首や顔狙う 意識不明の被害者も
相模原市緑区の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で26日、入所者ら多数が殺傷された事件で、重軽傷を負った入所者らは、神奈川県や東京都内の6病院に運ばれ、手当てを受けた。治療にあたった医師らは記者会見するなどして、緊迫した状況を説明した。【藤沢美由紀、野倉恵、渡辺明博、黒川将光】
重傷者8人を含む計14人が搬送された北里大学病院(相模原市南区)では午前11時から、現場で患者の救急搬送を指揮した服部潤医師(42)らが記者会見した。服部医師は施設の駐車場に設置されたテントで、重傷者の搬送先などを決める業務に携わった。首に傷を受けた人が多く、寝間着姿でぼうぜんとした様子だったという。
東京医科大学八王子医療センター(東京都八王子市)には男女4人が搬送された。4人は20代と40代の男性と40代と50代の女性。首のほか、顔や手、胸など上半身中心に複数の刺し傷があり、意識不明の重体という。救命救急センターで輸血し、切れた血管の縫合や止血による緊急手術をした。容体は予断を許さないという。
記者会見した新井隆男・救命救急センター長によると、4人は血まみれで、うめき声を上げる人もいた。全員が首を刺され、傷は深い人で4〜5センチに達していた。新井センター長は「首ばかりを狙ったのか。強い(殺害の)意図があるとの印象を持った」と話した。
東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)には、50代の男性3人が搬送された。頭や首、胸などに複数の刺し傷があり、集中治療室(ICU)に運ばれてから緊急手術を受け、いずれも重傷とみられる。
国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)には、43歳の男性2人が救急車で搬送された。救命救急センターの加藤宏部長によると、1人は腹部、首、手に3カ所以上の傷があり、腹部の傷は内臓に達するほど深く、緊急に開腹手術をして止血した。もう1人は首に5カ所以上の傷があり病院に到着した時には大量出血でショック状態。緊急手術と輸血をした。衣服は血だらけだった。
また、町田市民病院(東京都町田市)では、20代と40代の男性2人が手当てを受けた。日本医科大学多摩永山病院(東京都多摩市)には、入所者とみられる40代女性が首や後頭部を刺されて搬送された。意識はあるという。
25人の負傷者が搬送された病院は次の6カ所。
東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)=重傷4人▽東海大医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)=重傷3人▽国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)=重傷2人▽北里大学病院(相模原市南区)=重傷8人、軽傷5人▽日本医科大多摩永山病院(東京都多摩市)=重傷1人▽町田市民病院(東京都町田市)=重傷2人
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入所者の家族でつくる家族会「みどり会」の副会長、中塚清さん(73)=相模原市=は26日早朝、テレビを見て事件を知った。20年ほど前に入所し、西側の居住棟にいる45歳の長男は無事だったが、東西両方の居住棟に被害者がいたという。
午前6時ごろに施設に到着すると、長男は朝食を食べていた。廊下や東西それぞれの居住棟の入り口付近などに血痕があったという。家族会は200人以上いるが、何十人かが作業スペースに設けてもらった待機所で不安そうに家族と対面するのを待っていたという。
中塚さんは「植松容疑者の名前は知らない」としたうえで「もしかしたら、自分の息子も危なかったかもしれないと思うと怒りを感じる。人なつっこい無抵抗の知的障害者を夜中に襲うのは卑劣でどうかしている。許せない」と話した。【深津誠、木下翔太郎、松浦吉剛】