Pokemon GOをやめた
ついにPokemon GOが日本でリリースされた。山手線のホームでゼニガメを捕まえて、そこから3日間感動しっぱなしだった。Pokemon GOのBGMはどこか懐かしくて、イヤホンで聞きながら散歩してるだけでも、子供の頃に夢にまでみた冒険の世界に飛び出したみたいだった。
大好きだったポケモンが街のいたるところに隠れているなんて、想像するだけでもワクワクしてしまう。意味もなくポケストップ近くにあるコンビニまで足を運んだり、普段自転車で移動するところを徒歩にしてみたり、気がつけば自分の行動が変わっていた。家から会社まで最短経路で移動するだけだった通勤が、とにかく普段歩かない裏道を歩く冒険になった。ゲームでこんなにドキドキしたのはいつ以来だろうか。なんて凄いゲームなんだろうか。作った人を心から尊敬する。
昔からよくブームに乗り遅れる僕は、初代ポケモンをやりだしたのも発売して1年以上経ってからだった。めちゃくちゃハマって、夜更かしして、早起きして、家の外でも中でもとにかくポケモンをやった。最弱のコイキングを頑張って育てると強くてカッコいいギャラドスに進化する設定が凄く好きで、ゲーム序盤で500円で買えるコイキングを大切に育てたのを覚えている。
当時の大人から見ると、せっかく家の外で集まった子供が身を寄せあってゲームボーイの小さな画面を見ている姿は異様だったかもしれない。でも僕にとってゲームの中の世界は現実以上に冒険的で魅力的だった。ポケモンに限らず、他のゲームで遊んでいても、小説を読んでいても、いつかこんな大冒険ができたら(そして願わくば世界を救って、かわいいヒロインと結婚できたら)と想像を膨らませるのが好きだった。
インターネットの存在を知ったのもポケモンがきっかけだった。パソコンを使ってそれに繋がれば、ポケモンの攻略情報や裏ワザが分かるらしい。親に頼み込んでインターネットに繋いでもらい(ピーヒャラララララ)、重い画像が読み込まれるのを何十分も待った。世界中の人がポケモンに熱中していると聞いて、なぜか自分まで誇らしい気持ちになった。
でも、皮肉にもポケモンを通じて知ったインターネットが大冒険の夢を打ち砕く。検索すれば世界中の情報にアクセスできてしまい、行ったこともない世界中の風景を見ることができるようになってしまった。21世紀の人類には冒険の余地は残されていないらしい。ふと気がつけばポケモンの主人公の年齢はとっくに超え、ドラクエの主人公と同じくらいの年齢になっていた現実の僕は、世界を救う冒険の旅に出るどころか受験の準備をしていた。焦る気持ちを募らせながら、これで本当に良いのかと思いながら、でも結局受験勉強をした。
ポケモンの世界ではオーキド博士が、ドラクエの世界では王様や精霊が、それぞれ自分の運命を教えてくれる。でも、現実世界では誰も僕に「**から世界を救ってくれ」と言ってはくれない。どうやってお告げも無いのに自分の人生はこれだと自信を持って決められると言うんだろうか。失敗するのは怖いし、自分がいつか飽きてしまわないとも言い切れないじゃないか。勇気あふれる物語の主人公と、勇気の無い自分とのギャップがだんだん大きくなっていく気がして苦しかった。
僕は幸運なことに24歳で大好きな仕事に巡りあえたのだけど、仕事をしていて経験することが子供の時に夢に見たことと重なる時があって、ふと気づいた拍子に泣きそうになる。ほんの一瞬だけ発明家になったり、ほんの一瞬だけ冒険家になったり、ほんの一瞬だけ正義の味方になったり…良いことも悪いこともたくさんあって、あり過ぎるくらいだけど、その起伏の激しさも含めて物語みたいな人生に憧れていたことを思い出す。
Pokemon GOを始めて3日目の夜、子供の頃の夢そのもののPokemon GOと、ちょっとずつ子供の頃の夢に近づいている現実とを天秤にかけて、Pokemon GOをそっとアンインストールした。29歳になった僕にも子供の時と同じように夢がある。誰もが怯んでしまうような大きな問題を解いてみたいし、人類にとって未知の領域を冒険してみたい。正義の味方だってまだ諦めていないし、いつか自分達にとって価値があると思える領域で世界一になりたい。
進化するまで育ててあげられなくてごめんな、コイキング。ポケモンマスターも凄く魅力的だけど、ちょっと欲張り過ぎに思えるし、どうせなら僕もこんなサービスを生み出す側に回りたい。そして何より、大好きなポケモン達が動きまわるこの世界が、ごみだらけなんて許せないじゃないか。モンスターボールはひとまず置いて、今日はもうちょっと仕事を頑張ってみようと思う。
Notes
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