「キャリアや技術」というざっくりとしたテーマでコラムを執筆しています。前回の記事は「自分だけのキャリアのつくりかた」というテーマでしたが、今回のテーマは「キャリアパス」です。
私は新卒から数えれば3年目の若造なのですが、タレントとして働き始めてからは10年目になります。その間転職はしていないながらも、やっている仕事は徐々に変わりつづけ、身の回りの環境も変わっていくなかで、いろいろと気づきがありました。そんな気づきを数回にわたってぽつぽつと書いていく予定です。
・キャリアでどちらを選択しようか迷ったら、私にしかできない仕事をとる
今でこそ、タレントやエンジニアとして働くフリーランスのような生き方をしていますが、大学3年生の頃はそれなりに就職を考えていました。周りもインターンや就活に目を向けはじめ、親からも不安定なタレント業よりも一般企業に就職してほしいと言われていたので、私もかなり真剣に考えていました。当時タレントとしての仕事は増えはじめていたものの、それだけで食べていける自信が全くなかったのです。
なので大学3年の夏休みは芸能活動を少し控えつつ、IT企業や広告代理店、TV局のインターンやセミナーに行って真面目に就活をしていました。
ひと夏終えてみて、IT企業では「自分よりずっとずっとコードが書ける人ばかりだな」と自信を失い、広告代理店では「面白いアイディアなんてそんなにたくさん出てこないし、こんなに魅力的にプレゼンできないな」と悔しい思いをし、TV局では「私、言葉でものを描写するのが下手くそだな」と感じました。
そして「ここで働くのは私じゃなくてもいいんじゃないか」と思いました。それよりも、多少人生の保証がなくても、自分にしかできない仕事をしたほうが幸せかもしれません。幸いにも、不完全ながらも自分ならではの仕事スタイルを確立しつつありました。と、なんやかんやあり「タレント×エンジニア」の私が誕生しました。
その後も就職していく友人に引け目を感じたり、両親を説得したり、事務所と月給を交渉したりと苦労が多かったのは事実ですし、この選択が正しかったかどうかは未だに分かりません。しかし、今のところはこの選択に後悔はしていません。
・Rubyとの出会いは偶然
この連載はRubyコラムの一貫でありながら、Rubyのことを1mmも書いていなかったので、ここで書いておきたいと思います。
「Ruby」は私の代名詞でもあり、今でこそ私の助けになってくれていますが、出会いは本当に偶然でした。
当時の私はプログラミングや電子工作などのスキルが必要な研究会に所属していたのにも関わらず、プログラミングの基礎が分かっていませんでした。そのことに危機感を覚え、休講期間中に開催するプログラミング講座への参加を決めました。それが偶然、島根県松江市が主催する「Ruby合宿」でした。
今思えば私の研究室で必要だったプログラミングはメディアアートなどでよく使われるProccessingやOpenFrameworksか、電子工作ならArduinoだったので、Rubyを学ぶのはお門違いだったのですが、当時はプログラミングなら全部一緒だろうと思っていたのです(笑)
合宿では、2日間ほどRubyの基礎を学んだ後に5~6人のチームに別れ、ゲーム開発を行いました。正直プログラミング面では主戦力になれなかったのですが、チームでゲームを完成させた喜びを体験することができ、プログラミングって面白いと思うようになりました。
また、合宿中にWebアプリケーションをつくれるRuby on Railsの存在を教えてもらい、Webサイト制作に興味があった私は、合宿後もRubyを学びつづけました。
ちなみにこの時学んだことは、今でも大いに生きています。特にSinatraというフレームワークを活用してプロトタイプ制作をすることが多く、あの時身につけたことは無駄じゃなかったんだなぁと思う日々です。
・20代のうちは「広く」学ぼう
最近はRubyだけではなくもっと興味範囲が広がっていき、テクノロジー全般を勉強することを心がけています。
一見テクノロジーという狭い分野に特化しているように見えるかもしれませんが、プログラミング、メディアアート、電子工作、機械学習、Web制作、ファブリケーションなど、テクノロジーという枠組みで見れば広く学んでいます。実際、タレント兼エンジニアという立場からみると、超専門的な知識よりも幅広いテクノロジーに対する知識が必要だと感じています。
余談ですが、就活の時期に、知識が「薄く広く」なってしまうことを危惧して、エンジニアとして企業に就職をするよう勧めてくれた方もいました。確かにそれは一理あるのですが、今の段階では私らしい働き方をすることを優先し、今のスタイルを続けています。
このスタイルもいつまで続くかはわかりません。いつか「専門性」にシフトする時が来そうだ、とも思っています。
年齢を重ねていくうち、技術力を身につけていくうちに、社会からのニーズが変化してきます。それに合わせて、微妙に自分の重心をずらし続けることを意識しています。私の場合は、20代前半では強く「アイドル性」が求められてきましたが、今は徐々に「コンテンツ性」にシフトしてきています。もっと年を重ねれば「専門性」にシフトしていくことになるのではないかと予想しています。
社会からのニーズにあわせていくには、先のニーズを予測し、事前にそれに向けて努力を重ねていく必要があるのかもしれません。
現段階ではテクノロジーを広く学びつつ、30代に向けて、自分がのめりこめる分野を探していけたらいいななんて思っています。まさに私も手探りで新しいキャリアを切り開いている真っ最中です。
さてさて、次回が最終回です。次回も、仕事対する姿勢や考え方、テクノロジーに対して思うことなどを書いていこうと思います。どうぞよろしくお願いします!