2016.4.1 05:00

【佐野稔の舞評論】羽生、進路妨害されても揺るがないメンタルの強さ証明

【佐野稔の舞評論】

羽生、進路妨害されても揺るがないメンタルの強さ証明

特集:
羽生結弦

 世界選手権第1日(30日=日本時間31日、ボストン)自身の前に滑走したフェルナンデスやチャンにミスが相次いだことで、羽生に精神的な余裕が生まれた。冒頭の4回転サルコー、演技後半のトリプルアクセルは、GOE(出来栄え点)で3点がついた。手をつけられない強さだった。

 誰であろうとなかろうと、曲をかけての練習で進路を妨害してはいけないのが暗黙のルール。羽生が怒るのも無理はない。トリノ五輪金メダルのプルシェンコ(ロシア)が同じような状況に遭遇し、コーチが激怒したシーンを思い出した。

 テンはこの一件で萎縮したわけではないだろうが、結果的に12位と出遅れた。自己ベストに近いスコアをたたき出した羽生とは対照的。改めて羽生のメンタルの強さがライバルを圧倒していることが証明された。フリーで再び世界歴代最高得点の更新が期待できる。

 世界選手権初出場の宇野は4位と健闘した。練習で不安定だった4回転トーループで着氷し、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も問題なかった。羽生とともに日本男子の層の厚さが際立った。 (1976年インスブルック五輪代表、77年東京世界選手権銅メダリスト)