親父に憎しみの眼差しを向けながらも、これといった代案も出せず、しぶしぶ了承をする。

そして最初の一人に両者ともにタ○ウを指名する。
選ばれなかった兄弟たちの気持ちに思いを馳せたが頭を振って考えから追い払う。

今は目の前の出来事に集中するんだ。

仕事のできない親父はこうなることを予想していなかったのか、しばらく逡巡した後、ジャンケンを私たち兄弟に命令。



私は3回勝負を持ちかけ、弟もそれに応じる。
最初はグーを宣言し、勝負を挑んだ。







結果、タロ○は弟の手に落ちた。




全ての兄弟の親権が決まった後、私は不服申し立てをするが、その行為が仇となった。


己の仕事のできなさを棚に上げ、不服申し立てに腹を立てた親父は再び、マッキーを手に取った。

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再びヒーローは蹂躙されることになる。

私たち兄弟を虜にしたあのタ○ウ。

抵抗する術も無く、無残な姿に変えられていく。


仮に私の弟の名前がタカシだったとしよう。


ウルトラ○ンタ○ウの背中には

マジックではっきりと

タカシと書かれていた。




弟は泣いていた。


次々と蹂躙されていくウルト○兄弟。

私は為す術なく、見ていることしかできなかった。




全てが終わった後、不思議なことが起こった。


あれだけ魅せられていたはずのウル○ラ○ンタロ○。

あの存在感を持ったヒーローに対して何も気持ちが湧かない。

ウル○ラ○ンタカシなのかタロ○なのか名前の書かれたややこしい彼を見て何も感じなくなってしまった。


正義は儚い。


ほんの少し、変わっただけでその価値は地に落ちてしまう。
どれだけ正義を成そうとも、ほんの些細なきっかけで手のひらを返すように見向きもされなくなる。



そして私は気づいてしまった。


最初にタカシと書かれるタ○ウを見て、自分のものにならなくて良かったと思ってしまった自分の浅ましさに。

私には正義はないんじゃないかと。

私には正義はふさわしくないんじゃないかと。

私はさらに深く考えた。

喧嘩を止めることは正義だ。
正しい行いだ。

ならばこの結果もまた正義なのか?

誰一人笑顔のないこの結果は正義なのか?

恐らく、正義なのだろう。

それならば私には無理だ。

これが、この結果が正義なら。

私は正義になれないだろう。


自らの信じる正義を成した親父が憎い。
正義の行いで兄弟を引き裂いた親父が許せない。

私はいつか必ずこの親父を倒す。
それが例え、正義ではなくても。


こうして私は幼いながらにも悪の道へと歩みを進めていくのでした。

つづくかも。







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