1997年のアジア通貨危機の「素顔」はドル建ての緊急資金がない国を狙った金貸しのようなものだった。同年12月、韓国の外貨準備高がわずか39億ドルしかなくなった。国際通貨基金(IMF)の金融支援を受けた後、慌てて外貨を積み上げた。外貨を確保するのはタダではない。政府が国債などを発行し、市中に放出した資金を回収した上で、ドルに換えなければならない。数千億ドル、韓国ウォンで数百兆ウォンを集めるため、国民は財布のひもを締めた。
それから10年少しの月日が流れた2008年8月、韓国の外貨準備高は1997年末の50倍を超える2432億ドルに達していた。経済官僚は外貨は十分で、もう危機は起きないと言い張った。しかし、同年9月に世界的な金融危機が起き、3カ月もたたずに2000億ドルの線が危うくなった。結局米国に支援を求めた。国家間の「当座貸越」に相当する通貨スワップ資金をようやく危機を乗り切った。
08年の危機の素顔は違った。今回は韓国の短期対外債務が多過ぎるという点が外国人の攻撃材料になった。08年9月の韓国の対外債務4251億ドルのうち半分近い1894億ドルが期限1年未満だった。当時は国際金融市場でも資金が不足していたため、償還期限を迎えれば、償還資金を借り入れることもできなくなると指摘された。
韓国はひとまず米国の支援で危機を乗り切った。その後、金融当局は「海外から長期資金を借り入れろ」と銀行に指示した。借入期間が長いほど金利は高い。銀行が泣きっ面にハチで高金利の長期債を発行しようと苦労した。その結果、現在は短期対外債務が対外債務全体に占める割合は4分の1にすぎない。04年以降の10年余りで短期対外債務の割合は最も低い状況だ。外貨準備高は08年の危機当時よりも1200億ドル増え、3700億ドルに達した。
外貨準備高で防護壁を築き、短期対外債務を減らせば、危機の「予防注射」を受けたことになるのだろうか。そうとは限らないようだ。米国の「トランプ現象」と英国の欧州連合(EU)離脱を見ると、全く思いもしないところで新たな危機が生じかねないと感じる。先進国ですら開放と貿易を通じた成長を疑う心理が広がっている。その上、1930年大の世界恐慌のように自国の利益だけを考える極端な保護貿易主義がまん延する可能性もある。そんな危機が訪れれば、貿易への依存度が90%近い韓国はどれだけ大きな被害を受けるのか。想像するだけでも恐ろしい。
これまで経済官僚が危機に対応するといってやってきたことを考えると不安になる。官僚は試験勉強でもするかのように「誤答ノート」をつくり、一度間違った問題を解き直す方式で危機に備えてきた。これでは変化に富んだ危機に正しい答えは見つからない。危機は毎回異なる素顔で迫ってくる。危機に際し最も避けるべき態度は、模範答案のような対応を打ち出し、「やるべきことはやった」と手を上げることだ。