Interview with Prof. Jack Richards

 

 
Prof. Torikai:
So, in this day and age of English as an international language and as a lingua franca, what do you think of this idea of — "We don't have to worry about native speakers as a reference point"?

鳥飼先生:
さて、英語が国際共通語として使われている時代となりましたが、「ネイティブ・スピーカーを参照点にしなくてはならないと心配する必要は(もう)ない」という考えについて、どう思われますか?

解説

lingua francaは、もともとはラテン語で、言語が異なる人たちの間で使われる「共通語」のことです。最近は英語が国際語として機能していることから、国際共通語としての英語を"English as a lingua franca"と呼びます。



Prof. Richards:
We have to recognize that there are so many different varieties of English that there's really no such thing as "English" — there's only "Englishes."

リチャーズ教授:
とてもたくさんの異なる種類の英語があるわけですから、「(単一の)英語」なんてものは本当は存在しないのだということを、私たちは認識しなくてはなりません。存在しているのは「(複数の)英語たち」なのです。

解説

Englishは本来は複数形にはなりませんが、英語が世界中で使われ、脱英米化してきたことから、英語にはいろいろな種類があることを強調して、"World Englishes"(世界の英語たち)と表現されるようになっています。英語はもはや英語圏だけのものではなく、世界のものだという思想を込めています。
なお、複数形なのにthere isと単数用の表現が使われていますが、何かが「ある」と言いたいとき、単複にかかわらずにthere isと言うことがよくあります。



Prof. Richards:
There are Englishes. And no one has the right to claim that my English is superior to your English.

リチャーズ教授:
存在するのは「(複数の)英語たち」です。そして誰にも、自分の英語があなたの英語よりも優れていると主張する権利なんてないのです。

Prof. Richards:
That's a changed view of the nature of English, and I think nobody owns English. It's a property that anybody can use for whatever purposes they want.

リチャーズ教授:
英語の性質について、見方が変わってきたことになります。英語は誰のものでもないと、私は思います。英語とは、誰もが、どんな目的に対してでも使うことができる(共有)財産なのです。

解説

昔は「英語」といえば、ネイティブ・スピーカー(母語話者)が話すものだけがきちんとした英語であり、学校教育では特に英米の英語が規範として教えられてきました。しかし最近は、世界中の人々がいろいろな種類の英語を話していますので、英語は人類共通の資産であり、ネイティブ・スピーカーをモデルに、その規範に従う必要はないという見方が提唱されています。





Prof. Torikai:
How do you compromise cultural teaching to language teaching? If you try to teach English as a lingua franca, that would mean that you cannot teach culture.

鳥飼先生:
言語を教えるということと、文化について教えるということを、どうやって折り合いをつけたら良いでしょうか? 英語を共通語として教えようとするならば、文化について教えてはいけないということになりますよね?

解説

英語学習と英米文化の学習は不可分だというのが、昔は常識でした。これに対して、英語を国際共通語として捉えれば、国際コミュニケーションの手段としての英語を教えるのだから、英米文化を捨象して教えるべきではないのかという疑問が出てきます。



Prof. Richards:
It's an interesting question, because if you're studying a language like Japanese, which is just spoken in Japan, there's obviously a very close connection between the language and the culture. But in the case of English, which is spoken all around the world by people with very different cultures, there's no specific connection between English and any particular culture.

リチャーズ教授:
これは興味深い質問ですね。(まず)日本語のような言語を学習している場合は、日本語は日本でのみ話されているわけですから、言語と文化の間には明らかに深い結びつきがあります。しかし英語の場合は、世界中で(互いに)とても異なる文化を持つ人々によって話されていますから、英語と特定の文化との間に特に結びつきはないのです。

解説

国際共通語として使われている英語について語っています。



Prof. Richards:
So, it raises a number of other issues. You were asking about using English as a medium of intercultural communication, which really means teaching strategies for communication.

リチャーズ教授:
そうしますと、ほかの問題もいくつか提起されてきます。異文化コミュニケーションの手段として英語を使うということについてご質問されていましたが、これは実はコミュニケーションのための方略を教えることになります。

Prof. Richards:
I think one of the concepts that researchers have used is the strategy of what they call "let it pass." In situations where cross-cultural communication is involved and a communication problem comes up, it seems that participants are motivated more by the need to maintain the flow of communication, and that's why they say, "Let it pass." "Let's not worry about it. Let's move on."

リチャーズ教授:
研究者たちが使ってきた概念の1つは、「気にしない」と呼ばれる方略でしょう。異文化コミュニケーションが関わる場面でコミュニケーションの問題が出てきた状況では、当事者たちはコミュニケーションの流れを維持しようという気持ちが強くなるようです。ですから研究者は、「気にしないようにしよう」と言うのです。つまり「心配しないようにしよう。前に進もう」ということです。

解説

Let it pass.(Let it go.とも言う)は何かの問題に直面したときに「それが通り過ぎていくのを妨げない」、つまり「(意図的に)特段の対応をしない、気にしない、こだわらない、大目に見る、目くじらをたてない」ことです。「まあ、いいか」などと訳されることもあります。





Prof. Richards:
I think that one important message is that we all learn languages in different ways. For some of us, we learn language through music, through songs, through games; for others, we learn language through studying idioms and vocabulary.

リチャーズ教授:
1つの大切なメッセージは、私たち全ては言語を異なる(学習)法で学んでいるということだと思います。人によっては、音楽を通して、歌を通して、ゲームを通して学びます。そしてほかには、慣用句と語彙を勉強することを通して言語を学ぶ人もいます。

Prof. Richards:
So talk to other people, find out what they do, but also find out what works for you and make the most of whatever opportunities are out there for you in your daily life. And I wish you all the best in your efforts.

リチャーズ教授:
ですから、どうぞほかの人に話しかけて、その人たちが何をして(言語を学んでいるのか)調べてみてください。しかし、それだけではなく、皆さん自身にはどのやり方がうまくいくのか見つけてください。あなたの日常生活の中にある機会を捉えて、それらを最大限に活用してください。皆さんの努力で学習がうまく成就されますように。