2016.7.26 05:00

【甘口辛口】無理に作る横綱は本人にも重荷…綱とりにこだわった協会の古い体質に違和感

【甘口辛口】

無理に作る横綱は本人にも重荷…綱とりにこだわった協会の古い体質に違和感

千秋楽、日馬富士の優勝が決まりガックリ花道を下がる稀勢の里=愛知県体育館(撮影・高井良治)

千秋楽、日馬富士の優勝が決まりガックリ花道を下がる稀勢の里=愛知県体育館(撮影・高井良治)【拡大】

■7月26日

 「逆転優勝なら綱とり」という大相撲名古屋場所終盤の“あおり文句”に、何となく違和感を覚えた相撲ファンも多かったのではないか。初優勝と綱とりを目指した稀勢の里が13日目の日馬富士戦で完敗。3敗した時点で「これでは…」と思わせた。しかし、審判部は千秋楽に優勝決定戦に勝てば…と綱とりにこだわった。

 春場所13勝、夏場所も13勝でともに準優勝。確かに安定感はあるが、12勝同士の決定戦に勝ち、前の場所より1勝少ない成績で横綱に上げるのは、どう考えても理屈に合わない。「大関で2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」という横綱審議委員会の昇進内規にもほど遠い。

 横綱が1人しかいず、急いで上げたい状況ならともかく3人いる。本来なら昇進話を持ち出すこと自体考えられない成績である。ましてや今場所の稀勢の里は中盤から立ち合いに狂いが生じ、上体が高く攻め込まれてはずみで勝ったような相撲も何番かある。星はともかく内容的に横綱としてふさわしいのかと疑問符もついた。 大相撲は毎年、名古屋場所後に東北、北海道などを回る長い夏巡業がある。待望の和製横綱が誕生し、秋場所に先がけて土俵入りを披露すれば大きな目玉になったろう。かつて巡業での集客を見込んでか、2場所連続優勝でなく「準ずる」の解釈で次々に名古屋場所後に横綱を誕生させた。そんな協会の古い体質はいまも変わらないようだ。

 安定感重視なら横審内規にこだわらず、長いスパンの勝率で決める昇進方法を考えてもいいのではないか。無理に作る横綱では本人も重荷だろう。横綱はみんなに祝福されてなる、象徴的な存在であることを忘れてはならない。 (今村忠)