「需給は一夜にして変わる」、この言葉がぴったり当てはまるのが、7月22日から25日にかけての「ポケノミクス相場」でした。22日19時15分、任天堂(7974)は突然、”『Pokémon GO』の配信による当社の連結業績予想への影響について”と題したコメントをリリースしました。このリリースを受け、週明け25日の東京株式市場では、ポケノミクス関連株が総崩れとなり、ポケノミクス関連銘柄群の需給は一夜にして変わってしまいました。
リリースの内容は、「株式会社ポケモンは、持分法適用関連会社であるため、当社の連結業績に与える影響は限定的であり、『Pokémon GO Plus』の製造及び販売を予定しているが、これらは、4月27日に公表した連結業績予想に織り込み済みのため、直近の状況を鑑みても、現時点では、当業績予想の修正は行わない」ということでした。
この任天堂の発表内容自体は、多くの投資家の周知の事実でした。しかし、上方修正を期待して、上値を買い上がった投資家も多かったことも、これまた事実です。
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その結果、任天堂の株価は急騰し、その急騰する過程で「上方修正なんてあるはずがない。今の急騰は行き過ぎだ」と考えた投資家の空売りを呼び込みました。しかし、実際の株価は上がる。だから、評価損の膨張に耐えかねた売り方の買い戻し(踏み)が加速する。その踏みで上がるから、新規の買いも入る。また、同時に踏みも入るという好需給関係が続き、遂に任天堂の株価は7月19日、3万2700円という6年3カ月ぶりの高値を付けたのです。同日の売買代金は7036億円と、個別の株式として初めて7000億円超えという、おまけ付きでした。
なお、22日10時過ぎに、「ポケモンGO」の日本配信が開始されました。この日本での配信開始をもともと利食い売りを出すタイミングと考えていた投資家も多く、結局終値は伸び悩み、前日比220円(0.8%)高の2万8220円(売買単位は100株のため282万2000円が必要)でした。22日の売買代金は7260億円と、個別銘柄として過去最高を記録した20日の7323億円にはわずかに及びませんでしたが、過去2番目の多さでした。どうやら22日は、「Buy the rumor, sell the fact.(噂で買って事実で売る」を実践した投資家は多かったようです。これが22日の伸び悩みの主因だったのでしょう。
任天堂の株価が底入れするまで
ポケモン相場の関連株は売りが続く
それでも、22日夜の任天堂のリリースがなければ、週明け25日の「ポケノミクス関連」のあのような阿鼻叫喚、地獄絵図は起こらなかったでしょう。
もともと、任天堂は7月27日に17年3月期第1四半期連結決算の発表を予定していました。上場企業は、「公表された直近の業績予想値(予算)から、売上高においては±10%、経常利益又は当期純利益においては±30%の乖離が見込まれる場合に開示が必要」となっています。
しかしながら、今回の任天堂は、「現時点では、当業績予想の修正は行わない」としています。なぜ会社側がわざわざあのタイミングで、あの内容のリリースを出したのかは不明ですが、少なくともあの瞬間、投資家の「期待」は「失望」に変わり、買い方のマインドが凍り付いたことは間違いないでしょう。そして、需給もあの瞬間「買い」から「売り」に変化したのです。
ちなみに、この「ポケモン相場」の需給が「売り」から「買い」に変化するタイミングですが、正直分かりません。
ただひとついえることは、親分の任天堂の株価が底入れするまでは、「売り」の時代が続くでしょうね。もちろん、需給は一夜にして変わります。そのきっかけを待つ。今は、それしかないと思います。つまり今は、「落ちてくるナイフはつかむな!」という相場格言を想起しておくべきです。
ポケノミクス株の追証の恐怖がなくなるまで
新興市場や小型材料株は冴えない展開が続く
話は変わりますが、2015年9月15日付けの日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査(概要)」によれば、個人投資家(本調査の回答者)の過半数(56%)は、60歳以上のシニア層で、年収は300万円未満が48%と最も多く、約7割(72%)が年収500万円未満、証券保有額は「100~300万円未満」が26%と最も多く、75%が保有額1000万円未満、株式保有額は「100~300万円未満」が33%と最も多く、7割超(73%)が保有額500万円未満です。
ザックリ言えば、個人投資家の平均像は、年収500万円以下の60歳以上で、株式の保有額が500万円以下です。この平均的な個人投資家からすれば、任天堂を最低売買単位の100株買うことは大変なことでしょう。そして、足元の急落はホルダーに対して、非常に大きなネガティブインパクトを与えていることでしょう。
また、資金力の乏しい個人が信用取引を駆使して勝負するにしても、任天堂は値嵩(ねがさ)株のため、当初の維持率も低かったでしょうし、それでも、無理して買い建てた信用個人も多そうです。そのような状態で、任天堂の株価が足元のような急落に見舞われたら、当然すぐに追証(おいしょう)が発生してしまいます。
よって、任天堂株を中心にポケノミクス株を抱え、二進も三進もいかなくなり、投資マインドが冷え込んだり、追証の恐怖に怯えている個人は相当数いるはずです。このため、彼らのマインドが暖化したり、追証の恐怖が取り除かれるまでは、正直、個人投資家の関与率の高い新興市場や、小型材料株などのアクティブ個人好みの銘柄群は冴えない展開を余儀なくされる見通しです。
信用取引で成り上がるために必要な2つの注意点
「ルールに基づいたロスカット」「無謀な勝負はしない」
ところで、私は、あなたが株式投資で成り上がりたいのなら、信用取引を活用して勝負することは「アリ」だと思っています。
ただしそれは、あなたが「あなた自身の設定したルールに基づいたロスカットを躊躇なくできること」「無謀な勝負はしない。レバレッジ比率に関する適正なリスク管理ができること」が条件になります。
とりわけ、レバレッジ比率に関しては、それぞれの資金量や性格、内容によって十人十色です。ですが、よほど自信がない限り、大引け後の信用維持率は100%超を維持するべきです。
もちろんザラ場中は、維持率をそれほど気にせず積極的な売買を行い、収益を追求すればよいでしょう。なお、建玉に関しては「評価益」のものをすべて残し、「評価損」の建玉は可能な限り、当日中にロスカットし、翌営業日に買い戻すかどうかの判断を改めてするべきです。
ネット証券を使えば手数料なんて微々たるものです。手数料なんて気にせず、基本的には、大引け後のあなたの建玉状態は「維持率100%超、全建玉が評価益」というのが理想なのです。
なお、現物に関しては、そこまで厳格なリスク管理は不要でしょう。あくまでも、信用取引を使って、借金して株を買っている分や、株券を借りてきて空売りをしている分については、先ほど述べた程度の厳格なリスク管理をするべきだと思います。
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