率直にいって私は、西洋哲学の本を読む意味はないと思っています。
控えめにいっても、費やす時間と得られる学びの費用対効果がむちゃくちゃ悪い。
一昔前は”デカンショ”といって、デカルト、カント、ショペンハウエルの著書は大学生の必読書とされたらしいですが、この言葉ももはや死語。それは学生の教養レベルが下がったというより、意味不明な西洋哲学書と格闘することの不毛さを悟った学生達の合理的判断だと考えています。
書店に並ぶ西洋哲学の翻訳本をパラパラとめくっていただくと感じると思うのですが、著者の母国語で書かれたそもそも難解な文章を、イキってわざとさらに難解に日本語訳しているようなものが多く、もはや文章になっていないだろ!っと突っ込みを入れたくなるもの多数(○○文庫系などは特に)。
まぁ、仮に原著で読めたとしても、数値で厳密性を問われたりしない分野なので、ソカール事件のようなことも起こっているし、、、要はこの分野は難解さを参入障壁としてガラパゴス化して今に至っているのだろうな。。。とかなり否定的な見解を持っています。結局一種のファッションとして流行り、廃ったのだろうなと。
そんな普通の社会人をする限り、基本的に無視してかまわない西洋哲学。。。
しか~し!!!困ったことにハイデガー、ニーチェ、フロイト、ユング、経済よりだとマルクスまで、哲学というか思想的な話って、知的ファッションなだけに、ごくごくまれに公私問わず雑談のなかにちょろっとでてきたりします。
しかもマニアックな話題なだけに、「ハイデガーってナチスに傾倒してたんじゃなかったけ・・・?」とか、「マルクスって今でいうと完全にニートだよねー」などなどナイスな相槌を一発かますだけで、そこしか知らなくても「あの人は西洋哲学に通じた知的な人だ。。。はわわわ。。。」とまわりを錯覚させることができます。これは商談、合コン等、優位性を駆け引きする場で時にクリティカルヒットをかます一手とならないとはいえません。
今回紹介する『現代思想の遭難者たち』は、そんな主要な西洋哲学者の主張をざっくり把握して、正々堂々と知ったかぶりをかましたい人に最高のコストパフォーマンスを提供する一冊となっています。
本作が俊逸な点は、各回ごとに哲学者が一人ずつとりあげられるのですが、当人の主張がすべて現代的なパロディに加工されている点です。だから読者は雑誌のエッセイを読む感覚で哲学者の思想を読み進められます。冒頭に時代背景の説明もある上、下図のとおり4コマの横にさらに詳しい説明もあり、きちんと噛みごたえもある作品です。
噛みごたえがあるのは、それもそのはず。実は本作はそもそも『現代思想の冒険者たち』(全31巻)というガチの学術書の月報に連載されたものであり、おちゃらけた漫才師と見せかけて宝塚歌劇団の舞台でもガンガン踊っていた芸人みたいなものなのです。4コマ漫画となめずに一言一句熟読すると記載内容の質の高さに驚愕し、かなり詳しくなってしまう(?)と思います。
最後に目次を紹介します。これを見るとわかるようにニーチェ、マルクスとかメジャーところから、かなりマニアックな思想家まで含まれているのがわかると思います。ざっと眺めて興味がある箇所だけ深堀りというのもありかと。。。
そんなコストパフォーマンス最高の一冊、ちょっと歯ごたえあるマンガが読みたい気分の方におススメ!
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おまけ:やたらと長く解読に時間がかかりそうな文学、哲学、思想の本は原著にあたるより、それを読み込んだ作家の方がかみ砕いた解説してくれているものを読むのがおススメ。
まずは日本の文学作品数十冊の概要を一気に読めるこのマンガ。小沢さんが紹介してマンガHONZ経由でめちゃ売れたらしい。レビューはこちら。
その他、聖書、コーラン、ギリシャ神話など、原典あたったら時間がいくらあっても終わらなそうなものは阿刀田高さんの一連のエッセイが超おススメ。やっぱり分厚い古典の解読はプロに丸投げ、アウトソーシングに限る!
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