今回は「最高」の映画を五本、ご紹介する。
なにをもって「最高」とするのか、人によって違うだろ、というのはおっしゃるとおり。
まあ、それでも、さっそく一本目、いってみよう。
1『最高の人生の見つけ方』
(2007年 原題『THE BUCKET LIST』)
余命宣告されたじいさん二人が、このまま逝ってたまるかと、「死ぬまでにやりたいことリスト」に記したことに挑戦していく。リストにはどんなことが書かれているのか、そしてすべてを実行することは可能なのか。
じいさんを演じるのは、金持ちじいさんがジャック・ニコルソン、地道なじいさんがモーガン・フリーマン。こんなジジイ界の重鎮に挟まれれば、監督も脚本家も、中途半端な仕事はできないだろう。
終始リードする立場の金持ちじいさんと、やれやれな感じの地道じいさん。キャラ立てがしっかりしているので見やすく、ときどき立場が入れ替わるところに、くすりとさせられる。
気楽に楽しく見るのも、自分の人生のエンディングを考えながらしっとり見るのも自由だ。オープニングのシーンの真相がラストでわかるという構成にも、にやりとさせられる。
この作品における「最高」の意味は、後悔のない、という意味で捉える。
関係ないが、私はジャック・ニコルソンの顔を思いだすと、レクター博士で知られるアンソニー・ホプキンスの顔を思いだせなくなる。そういうこと、ないですか?
*
おい、これを「最高の」映画に選んだのって、タイトルに「最高」ってついてるからか?
そう思われたかもしれない。ふっふっふっ、それどころでは、ないのだよ。今回のラインナップ五本は、こちら!
1.『最高の人生の見つけ方』
2.『最高の人生』
3.『最高の人生の選び方』
4.『最高の人生のはじめ方』
5.『最高の人生のつくり方』
題して、「最高の人生」五部作!
もちろん、アメリカでの原題はそれぞれまったく別。類似タイトルで混同するのは狙ってのこと。最初に紹介した『見つけ方』が当たったので、乗っかろうとしているのだ。
実際、レビューサイトをのぞいてみると、「タイトルが似ているから、似たような内容を期待して借りた」とか、「間違って借りた」とか、そもそも別の作品のレビューを気づかないまま書いていたりと、予想通りの混乱ぶりであった。
ということで今回の記事の正式タイトルは、「最高の人生の見分け方」
みなさんに「最高の人生」シリーズを見分けられるようになってもらうのが趣旨である。うん、私のブログにふさわしいふざけ方である。
(『最高の人生をあなたと』という作品もあるのだが、ヨーロッパ映画なので除外した)
「最高の人生の見分け方」
では二番目から五番目まで。
2『最高の人生』
(2002年 原題:LEVITY)
これは『見つけ方』よりも前の作品である。が、劇場公開されず、日本でのリリースは後なので、『見つけ方』に乗っかった邦題である可能性は高い。
最大の根拠は、モーガン・フリーガン出演!
過去に殺人を犯して服役していた男(ビリー・ボブ・ソーントン)。彼は、模範囚ということで釈放されるも、罪の意識から解放されることなく、苦しみつづけている。
テーマは「贖罪」であろう。終始抑えたトーンで描かれる物語。
これは、なにが「最高」なんだ。「軽率な行為、不謹慎な行為」を意味する原題とはかけ離れている。
内容と真逆のタイトルをつけるというのは、ネーミングの手法としては存在するので、そういうことなのか。原題よりも救いがあるような気がして、観るモチベーションにはつながる。
いまや類似タイトルが多くて、ややこしいことになってしまったが。
なんらかの後悔の意識から解放されずにいる人にとっては、けっして淡々とした時間ではなく、「最高」に響く部分があるかもしれない作品。
モーガン・フリーマンの、彼自身も罪人であるが、主人公と違って逃避している、という対称性がよかった。
3『最高の人生の選び方』
(2009年 原題:The Open Road)
これは『見つけ方』との共通点を見いだすことができなかった。偶然、なのか?
病で手術を必要としている母から、離婚した元夫にもう一度会いたい、と告げられたマイナー契約のプロ野球選手。彼は元カノとともに音信不通だった父に会いに出掛ける。
ロードムービーとして描かれる親子の和解を通して、主人公は人生を見つめ直し、大きな決断をする。
ありがちではあるのだが、ロードムービーとはそういうものな気もするので、このジャンルが好きなら楽しめる。
原題は「公道」。道を切り開く、というニュアンスも込められている気がするので、邦題を『選び方』としたのは、類似タイトル3作目というややこしさを気にしなければ、悪くない。
しかしこのあたりから、映画好きたちも、「あれ? これ、すでに見たっけ」などと混同しはじめていたはず。
重要な選択をする機会はだれの人生にもあると思うが、のちにそれを振り返って、これが「最高」の選択だった、と思えるチョイスをしたい。
4『最高の人生のはじめ方』
(2012年 原題:The Magic of Belle Isle)
モーガン・フリーマン主演! 監督も『見つけ方』とおなじロブ・ライナー! 乗っかり邦題であることは、間違いない。
酒におぼれる小説家(モーガン・フリーマン)は避暑地で、三人の娘を連れたシングルマザーと出会う。一家とのかかわりのなかで、彼は失ったものを取り戻していく。
この二行がすべて。惹かれる人は惹かれるだろう。
小説家という設定のおかげで、ちょいちょいよい言葉がでてくる。
こういった作品の定番演出、孤独を選んだはずの人間が、ひとりの時間を維持できなっていく感じは、ほほ笑ましいもの。じいさん、若い娘に囲まれて幸せそう・・・。
原題は、「ベル島での奇跡」といったところ。ちょっとおおげさな気もするので、オリジナル邦題をつけたのも理解できる。類似タイトル4作目で、かなりややこしいけどな!
よい人生にするために動きはじめる「最高」のタイミングは、つねに、いまですよ。(自分に言った)
5『最高の人生のつくり方』
(2014年 原題:And So It Goes)
『見つけ方』のロブ・ライナー監督作品!
が、じいさん役はモーガンフリーマンではなくマイケル・ダグラス。
孫娘を預かることになったじいさんが、隣人のばあさんに助けを求め、三人のぎこちない生活が始まる。
ダイアン・キートン演じるばあさんがいい女。じいさんも偏屈だがほっとけない感じで、娘もキュート。
ロブ・ライナー監督は、愛しい存在を愛しく描く。物語の抑揚をつけるためだけの悪役なら、そんなものいらない、といっている気がする。
「最高」の人生をひとりでつくるのは難しいが、だれかがそばにいると、驚くほどかんたんになる、のかも。(独り身の私がいっても説得力がないが)
原題『And So It Goes』は、「そういうもんさ」といった感じか。個人的には、「しっかたねえなあ」と訳したい。じいさんの、やれやれな感じ。
「It」は「人生」と訳しても差し支えないだろうし、前向きな『作り方』という邦題にしたことによって、前進する物語であることがイメージしやすくなった。
・・・・・・ややこしいけどね。公開の時点で、すでに類似タイトルが4つもあったわけだから、すんげえ、ややこしいけどね。
いや、覚えられるわけないだろ! ダメだろ! いつかだれかがネタにするぞ? ・・・・・・・・・・・・はっ、まんまと私は、乗せられたのか・・・?
ここで一番手『見つけ方』と、五番手『つくり方』のパッケージを並べてみよう。
フォントが9割一致。完全におなじにしていないのは、デザイナーのプライドか、権利の問題か。
写真の構図もおなじなので、右を5秒見てから左を見ると、じいさん二人がゲイっぽくも見える。もしくは、「女なんていらねえよな」と負け惜しみをぼやく、彼女いない歴70年の悲しき幼なじみ。
「最高の人生の見分け方」まとめ
ぱっと見で比較できるよう、七・五調でまとめておく。
リピート・アフター・ミー。
『最高の人生の見つけ方』・・・二人のジジが、無茶をする。
『最高の人生』・・・・・・・・・・・・・あんたもジジも、救われろ。
『最高の人生の選び方』・・・・・ダメ選手には、ダメオヤジ。
『最高の人生のはじめ方』・・・小娘三人、ジジ落とす。
『最高の人生のつくり方』・・・ジジがババアに、ヘルプミー。
ジジばっかだな!
つまり「最高の人生」という言葉は、人生の終盤にさしかかった年配者の心に響きやすいキーワードとしてセレクトされているということか。
もしモーガン・フリーマンとロブ・ライナー監督がふたたびタッグを組むことがあったら、邦題は間違いなく『最高の人生の○○』となる。
「○○」に入れる言葉はぜひとも、「見分け方」としてもらいたいものだ。
余談だが、モーガン・フリーマン主演作には、『素敵な人生のはじめ方』という作品もある。もはやネタとしか思えないややこしさである。
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