【コラム】THAAD問題で表れた大韓民国の素顔

【コラム】THAAD問題で表れた大韓民国の素顔

 終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備をめぐり、韓国国内で繰り広げられている状況を見るにつけ、韓国はこのままでは戦争ができない国なのではないかという思いを抱く。我々の生命と財産と国を守る防衛的兵器(それも国産ではない)に対し、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」として極端な反対を主張するニンビー(NINBY)的思考、反大韓民国的な異質勢力の蠢動(しゅんどう)、まるで何も処理できずに右往左往する政府の支離滅裂さは、今もし戦争が起きれば、韓国がなすすべなく崩壊するのではないかという恐怖感を与える。

 THAAD配備の問題にとどまらない。在韓米軍の平沢移転、済州島江汀集落への海軍基地建設、天安爆沈事件と延坪島砲撃の際に飛び交ったデマなど韓国は国防と安全保障が関連する事案がヤマを迎えるたびにまともに乗り越えられたためしがない。そのたびに国全体の大騒ぎを経験してきた。折しもスイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「2016年国家競争力指数」は、韓国の社会的結束力が12年に比べ半分に低下したことを示している。韓国の対立構造が深まり、国力の浪費が慢性化している。

 過去20年にわたる国防をめぐる反対や対立は、韓国が核兵器を保有する北朝鮮と今も休戦状態にある国であること、韓国が中国と日本の板挟みである地政学的な不利さをちゃんと理解しているのかを疑わせる。軍事的な観点のみならず、一つの国として、一国民として、国家的な一大事に深い関心を持ち、愛国と自尊の精神で暮らせているか自問したくなる。韓国は中国を恐れ、日本を恐れ、そして北朝鮮を恐れ何もできない「安保恐怖症」どころか、今や国民が怖くて何もできない段階に達したようだ。

 生活水準が向上したことによる病気ではあるが、韓国は公共の概念、公益の精神、共同体意識を徐々に忘れ去ろうとしているようだ。国であれ社会であれ組織内で自分に不利なことには耐えられない。自分の家族、我が家、自分の子ども、自分の利益に合致しなければ、全てが関心外だ。そこにそれをそそのかす異質勢力が便乗する。彼らはそれを政府の過ち、企業の利己主義、持てる者の横暴だと拡大解釈する。右派は「米国が守ってくれるだろう」、左派は「中国が韓国を保護してくれるだろう」、親北朝鮮派は「北朝鮮の方が良い世の中だ」などと言い、自力による国防や国益を自分とは無関係かのように考える。そんな安保無神経、国防不感症があまりに広まっている。

金大中(キム・デジュン)顧問
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