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独での殺傷事件 社会の動揺が心配だ

 イスラム過激思想の影響を受けたテロ事件の続発に揺れる欧州の中で比較的治安が良いとされてきたドイツで、無差別殺傷事件が4件続けて起きた。詳しい動機の解明が待たれるが、いずれも過激派と関連するテロ事件とは性格が違い、単独犯の可能性が強いようだ。

     気がかりなのは、事件を起こした容疑者のうち3人がシリアやアフガニスタン出身の難民という点だ。事件はいずれも多くの難民を抱えるドイツ南部で起きた。社会に動揺が広まることが心配だ。

     24日に野外音楽祭の会場近くで自爆死し、巻き添えで10人以上を負傷させた27歳の男は、シリア出身で難民申請を1年前に却下され、一時滞在許可を得て難民向け施設に住んでいた。同じ日に通行人に包丁で襲いかかり、当局に拘束された21歳の男もシリア出身で難民申請中だったという。18日に列車内で乗客に切りつけ射殺されたアフガニスタン出身の17歳の少年は、保護者を伴わず単独でドイツ入りした難民だった。

     また22日にミュンヘンの商業施設近くで銃を乱射し、9人を死亡させて自殺した18歳の男は、イランとの二重国籍を持つドイツ人だった。

     どんな理由にせよ市民への無差別な攻撃は厳しく非難されるべきだ。一方で類似の事件を防ぐためには、紛争地域から必死の思いで欧州へ渡ってきた難民や、社会で孤立しがちな移民系の若者に対する政策的な配慮が一層求められるだろう。

     メルケル首相が難民受け入れに寛容な姿勢を見せ、ドイツは昨年だけで100万人を超える難民を受け入れた。だが支援体制が追いつかず、難民や移民の排斥を訴える極右勢力が人々の不安をあおってきた。

     人命を奪う事件に人々が不安を募らせることは理解できるが、排斥は失望と恨みから新たな事件を生みかねない。昨年末にケルンなどで難民による女性暴行事件が起きた後は、難民施設への襲撃事件や暴力的な難民排斥デモが各地で起きた。再びこうした暴力の連鎖に陥らないよう市民の自制を求めたい。

     欧州の難民政策は難航している。各国で受け入れを分担する案は東欧諸国が拒否した。シリア難民対策で協力相手のトルコはクーデター未遂と反体制派弾圧で混乱が続く。ドイツでは社会不安の高まりを追い風に極右勢力が伸長し、来年秋の総選挙に向けて首相への風当たりは一層強まるだろう。しかし、主導的な役割を担ってきたドイツが揺らげば、欧州全体に及ぼす影響は大きい。

     難局の中でメルケル首相は「人々の安全と自由を守るため全力を尽くす」ことを約束した。社会の動揺を抑える努力に期待したい。

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