政府、工事日程を優先…次期米政権見据え
政府が沖縄県の反発を想定したうえで、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を法廷の場に持ち込む決断をしたのは、「来春の工事再開」という当初から想定している移設計画の日程を維持するためだ。米国では11月に大統領選を控え、来年1月に新政権が発足する。移設計画が大幅にずれ込めば、次期米政権内で見直し論が浮上しかねず、日本側から合意を着実に履行する姿勢を示す必要があると判断した。【高本耕太】
県側は法廷以外の場で移設問題に関して話し合いを続けるよう求めてきた。だが、政府は「沖縄県側に路線変更をする姿勢は感じられない。態度が変わらないのに協議を続けても時間を浪費するだけだ」(防衛省幹部)と受け止め、県側の狙いは時間稼ぎに過ぎないとみてきた。政府関係者は「埋め立てが進み、日本が移設を本気で進める意向だと米側に伝われば、沖縄全体の基地負担軽減でさらに譲歩を引き出せる」と指摘。移設計画を着実に進める姿勢を示すことで、負担軽減策に関する日米交渉を有利に運べるとの思惑もあった。
政府の提訴による福岡高裁那覇支部での違法確認訴訟は、8月の盆休みまでに第1回口頭弁論が開かれる見込みだ。その後、来年2〜3月までに最高裁が最終的な判断を下し、政府側に有利な判決が出た場合には、春ごろに工事を再開することを想定している。
今月の参院選の沖縄選挙区では、現職の島尻安伊子沖縄・北方担当相が、辺野古移設反対を訴えた野党統一候補に敗北。普天間移設問題を巡る沖縄の世論は厳しさを増しており、司法による「お墨付き」を得て移設を強行しようとする「政府ペース」で実際に事態が進展するかは不透明だ。