――日本側の参加者は。
「関心を持つ企業が現れている。現状では、電力会社はやはり我々のプロジェクトを気持ち悪がっている。今の体制が最も居心地がいいからだ。原子力を使えれば、収入も安定する」
■日本がリーダーシップを
――ソフトバンクの孫正義社長らも韓国などとのグリッド接続を提唱している。連携する余地は。
「連携は今後の課題だ。連携しなくても実現できるようにしたい。我々は中国と連携する可能性は低いと考えている。政治情勢も考えると、協力していくのが難しい分野があるのではないか」
――将来的には多国間接続のスーパーグリッドを提案している。
「太陽光発電など再生可能エネルギーには出力の不安定さという弱点がある。それを補うには、国境を越えて、電力網をふんだんにつなぐ必要がある。いまや、国単位ではどこも考えていない」
「今後は電力網は全世界的に相互接続するかたちになっていくと思う。東南アジアにはすでに(国際グリッド接続の)ネットワーク計画がある。さらに、オーストラリアには(太陽光発電などに向いた)砂漠がある。日本がたとえば豪州と直結するということではなく、ASEAN各国も含め隣国同士で結んでいくという形になると思う」
座 長 | 増田寛也・東大院客員教授 |
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秋草直之・富士通相談役 | |
牛尾治朗・ウシオ電機会長 | |
大田弘子・政策研究大学院大学教授 | |
佐々木毅・学習院大学教授 | |
椎名武雄・日本IBM名誉相談役 | |
數土文夫・JFEホールディングス相談役 | |
新浪剛史・ローソン社長CEO | |
薮中三十二・前外務次官 |
――欧州の状況を視察した。
「再生可能エネルギーは料金などが高くなるとの見方がある。しかし、欧州は再生可能エネルギーを電力の中心に据えることで技術開発やビジネスを前進させ、成長を取り込んでいこうとしている。財政危機で欧州の一部の国が動揺しているが、エネルギーで共同体をつくるという発想は揺るぎないと思う」
「アジアも国を超えて連携していかないと、欧州に負けると思う。たとえば、海底ケーブルで最大手のABBなどもアジアを虎視たんたんと狙っている。日本がリーダーとして域内の連携をどこまでまとめあげられるかが重要だ」
――日本の果たすべき役割は。
「技術的なことよりもむしろ、アジア各国間の調整だろう。外交交渉力のようなものが求められる。域内にはこれから電力網を整備するところもある。日本は電力の周波数で2つの国に分かれているようなものだが、ほかの国もそうなると、グリッド接続も効果を発揮しにくい。あくまでも民間ベースでやっていくとはいえ、一部に政府開発援助(ODA)を絡ませて効率的に運用できる電力網構築に日本が寄与していくといった発想も必要だろう」