「ポケモンGO」のリリースと同時に、「ますます歩きスマホが増えるのか……」と憂鬱な声が噴出しています。
声を上げているのは、車いすユーザーの方たちです。
人より目線が低いため、混雑時にはそれだけでも歩きにくい。電動車いすは、100kgを超す重さです。轢いてしまわないように注意しながら歩行しているようですが、相手が上の空だと、どうしようもありません。
何かにつまずくとか、電信柱に当たるのは、歩きスマホ人間には想定内かもしれません。でも車いすに轢かれるのは想定外ではないでしょうか。
少女マンガには昔から、障がいを持つキャラがたびたび登場しています。
『アイスエイジ』では、紛争地帯でテロに遭い、下肢障がいを負った比呂志
『伯爵令嬢』では、盲目のリシャール
『五色の舟』は、障がいを売り物にしてたくましく生きる見世物小屋の家族
『恋文日和』には、彼からの手紙を待つ盲目の少女。
『おなじくらい愛』の主人公は少しだけ足が不自由です。
社会で認められることがないため、女が女であることを肯定できるようになるまでには長い月日が必要でした。こうした社会への不自由な気持ちと、体に障がいを持つことへのコンプレックスには親和性があったのでしょう。
なので、これまでの障がい者は、まさしく精神的な「障がい」を具現化したかたちで表現されることが多かったように感じます。
それを、事実を客観的にまとめ、物語として見せているのが『パーフェクトワールド』です。
高校生の頃に好きだった男子に再会してみたら、車いすユーザーになっていた……という話です。 「彼が車いすだからって、別に大丈夫!」と自分に言い聞かせる主人公に、彼は次々とその大変さを見せつけていきます。
「でも俺 たまにウンコとかもらすことあるよ?」
「排泄障害って言って 自然に便が流れ出ちゃうんだ。どんなに気を遣ってもどうしようもない」
車いすに乗っているからといって、単純に「歩けない」だけではないことを、たいていの人は知りません。
先日、熊本で下肢障がいの女子たちに取材をしていたら、
「グラグラっとするから、あ、また地震? と思うと、自分が貧乏揺すりしてるだけだったりね」
「ああ、あるある!!」
頸椎を損傷して、足が思うように動かなくなっても、勝手に足が動いたり、貧乏揺すりをすることがあるんだとか。
「車いすに乗っているのに、貧乏揺すりのせいで筋肉は衰えなくて太いままだし『動いてるじゃん』って思われることもあって面倒」
と言っていました。
4月に「障害者差別解消法」が施行され、街のバリアフリー化は進み、今後ますます車いすユーザーの方の活動の場が広がることでしょう。その時に戸惑ったり、マナー違反をしないよう、知識を深めておきたいものです。
『パーフェクトワールド』は、障がいを負った男性と真摯に向き合う中で起きることを、淡々と伝えていきます。 「恋って何だろう?」「つき合うって何だろう?」「結婚って??」と、生きる上でのさまざまなことを考えさせられる作品です。
ちなみに、障がいと真摯に向き合った作品と言えば、『リアル』ですよね。
ここでは、リハビリの様子がけっこうなページを割いてましたが、『パーフェクトワールド』ではわりとサラッとしてます。
この2作品、フィジカルにこだわる男性と、メンタルにこだわる女性の視点の違いを感じられるところもおもしろいです。
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