英EU離脱で新興国市場に資金流入!FRB利上げ見送り観測

 英国のEU離脱が決まった際、市場では、安全資産への逃避から比較的リスクの高い新興国の資産が最も打撃を受けると見られていた。
 しかし実際には、投資家は英国のEU離脱決定とその後の先行き不透明感により、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが少なくとも12月まで見送られると解釈し、新興国市場では通貨、株式、債券が軒並み上昇。国民投票結果を受けた直後の衝撃からの回復ペースは他の市場を上回った。

 MSCI新興国株価指数<.MSCIEF>は7月1日までの週に3月以降で最大の上昇率を記録。ロシアルーブルやブラジルレアルなど新興国通貨建て債券の利回りも週間で最大50bp(ベーシスポイント)低下した。

 アバディーン・インベストメント・マネジメントのシニア投資マネジャー、ビクター・サボ氏は「イエレンFRB議長は、米国外のイベントがFRBの政策判断に影響することを明確にしており、EU離脱がもたらすリスクについても言明した」と指摘し、「FRBの様子見姿勢により新興国市場は支援されるだろう」との見方を示した。

 中でも中南米通貨はとりわけ好調で、ブラジルレアル<BRL>は約1年ぶりの高値近辺で推移し、チリペソ<CLP>も1カ月ぶりの高値水準を記録した。
 3カ月前に国際資本市場に復帰したアルゼンチンが先月6月30日に、27億5000万ドルの債券を発行すると発表したことも、新興国資産への需要が回復していることを示している。
 米国債と比較して、新興国の国債を保有するのに求められる平均イールドプレミアム<.JPMEGR>は27日以降30bp低下している。

 ただ、こうした上昇は持続できない可能性が高いのも事実。ブラジルは過去最大の赤字に直面しており、来年もリセッション(景気後退)が続く見通しだ。強い内容となった一連の米経済指標を受けてFRBの利上げ観測が再燃すると、新興国通貨を圧迫する可能性もある。
 ただ、直近では、投資家は現状に満足しているようだ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、FRBが年内の利上げを見送る可能性に言及し、「新興国市場は好ましい状況にある」と指摘した。

◆高利回りの追求

 EU離脱のような事態で先行き不透明感が広がった場合、通常はリスクの高い新興国資産から資金が流出するが、悲観論者は流動性拡大によるプラスの効果を過小評価したのかもしれない。
 市場はFRBの年内利上げの可能性を事実上排除しただけではない。イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は30日、EU離脱決定による経済への影響に対応するため、追加緩和を実施する可能性を示唆した。

◆追加緩和期待はユーロ圏や日本、中国でも高まっている

 英国民投票以降に1兆ドル以上の債券の利回りがマイナスに転じ、世界では推定11兆7000億ドル超の債券の利回りがマイナスとされる。
 ブラジル中央銀行などは早期利下げに消極的な姿勢を示しており、金利が下がる可能性が低いことから、中南米の債券は他の新興国と比べて恩恵が少ないが、アジア新興国市場のベンチマーク10年債利回りは過去1週間に20─40bp低下。ロシアの債券利回り<RU10YT=RR>も2014年2月以来の低水準となっている。

 ウニクレディトのストラテジスト、キラン・コウシク氏は、「G4(英国、ユーロ圏、米国、日本)の実勢利回りを見るとかなり大幅に低下している」と述べ、「実勢利回りが低下する際には一般的に新興国市場に利回りを求める動きが見られやすい」と分析している。
(Dion Rabouin記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子 ロイター 7月4日(月)15時11分配信より引用編集)

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各国主要指標
https://wirelesswire.jp/Global_Trendline/201209111719-2.html より引用)

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