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【いま読む日本国憲法】

(19)第25条 貧困救済 国に求める

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 自由競争によって格差が広がると、個人でいくら努力しても生活できないケースが出てきます。そうした弱い立場の人たちも一定水準の暮らしを営める権利を保障し、国家がそのための役割を果たすよう義務付けたのが二五条です。福祉国家の理念を具体化した条文と言えます。

 今の憲法は、国家権力による個人への介入を防ぐという思想で成り立っていますが、この条文は、国の関与を求めるものです。貧困がさまざまな国策の結果と考えれば、国家に救済を求める当然の権利を定めたとも言えます。

 一項の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」は生存権と呼ばれます。この項は当初、連合国軍総司令部(GHQ)案にはなく、衆院で討論されて修正追加されました。

 二五条に基づく代表的な法律に、生活保護法があります。年金、医療、介護といった社会保障制度も、この条文が根拠です。

 生存権を否定するような議論は聞かれません。自民党の改憲草案も、生存権に関してはほぼ現行通りの表現です。むしろ問題は、現実が二五条に追いついていないこと。子どもの六人に一人が貧困状態にあるとされるなど、世代を超えた貧困が問題になっているのに、生活保護や社会保障は抑制の流れが続いています。

 二五条は「新しい人権」の一つ・環境権との関係でも議論になります。幸福追求権を定めた一三条と、二五条を根拠に環境権が認められているという考え方がある一方、自民党は改憲草案で、環境権を新たに書き込みました。

 また、草案は、海外で緊急事態が起きた際に、国が在外国民を保護する義務も新たに加えています。草案のQ&Aは「グローバル化が進んだ現在、海外にいる日本人の安全を国が担保する責務を憲法に書き込むべきだ」などと説明。しかし、自民党の草案で保持するとした「国防軍」が、在外国民を保護するという名目で海外に派遣される根拠になりかねないとの懸念も出ています。

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 憲法の主な条文の解説を、随時掲載しています。

◆自民党改憲草案の関連表記(新設部分)

 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。

 

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