できるだけ多くの国と地域が歩調を合わせ、包囲網を狭めていく。国境をまたぐ脱税や過度な節税、資金洗浄への対策はこれにつきると言っていい。

 中国で開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の分析と対策を巡る協議に加え、税逃れの問題で協力的でない地域を特定するための基準を承認した。

 金融口座の情報を他国と自動的に交換することを2018年までに始めるかなど、複数の項目で判断する。将来は「ブラックリスト」をつくり、制裁措置をとることも視野に入れる。

 一歩前進ではあるが、課題はなお山積している。租税回避地(タックスヘイブン)に設けられたペーパーカンパニーの実質的な所有者を割り出し、情報を交換する仕組みづくりは緒についたばかりだ。

 多国籍企業などによる過度な節税に対抗しようと、経済協力開発機構(OECD)が昨年まとめた15分野の対策も、参加国を当初の40余から100程度へ増やす途上にある。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が伝えたパナマ文書は、富裕層や企業がタックスヘイブンで蓄財にいそしむ実態をうかがわせた。一部の国の指導者や親族らの名も登場し、納税者の怒りを買った。

 課税する側の各国・地域のリーダーが襟を正し、課税逃れを許さないという旗を振り続けることが大切だ。一連の具体策が成果を生み、取り組みにはずみをつけられるかどうかは、指導者らの姿勢にかかっている。

 税逃れ対策に熱心だったのは英国のキャメロン前首相だ。厳しい財政再建を進めたなかで、スターバックスなどグローバル企業が英国での納税を巧妙に逃れてきた実態がわかった。国民の反発を追い風にして議論を主導した。

 そのキャメロン氏も、タックスヘイブンでの亡父の資産運用がパナマ文書で判明して批判にさらされ、英国の欧州連合離脱問題で退陣に追い込まれた。

 だが、税逃れ対策を停滞させるわけにはいかない。率先してきた英国の政治情勢が不透明になっただけに、9月のG20首脳会議などで改めて国際的な決意を示してはどうか。

 財政難、経済格差、大企業や既得権益への国民の不満。これらは多くの国に共通しており、とりわけ税の不公平感の高まりは社会の安定もむしばむ。

 税を公正に集め、国民のために有効に使う。財政運営に国民の信頼を得る。その起点となるのが税逃れ対策の徹底である。