記事詳細
【宮家邦彦のWorld Watch】
南シナ海めぐる裁定、国際法の分かる常務委員がいなかった 中国の「音痴」ぶりは悲劇的だ
今回の国際司法判断の是非や日米中など関係国の対応ぶりは既に詳しく報じられており繰り返さない。ここは「九段線」「歴史的権利」「紙くず」など、お粗末な反論しかできない中国外交「音痴」の理由について考えてみたい。
最大の問題は中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないらしいことだ。南シナ海問題で中国が直面する国際司法環境の厳しさを誰が彼らに伝えるのか。外交担当トップの「国務委員」は政治局委員どころか、さらに格が下の中央委員でしかない。政策立案権限のない外務省は仲裁裁判所判断を「紙くず」と切り捨てた。担当する国際法に対し最低限の敬意すら払おうとしないのだ。
彼らは現在の国際法が「西洋の産物」にすぎないと考えているのか。半世紀近くも国連に加盟し常任理事国の特権を享受しながら、常設仲裁裁判所の判断を否定する中国の態度は自己矛盾にしか見えない。そもそも中国には欧米型の「法の支配」という発想がない。そこは全知全能の神と被造物である不完全な人間との契約(法)に基づく一神教の世界ではない。
関連ニュース
- 【宮家邦彦のWorld Watch】ダッカ・テロ 日本人は既に攻撃対象「例外論」など5つの盲点あった
- 【宮家邦彦のWorld Watch】〝危険人物〟アンドルー・ジャクソン大統領の潮流…「トランプ大統領」が強く危惧される理由
- 【正論】かくも意義深い「サミット」は記憶にない 日本外交は鍛えられた CIGS研究主幹・宮家邦彦
- 【宮家邦彦のWorld Watch】中国…巨大な合成の誤謬 どう考えても行き詰まる社会
- 【宮家邦彦のWorld Watch】領土問題の日露交渉 「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」のか
- 【宮家邦彦のWorld Watch】中東のもめ事を回避するオバマ大統領 米国外交の激変に日本は備えよ