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<女子医大過投与>副作用重ねて周知 学会や厚労省関連団体

毎日新聞 7月25日(月)7時15分配信

 東京女子医科大病院で2014年に抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を過量投与された女性が重い副作用で死亡した問題で、薬の副作用情報を集める医薬品医療機器総合機構(PMDA)や関連学会が当時、ラミクタールの用法・用量の順守を重ねて呼び掛けていたことが分かった。死亡した事例と同じ薬の組み合わせには特に細かい説明があり、専門家は「副作用の危険が高いことは、よく知られていた」と指摘する。

 脳腫瘍の手術経験があった女性は13年12月から、同病院の処方で抗てんかん薬「デパケンR」を服用。14年8月にけいれん発作を起こした後、追加でラミクタールを、短期間で薬効を高めるためとして本来の16倍に当たる200ミリグラム連日投与された。

 08年12月に発売されたラミクタールは、当初から添付文書で、女性が発症したのと同じ「中毒性表皮壊死(えし)症」の恐れを警告。薬の組み合わせに応じて1日当たり12.5~50ミリグラムの少量から投与を始めるよう求め、用法・用量を超えた投与は危険が高まると指摘していた。しかし重い皮膚障害の報告が厚生労働省やPMDAに相次ぎ、用法・用量の逸脱が確認できたケースは11年11月までに152例に上った。

 そこでPMDAは12年1月、「医薬品適正使用のお願い」の文書を作成し、メールなどを使って医療従事者に用法・用量の順守を要望。1日最大投与量を超えないことに加え、デパケンとの併用時は投与開始2週間、連日ではなく1日おきの投与にするよう改めて求めた。

 日本てんかん学会も10年6月に公表した新しい抗てんかん薬の治療ガイドラインの中で、ラミクタールについて「特にVPA(デパケン)併用例でリスクが高い」と記載。組み合わせに留意し、用法・用量を守ることが大切と指摘した。

 厚労省が指定する、てんかん治療拠点病院のベテラン医師は「デパケンを使っているとラミクタールの代謝が遅くなり、血中濃度が高まる。早く効くからと患者が望んだとしても、添付文書を逸脱した投与をすべきではない」と解説する。

 女性は投与開始から約3週間後に東京女子医科大病院で死亡した。抗てんかん薬を大量投与する危険性の説明を女性側が受けていたかどうかは、病院側と遺族側の見解に食い違いがある。【桐野耕一】

最終更新:7月25日(月)7時59分

毎日新聞