岩井 先生、18歳年下のトルコ人元夫との13年間の結婚生活を綴った『破婚』のご出版、おめでとうございます。同じく18歳年下の韓国人ダメ夫を持つ身として、まるで自分のことのように拝読し、とりわけ元夫の名言、「あなたはトルコのシステムを知らない」には頷くところがありました。恐縮ですが、どうしても最初に及川先生に教えていただきたいことがあります。実は私、これまでの人生で一度だけトルコ人男性とセックスしたことがあるんです。その時彼が、「俺はイスラム教の敬虔な信者だから、おまえとは前の穴ではしない。後ろの穴でする」と言ったんですね。理由を問うと、「前の穴は妊娠出産で使うから、妻としかしない。おまえは俺の子どもを産まないから、後ろの穴だ」と。そういうイスラムの教え、ありますか?
及川 そんな教えは、明らかにありません。
岩井 トルコのシステムでもない?
及川 ない。
岩井 ……アイツの趣味かぁ! まんまと騙されたわっ。私事で失礼しましたが改めて、『破婚』、一気読みいたしました。人気作詞家である先生が、元夫のために3億円を失い、7000万円の借金を背負った壮絶な日々の実録ですが、読み進めるほどに、どんどんラストが気になる怒濤の展開で、ミステリー小説のような醍醐味もありました。
及川 ありがとうございます。
岩井 お二人は出会いからして手違いで。
及川 旅行代理店の手違いで変更させられたホテルの隣の絨毯屋で彼が働いていたんです。それで声を掛けられて。
岩井 手違いがなければ出会いもせず、こんな事態にもならなかったわけですが、そもそも、書こうと思ったきっかけは? やはり怒りですか?
及川 いえ、怒りは静まっています。それより、社会的制裁と過去との決別ですね。彼は、日本だったら逮捕されるような行為で、私だけでなく、一緒に仕事をしていたスタッフや会計士、友だちをも騙し、傷つけました。そんな人がのうのうと生きていていいはずがありません。とはいえ、正義感からではなく、私は結婚生活を送るうちに彼の〈お母さん〉になってしまったので、保護者として同じことをさせないために、書いたんです。全て終わったことなんだと彼に知らしめ、互いにけじめをつけたかった。
岩井 私も完全にお母さんですね。私の一目ぼれでソウルのカラオケスナックの店員と結婚したんですが、トルコ人元夫のような野心も事業欲もないダウナー系ダメ男のくせに、独身で金持ちだと若い韓国人女を騙して浮気したんですよ。ショックはショックだったんですが、いざ戻ってきたら、嫁と喧嘩した息子が帰ってきたみたいになっちゃって……。「マザコン男に育ててしまってごめんね。けど、私が面倒みてあげるから大丈夫。若い女に行ってもいいけど、また絶対に捨てられるわよ」と、離婚もしませんでした。手放した及川先生はむしろ優しいわ。
及川 いやいや、離婚は浮気相手との子どもが欲しかった彼が言い出したことですから。けど、そうでなければ今でも続いていて、もっとむしり取られていたかもしれない。被害金額は増えてますね(笑)。
母親としての社会的制裁とけじめ
記事提供社からのご案内(外部サイト)
Book Bang(ブックバン)新潮社 |
新聞・出版社の書評まとめ読み!読書家のための本の総合情報サイト |
読み込み中…