玉ネギ畑

なぜだかおれはお金持ちのお坊ちゃんだと思われることがたまにある。
全くの平民の息子なのに。
おそらくおれの持って生まれた品性と知性がそう思わせるのだろう、
と言いたいところだが、実際のところおれには品も教養もまるで見当たらない。
きっとおれがアホ面下げてボケーっと突っ立ってんのを見て、
こんな何にもできなさそうなアホな子が今まで生きてこれたなんて
きっと実家が金持ちだからに違いないと思われてんだと思う。
実際親切な人ってのは結構いるもんだから、
おれのほうも勝手に他の人がやってくれるからって
わざとボケーっと突っ立ってることはままある。
汚い人間だ。


実際のところはおれは労働者の息子で
とても裕福な家庭ではなかった。中の下か下の上ってとこか。
お小遣いなんかはずっと貰えなかった。
高校生になってバイト始めるまで一年だけ貰えただけだ。
お年玉、といっても親戚も全然いないからせいぜい2万ぐらいだったと思うが
それを貯めこんではチビチビ使ってた。
それに関しては微笑ましいエピソードがある。
あれは中3の頃だったか、
おれには前々から近所のスポーツ店で目を付けてたジャージがあった。
青と黒と白のチョーカッチョイイやつ!
ジャージがかっこいいなんて田舎者だななんて話は置いといてもらいたい。
おれは貯めこんだお年玉から数千円引き出して
ある日ついにそのジャージを買ったんだ。
うおーかっこいいぜ!ってニコニコして家に帰ったよ。
しかし母親はおれにお小遣いあげてるわけでもないし
お年玉も使っちゃっておれは金なんて持ってないと思っていたらしい。
家でおれのそのかっちょいいジャージを見たとき母親はこう言ったんだ。
「お店に返してきなさい!」
なんと母親は真っ先におれの万引きを疑ったのだった!
言っとくがおれは万引きで捕まったことなんてない。
どころか学校で問題児ですらなかった。なのにおれを疑うなんて。
素晴らしい親子愛ではないか。
こんな家庭で育ったんだ。おれが性格悪くてもしょうがないだろ?



ともかくそんな風で、おれには遊ぶ金なんてなかった。
だから学校帰りにおともだちとゲーセン行ったり買い食いしたりなんて
まあ数えるほどしかしたことがない。まっすぐ家に帰ってた。
そしてこんな夏休みともなると、ずーっと家で寝転んでた。
つまんない毎日だけど、おれには当時から怠惰の精神が備わっていて
どっかに行きたいとも思わなかった。
そうだ小学生の頃からおれはおともだちに映画に誘われても
何の用もないのに断っていた。
おともだちと映画に行くと言えば遊ぶ金も少しは貰えたのに。
ただ寝そべってつまらない毎日を眺めてるほうが好きだった。
そして毎日夜になると、神様に向かって
一生一人で生きさせてくれと願っていた。

願いが通じようが通じまいが
人間ってのは変わらないもんだ。
いつか、おれの何かを劇的に変えてくれるような人
そんな多大な影響を受ける人に出会うんじゃないかと昔は思っていたが、
残念ながらそういう選ばれた人というのは
選ばれた人達同士でしか出会わないものなのだ。
そんでおれはいまだに金もなく一人で
こんな日曜の午後を寝そべったまま死んだように生きている。
なんとか伯爵の言葉は最高だなって思う。
「生きる?生きるだって?生きるとは何だ?そんなことは召使にでもやらせてろ!」

おれも金持ちに生まれてたら一生寝て暮らせたのに。
もちろんこれから金持ちになろうなんて気力もない。
毎日を死んだように生きていたい。
オブローモフよ、あんたの玉ネギ畑におれを寝かせておくれ。







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