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常に“速い”製品を提供し続けるツールで戦う選手が選ぶヘルメット 「ジロ」の妥協なき製品とサポート体制

2016/07/26 12:00更新

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 最高峰の戦いには、一流の「道具」がふさわしい。創業30年を迎えたバイクアクセサリーブランド「GIRO」(ジロ)の製品は、今年も世界最大のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」を戦うトップレーサーの走りを支えた。選手らの細部にわたるこだわり、そし絶大な信頼感に、ジロは徹底したサポートでこたえる。1秒を争う競技で培われた、妥協なき物作り。そうして生まれる新たな製品がまた、自転車の常識を塗り替えていく。
◇         ◇
 ジロはツール・ド・フランス2016でBMC レーシングチーム、チーム カチューシャ、イアム サイクリングをサポート。Cyclist編集部はツール開催中、所属する主な選手らを直撃し、製品への評価などを聞いた。

ヘルメットのフィッティング、アジャストをレース前に受けるフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) Photo: Shusaku MATSUOヘルメットのフィッティング、アジャストをレース前に受けるフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) Photo: Shusaku MATSUO

供給チーム向け特別サービスを実施

ジロでスポーツマーケティングマネージャーを務めるジーン・ポールさん Photo: Shusaku MATSUOジロでスポーツマーケティングマネージャーを務めるジーン・ポールさん Photo: Shusaku MATSUO

 「今までの被ったヘルメットの中でもベストだね」

 第5ステージで逃げ切り優勝を果たし、初のマイヨジョーヌを獲得したフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)はそう答えてにやりと笑った。頭にはイエローにペイントされた「SYNTHE」(シンセ)が輝く。
 
 「とても軽いし、エアロ効果が高い。ツール・ド・フランス期間中はずっと被ったままパリまで行きたいと思っているよ」と語り、悠々とサイン台へと向かった。

「軽いし、エアロでバランスがいい。パリまで被りたいね」と使用感を明かす。イエローのカラーは取材時にチーム総合首位だったため Photo: Shusaku MATSUO「軽いし、エアロでバランスがいい。パリまで被りたいね」と使用感を明かす。イエローのカラーは取材時にチーム総合首位だったため Photo: Shusaku MATSUO

 黄色のヘルメットはジロが特別に用意した「スペシャルカラー」で、この時点でチーム全員が被っていた。同社ヨーロッパスポーツマーケティングマネージャーのジーン・ポールさんは、「イエローに塗っているのは、現時点でチームの総合成績が1位だから。ジロはレースシーンでサポートしているチーム全てに対してスペシャルサービスをしています」と語り、次にシルバーのシンセを取り出した。

各賞ジャージごとのカラーを用意

 「これはチーム カチューシャ用に用意したもので、新人賞のマイヨブランに合わせてペイントしています。チーム内の誰かが獲得した際にすぐに渡せるよう準備をしています」と明かした。ジロはこの他に、マイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨヴェールの各賞ジャージに合わせたカラーも用意していた。

後頭部の国旗はツール・ド・フランスのために用意されたことを意味する Photo: Shusaku MATSUO後頭部の国旗はツール・ド・フランスのために用意されたことを意味する Photo: Shusaku MATSUO

 また、サポートするBMCレーシングチームとチーム カチューシャ、イアム サイクリングが使用するヘルメットのカラーも、市販とは違いチームジャージに合わせた特注品をそろえる徹底ぶりだ。

レーススタート直前までヘルメットの調整を行う Photo: Shusaku MATSUOレーススタート直前までヘルメットの調整を行う Photo: Shusaku MATSUO

 ジロのスペシャルサービスはレース中にとどまらない。実はその準備作業はシーズン前の年初から始まっていた。今年の1月、チームがトレーニングキャンプを行う際にポールさんも同行。選手一人ひとりの頭を採寸し、ヘルメットのフィッティングを行った。必要であれば調整を行い、選手がベストパフォーマンスを出せるよう、環境を整えたという。

 それ以降は、パリ~ルーべ、パリ~ニース、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャなどの大規模レースに帯同。また、必ず毎月チームとコンタクトをとり、信頼関係を築いているという。

「現場では1秒でもタイムを削ることが求められる。応えるために常に良い製品を作り続けます」と話すポールさん Photo: Shusaku MATSUO「現場では1秒でもタイムを削ることが求められる。応えるために常に良い製品を作り続けます」と話すポールさん Photo: Shusaku MATSUO

 ポールさんはジロが行うサービスの理由について、まずは「安全のため」と語る。「選手のヘルメットにはMIPS(多方向衝撃保護システム)が搭載され、転倒時の衝撃を軽減させるシステムが備わり、脳震盪のリスクを低下させます。また、後頭部にはライダーの頭蓋骨に沿わせるためのアジャスターがあり、フィッティング精度を高めています。フィットしていないと安全を確保できません」とヘルメットとしての役割を説明。タイムトライアルヘルメットのシールドのクリーンナップや、出走前の破損チェックなども引き受ける。

現場の選手の声を一般向け製品にも

 さらに、「ジロはプロ選手からのフィードバックを最大限に活用し、次モデルの開発に生かしています。現場で選手と接し、感想や改善点を指摘されることで、一般のユーザーに対してもさらに良い製品をお送りできることに繋がるのです」とサービスの本質に触れた。

 また、内部の溝を指差し「これはチャンネルと呼ばれ、ここを空気が通過して蒸れを防ぎ、快適性を高めています。速乾性に優れた汗止めパッドには銀が内蔵され、菌の繁殖を抑えます。長時間の競技なので、選手が快適に使用できることで安全性と競技性を両立した製品が出来上がるのです」と続け、最高峰の現場で作り上げられた製品のアピールを行った。

「チャンネル」と呼ばれる内部で縦に入る溝は空気が通り、ヘルメット内の快適性を高める Photo: Shusaku MATSUO「チャンネル」と呼ばれる内部で縦に入る溝は空気が通り、ヘルメット内の快適性を高める Photo: Shusaku MATSUO
速乾性の高いパッド内にはシルバーが織り込まれ、匂いや菌の増殖を抑える Photo: Shusaku MATSUO速乾性の高いパッド内にはシルバーが織り込まれ、匂いや菌の増殖を抑える Photo: Shusaku MATSUO

選手はタイプで使い分ける

 ツール・ド・フランスを走る選手を見ると、シンセに加えてエアロヘルメットの先駆けとなった「Air Attack」(エアアタック)をかぶる選手も見かける。その代表的な選手で、チーム カチューシャのエースとして総合成績上位を狙うホアキン・ロドリゲス(スペイン)はインタビューに対し、「エアアタックは本当に気に入っている。トレーニングでも毎回使っているよ。重いとは全く思わないし、フィット感が良くて最高だね。4月にオランダで行われたアムステルゴールドレースで落車したときも頭にダメージはなかったよ」と明かした。

ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)はトレーニングからレースまでエアアタックを好んでいる。「かっこいいでしょ!?」と茶目っ気を出していた  Photo: Shusaku MATSUOホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)はトレーニングからレースまでエアアタックを好んでいる。「かっこいいでしょ!?」と茶目っ気を出していた  Photo: Shusaku MATSUO
ロドリゲスの盟友、アンヘル・ビシオソ(スペイン、チーム カチューシャ)は軽量なシンセをチョイス Photo: Shusaku MATSUOロドリゲスの盟友、アンヘル・ビシオソ(スペイン、チーム カチューシャ)は軽量なシンセをチョイス Photo: Shusaku MATSUO

 一方、ロドリゲスのアシストを務めるアンヘル・ビシオソ(スペイン)はシンセがお気に入り。「重量が軽いのがいいね。しかもエアロ効果が高いことも実感できるし、僕はシンセを毎回使っているよ」とロドリゲスとは違う好みを示した。

 メーカー側の位置付けでは、エアアタックとシンセのどちらがハイエンドモデルなのかとポールさんに尋ねると、「両方です」と即答。「それぞれ役割が違います。シンセはヴァンアーヴルマートやビシオソが語った通り、軽量かつエアロ効果を追求したオールラウンドな性格のヘルメットです。一方、風洞実験で研究を重ねたエアアタックはエアロ効果に特化しています。時速70kmを超えるスプリントでは、出せるスピードが変わってくるでしょう。アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)はスプリントステージで必ずエアアタックを被っていますね」

最高速でのエアロ効果を求めエアアタックを使用するアレクサンドル・クリストフ( ノルウェー、チーム カチューシャ) Photo: Shusaku MATSUO最高速でのエアロ効果を求めエアアタックを使用するアレクサンドル・クリストフ( ノルウェー、チーム カチューシャ) Photo: Shusaku MATSUO

 「ただ、ロドリゲスのような総合を狙う選手にもメリットはあります。毎秒、毎分ほんの少しですがエアロ効果の恩恵を受け、数ワットのパワーを削減し続けています。ツールは3000km以上走るので、最終的にライバルとの差は何m、何kmという数字になります。1秒を争う競技だからこそ、妥協がない製品を作り続けているのです」とエアアタックの価値を説明した。

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