追加緩和してもしなくても終着点は円高、黒田サプライズは困難
- 追加緩和予想は全体8割、2013年4月以降で最高潮
- 期待形成を維持する手段取らない限り、100円割れリスクも-シティ
金融政策でサプライズを演出して、市場を円安・株高に揺らしてきた日本銀行の黒田東彦総裁。エコノミストらの追加緩和期待が最高潮に達している今週の日銀金融政策決定会合では、これまでのような手腕を期待するのは難しそうだ。
ブルームバーグ調査によると、今回の日銀会合で追加緩和に踏み切るとの予想は全体の78%を占めている。市場関係者を驚かせた日銀の量的・質的金融緩和が導入された2013年4月以降で最も高い期待値だ。ドル・円の1週間物インプライド・ボラティリティ(IV)は22日時点で1995年以来の水準に上昇。同期間のヒストリカル・ボラティリティ(HV)との差はリーマンショックがあった2008年以来の水準に拡大している。
7月の参議院選挙で圧倒的勝利を収めた安倍晋三政権が、色あせたアベノミクスの再起動として、一段の景気対策を日銀と打ち出すと見込む市場関係者は多い。財政出動の規模が当初の見込みから拡大するとの観測や、日銀の緩和を催促するムードが支配的だ。
シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは、「期待値がすでに上がってしまっている中で、期待形成を維持させるような手段を取らない限り、追加緩和をしてもしなくても最終的にドル・円は下がる」と分析する。
シティグループ証は、今回会合での追加緩和の可能性を55%と予想。緩和の手段としては付利を現在のマイナス0.1%からマイナス0.3%に引き下げ、指数連動型上場投資信託(ETF)購入の増額を見込んでいる。
高島氏は、今回の会合で仮に緩和を見送った場合は、黒田総裁の会見内容が鍵になるとみる。9月会合での緩和を示唆すれば108円までのドル高・円安進行もあり得ると指摘する一方で、「従来の楽観シナリオを継続してタカ派の見解を示した場合は、100円を割り込むリスクが出てくる」と話す。
日銀が緩和に踏み切った場合は、「いったん108円程度までドル高・円安が進むかもしれないが、結局、材料出尽くし感から9月の次回会合までに102、103円まで下がる可能性がある」と予想。今回の会合で政策を据え置いて9月の緩和を明言する方がマーケットとしては期待形成が保てると読む。