農業コンクール もっと可能性を語ろう
すぐれた農業経営者を表彰する第65回全国農業コンクール(毎日新聞社主催)全国大会が大阪市であり、全国20の代表が創意あふれる独自の取り組みを発表した。
農業の改革として、田畑を集約する「規模拡大」や、加工・販売にも手を広げる「6次産業化」が叫ばれている。だが、足元には、就業人口の減少と高齢化という土台を揺るがす問題が横たわる。
農林水産省の調査によると、農業にたずさわる人は2015年で209万人で5年前より2割減った。その平均年齢は66・4歳である。
先細りを防ぐには、若い就農者を増やさなくてはいけない。そのためにも6次産業化などに取り組むべきだが、それが絶対条件というわけではない。今大会では若い就農者が改革の余地に気づき、新しい動きの担い手となった例が報告された。
九条ねぎを生産する京都市伏見区の「こと京都」。代表の山田敏之さんは1995年にアパレル業界の営業マンから転じて農園を継いだ。
九条ねぎに特化し、加工・販売も手がけることで収益向上を図り、首都圏のラーメン店などに販路を広げた。地元の農家を組織化して経営を支援し、年間売上高は10億円を超える。事業拡大や加工工場の建設などで、ことごとく父親に反対されたが、「父を納得させようとすることで堅実な経営ができた」という。
大規模な稲作の石川県小松市の嵐農産(嵐俊樹代表)は、4年前の長男俊博さんの就農が転機となった。
長年の経験に頼っていた水やりなどをパソコンなどによるデータ管理に移行。無線操縦のボートで除草剤をまくなど省力化や機械化も進めた。その結果、委託される水田面積を年々増やし、今では集落の7割、65ヘクタール超の水田を耕作している。
新しい力を経営の高度化に生かす試みもある。秋田県大潟村の正八(宮川正和代表)は、「新しいことをやるにはチャレンジできる人材がほしい」と就農を目指す人たちを積極的に採用してきた。
社員の平均年齢は35歳だ。彼らを野菜や花などの各生産部門の責任者に起用し、創意工夫を競わせている。大きな戦力となるだけでなく、これまでに5人が独立し地域を支える力となっている。
会社勤めや都会生活をしていた子が実家に戻るケースもあれば、食品や流通関係から転じる就農者もいる。彼らは、情報処理技術などを学び、市場の動きや営業などにも精通し、農業に新たな展開をもたらす発想を持ち込んでくれる。
今大会では、そんな飛躍例が報告された。農業の未来はもっと可能性とともに語られるべきである。