陸上工事再開へ…政府、司法判断待たず
政府と沖縄県は21日、首相官邸で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設を巡って協議した。県側は話し合いによる解決を求めたが、政府側は県を相手取って地方自治法に基づく違法確認訴訟を22日に起こす方針を伝えた。また、中谷元(げん)防衛相は陸上部分の移設工事について「早々に着手する」と記者団に述べ、埋め立て承認に関する司法判断を待たずに陸上工事を先行して再開する意向を表明した。
協議に出席した翁長雄志(おなが・たけし)知事は終了後、記者団に「協議が先と思っていた。(提訴方針は)非常に残念だ」と述べ、政府の対応を批判した。菅義偉官房長官は記者会見で「訴訟と協議を並行して進める」と語り、訴訟以外でも話し合いを続ける姿勢を強調。この考えを協議で県側に伝え、「知事から『異存はない』との発言があった」と指摘した。
政府が22日に福岡高裁那覇支部に起こすのは、県の対応が違法であることを確認するための訴訟。2014年11月の県知事選で当選した翁長知事は、就任後に辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。政府は不当だとして是正指示を出したが、これに従わなかったことの違法性を確認する。
今年3月、政府が翁長知事を訴えた代執行訴訟でいったんは和解した。和解条項により、総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会が是正指示の妥当性について検討。係争委による適否判断を受けて県が政府を提訴する段取りだったが、係争委が適否を判断しなかったため、県側は提訴を見送った。
普天間飛行場の代替施設は辺野古の米軍キャンプ・シュワブの陸上部と沿岸部に建設される予定。中谷防衛相は沖縄県との協議で、兵舎の建設など陸上工事について「埋め立てと直接関係がない」と再開方針を伝えた。【高本耕太、村尾哲】