熊本県を中心に相次ぐ地震で、企業や自治体の間で被災地への支援の輪が広がっている。大手小売り各社は自治体との協定を踏まえて支援物資を提供。日本貨物鉄道(JR貨物)などの物流大手も物資輸送で協力する。九州地方知事会は被災市町村を個別支援する担当県を割り振った。東日本大震災の経験から効率的に支援するのが狙い。ただ被災地では大量供給される物資の仕分けが追いつかないという声もある。
イオンは2013年7月、熊本県と地域での防災協力を含む包括提携協定を結んだ。地震発生後の16日、県の要請に基づき、日本航空と共同で緊急避難用大型テント「バルーンシェルター」を長崎県経由で熊本に輸送した。「万一に備えて積み上げてきた地域や日本航空との協定が効果を発揮した」
ローソンは熊本県や熊本市と結んでいる災害時物資供給協定に基づき、15日に500ミリリットルの水1200本やカップ麺1000食を供給した。同日午後4時には指定場所に到着したが、道路が寸断されていたことなどから、通常より時間がかかったという。
JR貨物は被災地への救援物資の無料輸送を始める。物資の受け入れを表明した自治体の最寄りの貨物駅まで鉄道で貨物を運び、その後はトラックで輸送する。救援物資の拡大に備えて19日から、大阪―福岡間で臨時列車を走らせる。
日本通運やヤマト運輸も救援物資の輸送で協力する。日通が佐賀県鳥栖市に持つ物流拠点に食料や粉ミルクを運び込み、被災した自治体向けに仕分け、地元の運送会社とも連携して、各避難所に配送する。業界団体の全日本トラック協会が国土交通省から支援要請を受けたことに対応する。
メーカーの間でも支援物資を送る動きが広がってきた。明治は熊本県益城町にミルクアレルギーの子供にも使える商品を含む粉ミルクを送付した。熊本県にも牛乳などを送った。ユニ・チャームは生理用品や紙おむつなどを支援物資として送った。
自治体の間でも連携して支援に取り組む動きが活発になってきた。
九州各県などの知事でつくる九州地方知事会は避難所運営や物資の仕分けで被災市町村を個別に支援する担当県を割り振った。関西広域連合が東日本大震災で採用した被災自治体と応援自治体の割り振りを決めておく「カウンターパート方式」を参考に、例えば宇城市は鹿児島県が支援自治体となり、緊密に支援内容を詰める。
熊本市を含む全国の20政令市でつくる指定都市市長会は東日本大震災後の13年12月、大規模災害時に政令市同士で応援する行動計画を策定した。今回の地震で同計画を初適用した。
熊本市役所に現地支援本部を開設し、西日本の政令市が職員を送り込んだ。「政令市の枠組みで熊本市を重点的に支援する」(同市長会事務局)。各市は熊本市の要望を踏まえ、紙おむつや生理用品、水や湯で簡単に食べることができるアルファ米などを順次送り出している。
熊本、静岡の個別災害支援協定と連携した広域支援を行うのは福島県。静岡県と共同で熊本県嘉島町に計10人を派遣する。福島県の担当者は「東日本大震災の対応を経験した県職員を派遣し、現地に求められる支援内容を見極めたい」としている。
ただ被災地では救援物資の供給で混乱が続いている。国や各自治体、民間から水や食料、毛布などの物資が大量に届き始める一方、避難所のニーズを整理できず、仕分けや輸送が追いつかない状況が解消できていない。