文/末近浩太(立命館大学教授)
ニースの事件が示す「二つの分かれ道」
南仏ニースで起こった大量殺戮事件は、フランスだけでなく、欧州全土に大きな衝撃を与えた。死者84名、負傷者300名以上。そのなかには、多くの子どもも含まれていたという。
凶器となった19トントラックが荒れ狂い、蛇のように群衆へと突入した瞬間から今日まで、「生きたい」「生きて欲しい」と切に願う人びとのドラマが続いている。筆者が今いるロンドンの新聞各紙でも、この事件をめぐる人びとの怒り、悲しみ、戸惑いが連日大きく報じられている。
この大量殺戮事件がかくも衝撃的であったのは、甚大な被害だけでなく、トラックによる轢殺という“古くて新しい”方法が用いられたからであった。
つまり、ニースの事件は、「テロ」が「いつでも、どこでも、誰でも、簡単に」できることを示したものとして受け止められた。それはすなわち、潜在的な「テロリスト」の裾野が限りなく広がっていき、その防止が極めて困難になることを意味する。
この痛ましい事件は、「誰もができるが、やらなかった時代」の終わりを告げ、「誰もが突発的にテロをやることができる時代」が始まることになるのだろうか。
たった1つの事件が時代を大きく変えることもある。しかし、むしろ本稿の主眼は、時代を悪い方向へと変えないためにはどうすればよいのかを考えることにある。
キーワードは、ナイーヴな言い方ではあるが、「慎重さ」である。具体的には、「ISによるテロ」と呼ばれる現象を今一度整理することで、私たちがこれにどのように向き合うべきなのか検討してみたい。
正直に言えば、筆者は、この問題に対してやや悲観的な展望を抱いている。だが、未来を悲観しているからこそ、前向きに、今できることを考えてみたい。
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