露、リオ排除せず 各競技団体判断
【モスクワ杉尾直哉】国際オリンピック委員会(IOC)は24日、電話による緊急理事会を開き、国ぐるみのドーピング(禁止薬物使用)が指摘されているロシアをリオデジャネイロ五輪(8月5日開幕)から全面排除せず、条件を満たしたロシア選手は出場を認めることを決めた。出場の条件や個々の選手の出場可否の判断は各競技の国際競技団体に委ね、IOCとしての判断は避けた。
陸上、大半は困難
IOCのトーマス・バッハ会長は約3時間の議論を終えた後に行った電話記者会見で「ロシアの国全体の責任と、選手個人の正当な権利とのバランスを考慮した。リオ五輪への出場を望むロシア選手には厳しい条件を求める」と語った。
IOCは、過去にドーピング違反で資格停止処分を受けた経歴がある選手や、過去の検査歴などから国際競技団体が出場資格を十分に満たしていないと判断した選手は、出場を認めないとの原則を示した。しかし具体的な基準は明示しておらず、各競技で混乱することが懸念される。
ロシア・オリンピック委員会は陸上の68人をはじめとする選手387人をリオ五輪の代表に決め、28日の出発を予定していた。陸上は国際陸上競技連盟が、ロシア国外を拠点とし潔白が証明できる場合を除いてロシア陸上選手のリオ五輪出場を禁止するとの規則を定めており、女子棒高跳びのエレーナ・イシンバエワら大半の選手が出場困難とみられる。
ロシアに関しては、まず陸上で組織的なドーピング疑惑が発覚。国際陸連が今年6月にチームとしてのロシアのリオ五輪出場禁止を決めた。さらに世界反ドーピング機関(WADA)が今月18日、2014年ソチ五輪や、夏季の20競技、パラリンピック競技などで国主導のドーピング隠蔽(いんぺい)があったと認定し、IOCにリオ五輪からロシア選手団を排除するよう勧告した。しかしIOCは19日の緊急理事会で、法的側面の精査が必要であるとして判断を先送りしていた。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)は21日、ロシア陸上選手のリオ五輪出場可否に関する国際陸連の決定を支持する裁定をした。しかし最終的にはIOCが五輪出場の可否を決断すべきだとの見解を示していた。
国際オリンピック委員会理事会の決定の骨子
・IOCは各国際競技団体(IF)に十分な証拠を提出した選手のみ、リオ五輪へのエントリーを認める
・ロシア・オリンピック委員会が過去にドーピング違反で制裁を受けた選手をリオ五輪へエントリーすることは認めない。制裁を終えた選手も認めない
・IFは信頼できるロシア国外のドーピング検査のみを考慮し、各選手の検査歴を調査する
・IFはWADAが今月18日に公表した調査報告書に記載された違反について、選手名の情報をWADAに求める
・IOCにエントリーが認められたロシア選手は、IFとWADAが協力して行う、追加の競技会外検査の対象となる可能性がある