禁錮刑以上の受刑者に選挙権を認めない公職選挙法の規定は憲法違反だとして、大阪市西成区の元受刑者の男性(69)が、国に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、大阪高裁(小島浩裁判長)は27日、「受刑者の選挙権を一律に制限するやむを得ない事由はなく違憲だ」との判断を示した。
男性側の代理人弁護士によると、受刑者の選挙権の制限に対する違憲判断は初めて。
違憲確認の訴えは「既に懲役刑の執行を終えており不適法」として一審・大阪地裁と同様に却下。「国が規定を廃止しなかったことが違法とはいえない」などとして賠償請求も棄却した。
判決は「選挙違反の罪を犯した場合以外、選挙権を制限するにはやむを得ない事由が必要」と指摘。「受刑者が直ちに順法精神に欠け、公正な選挙権の行使が期待できないとはいえず、受刑者の資格や適性を根拠として選挙権を制限すべきではない」とした。
「一般的に刑事施設法は、受刑者が選挙公報や政見放送などで情報収集することを制限していない。外部の情報取得に一定の制約を受けていることを選挙権制限の根拠にはできない」とした。
一方で、男性が投票できなかった2010年7月の参院選までに「受刑者の投票権の制限に関する問題が独立して国会で議論され、世論が活発になっていたとは認められない」と指摘。「国会が正当な理由なく長期にわたり規定の廃止を怠ったとは評価できない」とした。
判決によると、男性は道交法違反罪などで10年3~11月、滋賀刑務所で服役。同年7月の参院選で投票できなかった。
在外邦人の選挙権を制限する公選法の違憲性が争われた訴訟で、最高裁は05年9月、「選挙の公正を害した者は別として、国民の選挙権やその行使を制限することは原則として許されない」と判示。成年後見人が付くと選挙権を失うとした規定を巡る訴訟では、東京地裁が今年3月、規定を違憲で無効とする判決を言い渡した。