アメリカ・カリフォルニア州モーガンヒル在住の9歳の少年が、骨伝導を使った新しい手術で6年ぶりに聴覚を回復しました。iPhone用アプリ対応のサウンドプロセッサとインプラントがリンクすることで、様々な聴覚の助けを実現します。
治療を担当したスタンフォード小児病院によれば、Joshua少年は3歳のとき肘を骨折して入院した際に、定期検診で耳の異常が見つかり、最終的に聴覚のほとんどを失いました。その後の5年間、何度となく手術を繰り返したものの効果なし。
スタンフォード小児病院に紹介されて診察されたところ、先天性真珠腫(胎胎期に耳の中に上皮細胞が迷い込んで増殖するもの。要するに耳垢だが放置すると骨が破壊)であることが判明しました。
この症状に対して、医師は骨導聴力活用型インプラントシステムの Cochlear Baha 5を選択。聴覚は耳介(外から見えている耳)で集められた音波が外耳道を介して鼓膜の奥にある中耳を通るわけですが、Joshuaさんの場合は耳の穴を通る一般的な補聴器が使えません。そこで耳の後ろに小さな骨導端子インプラントを埋め込み、小さなサウンドプロセッサを接続して音を伝える仕組みです。
このサウンドプロセッサは iPhoneの専用アプリと連携することで、聞こえやすさを支援します。雑音が多い場所では人の会話のみを抽出して子供向けに柔らかいトーンに整えるなど、環境に応じて聞こえやすく調節するしくみ。その一方でiPhoneやiPad自体が発する音は、そのまま耳に転送されます。
アップルは障がい者のアクセシビリティ(利用しやすさの工夫)につき何回も受賞歴があり、アップルストアにも「アクセシビリティ」のコーナーを設けています。今年のWWD2016Cではさらなる改善も発表され、iOS 10でもiSightカメラが拡大鏡代わりに利用可能となり、次期watchOS 3では振動で時刻を知らせるTaptic Timeが搭載される予定です。モバイル機器があらゆる人たちの生活を豊かにする未来がくることを望んでやみません。
訂正: 当初誤って「人工内耳を使う仕組み」としていましたが、正確には耳の後ろの骨に埋め込む骨導インプラントを使った治療でした。読者および関係者の皆様にお詫びして訂正いたします。